4歳は活発なやり取りが増える時期ですが、自分が話したい内容をスムーズに出すことができないどもり(吃音)が突然出る場合があります。

ほとんどが自然に症状が消失するのですが、日常の関わり次第では話すことへの抵抗が強くなり、どんどん症状が酷くなってしまうこともあります。

周囲の対応によって話しにくい印象を小さくすることもできるため、身近な子供がどもりを抱えている場合の正しい対処法を言語聴覚士が解説します。

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4歳でどもり(吃音)が出る原因

どもり(吃音)は、2~4歳くらいの時期に目立つことが多いものです。でも、病気というわけではなく、お話しの流暢さが悪くなる状態を指すことを知るべきです。

言葉が詰まって出てこないというのが基本的な症状ですが、保護者にとっては病院を受診しなければならないのか?という疑問や、発達障害なのでは?という疑問を抱くことがあります。

2~4歳にどもる状態が気になるようになるのは、文章でのお話をする時期に差し掛かるからではないでしょうか。


人に伝える内容も複雑になるため、知識としてはわかっているものでも、表現するという運用する部分でうまく繋がらず、結果としてスムーズなお話ができないという悩みを抱えてしまうのです。

どもりには遺伝的な原因が関係することがわかっていますが、全ての子供が遺伝するわけではありません。また、子育ての仕方が悪いからというわけでもありません。

その一方で、インターネットで調べて行き着いた誤った情報を信じてしまい、保護者がショックを受けることも少なくありません。だからこそ、正しい理解で子供に向き合うことが必要なのです。

どもり(吃音)のリスクとなるもの「遺伝」「環境」

どもり(吃音)は遺伝的なリスクと環境的なリスクが存在します。

遺伝の確率は50%くらいという情報もありますが、まだ色々な研究が進んでいるため今後も確率の情報は変更になる可能性を秘めています。

親が吃音者ではなく、祖父母がどもっていたという場合にも子供に影響が及ぶことがあります。ですから、親子の関係だけでなく、近親者の情報を把握しながら遺伝的要素があるかを判断するのが一般的です。


環境的なリスクは言葉が詰まってしまった際に、周囲が子供の発言を待つことなく会話が進行してしまうなど、「うまく伝えられなかった」という経験が積み重なることで大きくなります。

話すことが怖いと思ってしまうと、どもりにとっては悪循環が生じます。言葉に詰まることがあっても言いたいことが言えるという関係こそ、心理的な負荷を解決します。


子供を急かすなど、時間的な制限を加えることもどもりのリスクとなります。ゆったりとした生活環境で過ごせるよう、周囲は配慮するべきなのです。兄弟や姉妹がいる場合に起こる「会話の先取り」も、どもりのリスクを増大させることがわかっています。

誤った原因としてあげられている情報に注意するべき

どもりに対する正しい情報を認識することは、その後の育児に大きく影響します。

インターネットでどもりについての検索をかけてみると、実にたくさんの情報がヒットします。その中でも誤った原因としてあげられているものをいくつか列挙します。

■どもりは母親の育児が原因で起こる
どもりが出てからどう接するかによって状態が変化することがありますが、症状が出現する原因には、母親の育児スキルが直接関係するわけではありません。
■下の子が生まれたからどもりが出る
下の子が生まれたからといって、必ずしもどもりが出るわけではありません。たまたま症状が出現しやすい時期と下の子を授かる時期がぶつかっている可能性が考えられます。


接し方からどもりが出現するという情報を見る機会が多いかもしれませんが、どもりの原因はまだ解明されているわけではありません。ただ、症状が出現してからの接し方によってどもりが酷くなるということはわかっています。

発症とその後の推移は同じにするのではなく、きちんと分けて考えなければなりません。

誤った原因の情報は、保護者をがっかりさせるようなものばかりです。でも、実際にはそうではないということがわかっているだけでも、今後の子育てに対するモチベーションをダウンさせることはなくなるはずです。

どもり(吃音)は治る?治し方と周囲がすべきこと

どもりを生じた子供の70%くらいは、特別な支援を行うことなく自然治癒するとされている報告があります。ただし、症状を悪化させるような周囲の働きかけや遺伝的要因を除いてのデータであることも知っておくべきです。

遺伝的な要因が存在する場合には自然治癒の割合が低下します。それでも、治らないわけではなく、子供によっては成長と共に吃音の症状がわからなくなるということも起こります。


こうした症状の推移を確認してもらうのであれば、言語聴覚士が在籍していて、4歳の子供のフォローを行っている耳鼻科を探しましょう。そこで症状の有無をチェックしてもらうことで、今後の対応がはっきりします。

周囲が子供にとってプラスの働きかけが徹底できると、どもりがあってもやり取りに困ることはありません。積極的に他者と関わる前向きな姿勢は、コミュニケーションに対する自信を養います。

4歳という時機に大切なことは、多少の詰まり感があっても人と関わることが楽しいと思える体験を積むことなのです。

4歳は自然治癒する確率が高い

どもりが出現するピークは2~4歳くらいですが、そのうち70%くらいの子供は自然治癒するとされています。

風邪のように薬を飲んで治すものではありません。日々の関わりから、「伝えられた」という体験をコツコツ重ねていくことができると、コミュニケーションに対する心配も小さくなります。

ただし、周囲の関わりによってどもりに対してマイナスな印象を抱くようになれば、話し方だけでなく体でリズムを取るようにして言葉を発する随伴症状が出現し、タイミングよく話せないという状況が強くなります。

