ここでは、場面緘黙症の子供を持つ親として、今までにあったあんなことやこんなこと、困ったことや、シチュエーション別に感じた気持ちなどをご紹介したいと思います。

場面緘黙症のお子さんを持つ人や、その周りの人の参考になれば幸いです。

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イベントがあるたびにちょっとだけ憂鬱になる幼稚園時代

わたしが息子の場面緘黙に気が付いたとき、息子はちょうど幼稚園生の年中さんでした。

幼稚園生活はまだまだ続くような時期だったわけですが、その頃は親も息子の場面緘黙症について手探り状態だったために、色々なイベント事があると息子には申し訳ないけれど少しだけ憂鬱になったりしました。

運動会は半分楽しみで半分悲しい行事

これは、小学校に上がってもそうだったのですが、運動会はわたしたち親にとって、息子がガチガチになるところをもろに見せつけられるイベントでした。

走ったり、玉入れをしたりすることは意外にも楽しそうにやるのですが、みんなで踊ったりしますよね?

そんなときに、他の子はみんな笑顔で振り付けを踊っているのですが、息子の場合には、とにかく間違えないように必死になるあまり、笑顔は引きつっているし、動作もぎこちなく、見ていてとても切なくなったりしました。

親に向かって笑顔で手を振るなんてまずないので、けっこう寂しい思いをしたものです。

学芸会はもはや何かの罰ゲーム

幼稚園の学芸会というと、合唱したり振り付けつきで踊ったり、保護者にとっていかに我が子が活躍しているのかを見れる最高のイベントですよね。

ところが、場面緘黙症の子供を持つ親にとっては、そもそも「子供が活躍する」などという期待をしていません。そんなこと期待していたら精神がやられます。

ですが、とにかく観に行きますし、もちろんビデオも撮ります。

わたしが一番きつかったのが、特に合唱をするときでした。何しろ、そもそもみんなの前で歌えないのですから。

子供なりに口パクはしているのですが、みんなが大きな口をあけて歌っている中で、彼は一人、かろうじて口を動かしているだけの状態です。

切ない光景ですが、わたしはそのとき「歌えなくてもいいから口パクしてごらん」とアドバイスしていたので、それはなんとかこなせていたわけですよね。

本来は喜ぶべきなのですが、複雑な心境でした。

時間にはとにかく細かい!忘れ物はありえない息子

場面緘黙症の子供がみんなそうなのかわかりませんが、おそらく同じような傾向はあるのではないかと思うのが、「時間厳守」と、「忘れ物はあり得ない」状態です。

これは、症状が軽くなった今でも続いています。

朝は必ず早起きして時間を見ながらやることを決めている

息子には、「遅刻しそうになるまで寝ていたい」という欲望がありません。遅刻するくらいなら多少眠くても起きます。というか、とても早起きします。

そして、7時〇分くらいになったら朝ご飯を食べて、〇分くらいになったら着替えて、〇分くらいから学校の用意をして、〇分くらいからトイレに行って、毎日〇分になったら(必ずジャストなのです)家を出る、という風に「自分ルール」を決めて行動するのです。

時間に関しては異常に几帳面で、そのわりに他のことはルーズだったりするので、息子の場合には「時間の強迫観念」があるのだと思います。

忘れ物や宿題忘れはあり得ない

息子にとって、忘れ物をしたり宿題をやり忘れて先生に怒られる、ということは絶対に起こってはいけない事態なので、宿題に関しては特に小学校に入学してから今まで、やり忘れたということがありません。

それも、ものすごくきちっとやらないと気が済まず、適当にこなすということがあまり頭にないようで親は時々疲れます。

「そんなの適当にちゃちゃ、っとでいいんじゃない」と何度も言いましたが、「こうやってきてください」と言われたことに関しては守らないと気が済まないのです。

忘れ物をしたり、宿題をやらなかったりするよりはいいのですが、あまりに完璧主義なので、もう少し肩の力を抜けばいいのに、毎日それでは疲れるだろうに、と思うのです。

外から家に帰ると豹変する

学校の先生にこういうことをいくら言っても、想像ができない、と言われてしまうのですが、息子は家に入ると何かのスイッチが切れたように「家バージョン」になります。

家バージョンと学校バージョン

今でこそ、学校でも多少は話せるようになったので違和感がだいぶなくなってきましたが、少し前までは朝登校班で学校に行くときから、「学校モード」が始まり、学校ではほとんど何もしゃべらずに過ごして家に帰ってきます。

