3歳は言葉を巧みに操って人とのやり取りを楽しむ時期です。個人差も大きいため、中には成長が早いと感じるような子供に出会うことも少なくありません。

でも、何と比較して早いのかがわかっているだけでも、同じ3歳の子供を持つ保護者は焦らずに自分のスタンスで育児を行うことができるでしょう。

ここでは、子供の言葉の成長を加速させる興味の発展や、日常の育児から行う言葉育てのコツを言語聴覚士が紹介します。

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3歳で言葉が早いと感じる発達のポイント・特徴・目安となるもの

3歳という時期は、言葉の成長が著しく伸びるタイミングではないでしょうか。いつの間にか言葉を巧みに操ってコミュニケーションを取るのが当たり前になっていきます。

でも、環境によって個人差がまだまだ大きいのも特徴的。言葉が早いと感じるポイントを保護者が知っていると、自分の子供の大よその成長の見立てができるようになります。


やり取りが蜜になるという感覚は、質問ー応答の関係が成り立っている証拠です。

今までは一つの問いに返答するところでやり取りが終わっていたのに、延々と会話が続けられるまでにスキルが向上します。それだけ話のネタを持っていることが関係していますし、「これはどうなのだろう?」という素朴な疑問が子供の頭に描かれていることが会話にも繋がっています。

内容の理解も長いスパンで覚えておけるようになるので、ストーリーのあるものが楽しく感じられるのもこの時期です。

さらには、文字や数字といった操作にも興味を持つ子もいて、法則に沿った学習を好むようになることも珍しくありません。

ここでは、言葉が早いと感じられる子供の傾向についてを説明します。

質問ー応答が上手に操作できる

子供と会話のキャッチボールを行うときに、スムーズなやり取りをするために必要な要素はご存知でしょうか?

実は、質疑ー応答の関係が成り立っているほど「会話が続く」という感覚を得ることができます。

普段使用している疑問詞に注目をしてみると、子供の好奇心がどこまで成長しているかがわかります。質問攻めにあう時期も、ちょうど3歳くらいが目安になります。知りたいことが日常的に溢れてきて、それを保護者をはじめ、周囲に伺うようになります。

「誰かに聞くとわかる」という体験ができる子供ほど、質問が上手になっていくでしょう。もちろん、保護者側から何かを聞いたときにも、正しいことを教えてくれたり、誤りを指摘してくれる頻度が増加します。


3歳が操作する疑問詞の基本としては、「なに?」「だれ?」「どこ?」といった、人や物を問うものや、場所を問うものが出現しているはず。

それにプラスして「どうして?」という表現が出てくるようになると、順当な成長を重ねていると感じられるはずです。「~だから」という理由の説明を積み重ねることで、人への伝達が上手になります。

保護者にとっては「質問ばかりで答えるのが面倒」と思うかもしれませんが、子供の言葉を伸ばすための成長として認識しておくと、根気強く付き合うことができるでしょう。

流れに沿った理解が行える

ストーリーのある絵本を楽しむようになるのも3歳前後。

ある程度の流れを理解して楽しむことができるようになると、今までのような絵本の触れ方とは違ってくるはずです。一通り絵本を読んで、内容についての話し込みができるようになると、より一層理解が進むはずです。


1日の流れを大よそ記憶しながら、楽しみを待つこともできるようになるのが3歳です。

「明日はパパと動物園に行くよ~」と前日に声かけをしておくと、次の日の朝に子供側から動物園についての話題を周囲にするといったように、記憶の結びつきを強くして、それを思い起こしながら関わることができるようになります。

3歳代には幼稚園に通いだすというケースも多いため、生活スタイルが安定してくることも関係しています。

「幼稚園に行くから○○しようね」といった未来のことを想定しながら行動をコントロールすることもできるようになるでしょう。これは、先々の見通しがイメージできるからこそできることなのです。

文字・数字の操作に興味を持つ

子供によって興味の偏りが大きいのが、文字や数字などの記号的なスキルです。

興味が出てくると、どんどん習得に向かって突き進むのも3歳の魅力。文字や数字が楽しいと感じられる場合には、あっという間に法則性を理解します。

習い事で文字や数字の操作を体験するものが存在しますが、特別なトレーニングを行わなくても興味さえ向いてくれればスキルの習得はスラスラ進むはず。

日常の体験の中で文字や数字を使うことが意味のあることという関連付けができると、3歳でも文字・数字の読みは上達します。

書くスキルは手先の運動が発達しなければ上手にはなりませんので、「書かずとも読める」という状態が、3歳にしては言葉の成長が早いと判断されるポイントではないでしょうか。