言えないことへの心のダメージを受けて、人との関わりが歪んでしまうこともあるため、その前に保護者をはじめとした周囲が環境を調整するべきです。その手立てが早く適切なほど、自然治癒する率は高くなります。

周囲の関わり次第でどもりがコントロールされる

どもりは周囲の関わりによって出やすさが変化します。

緊張によって出やすいという場合もあれば、家族とのやり取りだけ出現するという子供も存在します。一人ひとり症状が出る場面や頻度が異なるので、まずは子供の状況を確認することから始めましょう。


もしも家族が介入できるタイミングでどもりが出現しているのであれば、ゆったりとした会話ができるような配慮をすべきです。返答を急かすようなことは厳禁です。早口な人は会話のスピードをゆっくりするように意識しましょう。

難しい説明をさせないように選択肢を与えるようなやり取りをすることも大切です。「はい」「いいえ」で答えられるような聞き方をするだけでも、会話のレベルを下げることができます。

競うような発言が当たり前の家庭は、初めに聞いてあげるなどの順番の配慮をしましょう。すると、急いで言わなければならないという抵抗を払しょくすることができます。

ほんの些細な対応ですが、それだけでもどもりのコントロールには役立ちます。

4歳の子供にどもりが出たときに親がするべき対応

言葉のどもりを抱えている場合には、症状が出現する場面を確認する必要があります。どんな場面が吃音の原因となっているかを把握できるからです。

どもりに対する対処法はそれぞれ違います。一般的な知識を持つことも大切ですが、言語聴覚士などの専門家に相談しながら、生活状況に合わせた環境調整をお願いしましょう。

保育を受けている子供は、コミュニケーションの変化を大人に見られる機会が多いというメリットを持っています。そのため、家庭では知らなかった言葉の流暢さに対する症状を保育士から報告され、吃音の存在を知るというケースも少なくありません。

このような場合には、保育場面で配慮すべきポイントを説明し、幼稚園や保育園にも協力してもらいながら関わり調整を行うことが有効です。

幼稚園や保育園にも協力を仰ぐ

子供が通っている幼稚園や保育園には、どもりのことは相談しておくべきです。吃音というものを知らない場合があると、子供に誤った対応をしてしまい、傷つけてしまうことがあるからです。

保護者の目が届かない時間に子供にとって辛い経験をすることが多く、その穴埋めは大変です。そうならないように配慮が行き届いた環境で保育を受けることこそ、4歳の子供を守る手段となります。

どんな年齢でも対応は変わりませんが、幼稚園や保育園で必要な対処法としては、子供にわかりやすく伝えることに意識を向けて説明することになります。

  • 病気ではなく「言葉が出にくいことがある」という説明をする
  • 発達障害とは違って、話すタイミングがズレてしまうことを説明する
  • 話し方の真似をする子供がいたらやめさせる
  • からかいがあったときには「いけないこと」であることを指導する
  • 日直や発表会などの発言が必要な場面ではどもりの出かたに注意する
  • 場合によっては一人での発言ではなく数名が一緒に言うなどの配慮を行う

このような配慮を保育するスタッフに周知してもらい、子供の状態をフィードバックしてもらうようにすると、家庭と保育場面とがリンクして、過ごしやすい環境を作ることができます。

友達とのやり取りに介入することも大切

4歳の子供は大人を介することなく、子供だけで楽しい時間を過ごすことも多くなります。こうした成長は保護者にとっては喜ばしい反面、どもりが出ることによって円滑なコミュニケーションが取れなくなるという心配が膨らみます。

仲良くなると家庭の行き来をすることもあるはずです。自分の家庭に来てもらう分には介入がしやすいのですが、相手のお宅に伺うとなると、子供の様子が見えなくなってしまいます。

知らぬ間にどもりに対するマイナスな指摘を受けることも少なくありません。



友達との関係は日々を楽しく感じるエッセンスです。それが辛くなってしまうようでは、子供は幼稚園や保育園に行くのが嫌になってしまうことも考えられます。

それを食い止めるためにも、保護者の目の届く範囲で子供のやり取りを確認し、適宜介入するという環境調整を行うべきではないでしょうか。

4歳は子供同士のやり取りも未熟なので、トラブルが生じることは日常茶飯事。そこに大人の視線を少しだけ加えてあげるだけでも、円滑なやり取りが行えるのと、子供にとっても安心できる環境下で楽しい時間が過ごせます。

成功体験を意識的に積みたいのであれば、家族や保育場面以外の子供の活動にも目を向けましょう。

環境調整こそ子供の気持ちを軽くさせられる

4歳の子供にどもりがあっても、本人が症状を自覚するか否かは個人差があります。

まずは保護者がどもりに対する正しい知識を持ち、日常の関わりの中で子供の言いたいことを汲み取っていくことが重要です。さらには、保育関係の専門職と繋がることで、親元を離れて過ごす時間への配慮も考えていくべきではないでしょうか。

どのような関わりを持つべきかは、言語聴覚士のいる耳鼻科を受診するなど病院に行くことも視野に入れるべきです。インターネットで調べた情報は、正しいものもある反面、事実とは異なるものも存在します。

コミュニケーションに対する苦手意識が強くなってから相談するのではなく、環境調整を図りながら子供と通じ合う時間を持つよう、原因を洗い出してやり取りを見直すことも大切です。

どのような環境が不足しているかを素人が考えるのは大変です。専門的な立場からアドバイスを受けて、症状の治し方や抑え方といった対応を学びましょう。