家に帰るとどうなるかと言うと、普通に楽しくおしゃべりする子に戻ります。

はっきり言って会話はとてもスムーズに成り立つし、逆におしゃべりなくらいでよく笑います。時には面白いギャグを連発したり、いわゆる「そこらへんにいる活発な子供」です。

ところが、授業参観などで学校に行くとそこには、全く別人の息子がいるのです。このギャップ感は、場面緘黙症のお子さんをお持ちの人じゃないとわからないと思いますが、「とにかく別人」です。

ちなみに親もそれを承知で見に行っていたりします。ああ、やっぱりね、というあのガッカリ感は、今では少ないですが酷かった当時は精神的にどうしてもダメージを受けたのでした。

その笑顔がもったいない!

自分の子供なのにこう言ってはなんですが、息子はとても楽しそうに笑うし、とてもいい笑顔をするんですね。

見ていてこっちも楽しくなるような最高の笑顔なのですが、それは家でだけのことなのです。それか、わたしの実家や、学校以外の場所にいるときだけです。

いつも、ああ、その笑顔を学校でできたら最高なのに、もったいない、と思っていました。そんな笑顔で学校でいられたらきっと女の子にモテるよ、なんて今では冗談で言うこともあるのですが、息子にとってはそんなことはどうでもいいようなのです。

ああ、もったいない、といつも思っています。

学校以外で遊ぶお友達とはなぜか普通に話す

大概、息子は下校時などにお友達と遊ぶ約束をしてくるのですが、外で遊ぶときはやっぱり何も話さないのかというとそんなことはなく、家と同じように話せるのです。それも、学校のお友達と、ですよ?

なぜなのだろうと不思議でしたが、要するに場所が学校でなければ、そして公共の場所(特に建物などの中)でなければ息子にとっては、「安全で普段通りにできる場所」のようなのです。

もちろんお友達はびっくりするかと思いきや、学校のお友達の中でも息子は学校では話さないけれど外では話すのが普通になっているのです。

みんな、理解してくれてありがとうという気持ちでいっぱいになります。

こういうことは、大人よりも子供の世界のほうが、案外すんなり受け入れやすいのかもしれませんよね。ああ、そういう子なんだ、で済む話のようです。

場面緘黙症の子供でもちゃんとお友達は作れる

自分の子供は話さないから、お友達もできないのではないかと心配になる親御さんもいると思いますが、上記のように子供たちには子供たちなりの世界や解釈の仕方があるようで、学校で話さなくても外で遊ぶときに普通に話せば十分、という子もけっこういるんですよね。

わたしも、小学校に上がってすぐはとても心配だったのですが、意外にもお友達に全く恵まれないということはありませんでしたし、話さないからといってイジメに遭うようなこともありませんでした。

特にイジメに関しては、わたしの見解ですが、もともと話さない子供に、ちょっかいを出しても反応が薄いから面白くないのかもしれません。イジメに遭ったら、とすごく心配していたのですが、目立ったことは何もなく、今まで過ごしてきています。

そんな数年で変わったのが、嫌なことがあったら、ちゃんと自分で「やめてよ」と言えるようになったところです。これだけでも、もう親は万々歳なのです。頑張ってるね、と思います。

まとめ

まだまだ、ここに書ききれないくらいたくさんのことがありましたが、場面緘黙症の子供は、とても几帳面な子が多いように思います。

ですが、それは逆にとらえると物事を丁寧にこなせる才能ですし、時間を守るなども、守らないよりはいいですよね。こんな風に、なるべくプラスに考えて、いつも様子を見守っています。

まだまだ、不安な面は多いですが、子供は親の気持ちを敏感に感じ取るものですから、親や周囲の人は明るくただ見守っていてあげるだけでも十分なのかなと思います。

場面緘黙症のお子さんを持つ人の何かの参考になれば幸いです。