日常の育児を見直すと3歳児の言葉の成長は早くなる

言葉の成長を伸ばしたいという保護者にとっては、教え込むという方法で発達を引っ張ろうと考えます。

でも、子供の興味をきちんと刺激せずに教え込むのは、いくら一生懸命保護者が接しても意味がありません。

日常の育児をもう少し見直して接してみると、言葉の成長を早くすることができます。それは、言語聴覚士のような言葉の専門家に頼ることなく、家庭で行う育児の中に盛り込むだけで十分です。

成長の加速を担う保護者の育児は責任重大。でも、プレッシャーを感じてしまっては子供にも悪い影響が波及します。

育児を楽しみつつ、伸び伸びと言葉の成長を培う毎日が送れるようになると、わが子の成長を心から喜ぶ時間が流れます。

遊びから興味を拡大させる

子供が3歳になると遊び方のバリエーションが増えます。

そこで、保護者が新たな遊びの楽しみ方を提案しながら、興味を拡大させることを行うことで、言葉の成長を早めることができます。

いつもの遊びに何かを加えると、きっと新しい言葉に触れるチャンスが訪れます。そのコツを周囲がわかっているだけでも、豊かな言葉の体験が重ねられるようになります。

言語聴覚士が行う言葉の支援には、遊びや親子の関わりについてコントロールを行う内容を盛り込む場合があります。それは、日常の育児におまけをつけるようなやり方になるので、ぜひとも普段の関わりに取り入れてみてはいかがでしょうか。

・ままごと遊び

普段使っているものに加えて、実際にお料理で使うようなものを1つだけ子供に渡してみましょう。

リアルな感じが遊びの興味を広げ、渡したものの名前や特徴、用途などにも触れることができます。道具は「○○するもの」という目的が入れられます。

動作表現を膨らませるためにも、リアルさを出してみてはいかがでしょうか。

・ごっこ遊び

役割分担を行うための遊びですが、そこで子供が知らないルールや言葉を入れてみましょう。

お医者さんごっこをするのであれば、「体温計」「注射」などを入れても良いでしょう。

「診察」という難しい言葉も、遊びの中で触れることで「どんなものか」という理解が進みます。

・合わせ遊び

似ているものや同じものなどを合わせる関わりをしてみましょう。

子供が着ている服と同じ色のものを住まいの中で探してみるのも面白いです。色の名前が増えてきたら、オレンジやむらさきなどの色を入れてみるのも良いでしょう。

外出先でも同じ色を見つけるような働きかけを行ってみると、いつもの散歩が楽しくなるはずです。

・お手伝い

毎日の食事を子供と一緒に作ってみましょう。

とはいっても全ての行程を一緒に取り組むわけではありません。野菜をちぎってもらったり、材料を混ぜてもらうなど、簡単な作業をお願いしましょう。

配膳を手伝ってもらうというのも触れていない言葉の経験ができます。

・ルールのある遊び

文字や数字に興味を持たせるのであれば、遊びの中で楽しい体験をするべきです。

同じものをマッチさせる力は3歳で発達するでしょうから、カルタや神経衰弱などを使って、自然に文字や数字に触れさせてみるのも良いでしょう。

・ブロック遊び

何かに見立てて遊ぶにはちょうど良い素材です。まだ知らないものを保護者が作って見せてあげて、実物も画像で良いので見せてあげましょう。

すると、イメージを繋げて知識として獲得する回路が促されます。「○○みたい」と思えるようになることも、言葉の成長には必要です。

褒めて伸ばす好奇心とコミュニケーション能力

遊びの中で意識的な関わりを積み重ねていくと、自然と言葉に触れる機会が演出できます。

でも、それにプラスして子供の心を磨くような働きかけを行うのであれば、自己肯定感を高めるようなやり取りを行ってみましょう。

自己肯定感というのは、「自分って凄い!」と思えるような気持ちです。誰かに褒められたときに、このような感情を膨らませることができます。

3歳になると色々なことが当たり前のようにできるようになるので、以前は褒められていたものがスルーされている可能性があります。でも、子供にとっては「もっと見て欲しい」という気持ちがあるはずです。


自分で取り組んでいるものを丁寧にピックアップして、細かく褒めていくことを実践していくと、子供の自己肯定感は養われます。

以前は「上手だね」と褒めていた行動を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。「うちの子は褒めるところがない」という保護者の方もいるのですが、本当にそうでしょうか?

自発的に行動しているものの中で、2歳の時にはできなかった行動が必ずあるはずです。

食事の行動を分析していくと、3歳になったことで上手になっているものはありませんか?

スプーンを使って口に運ぶという動作一つをとっても、「綺麗に食べるようになったね」「スプーン上手に使うね」「ちゃんと口に入る量をすくえるようになったね」といった声かけはできるはず。

ほんの些細な行動でも、子供は「見てもらえた」「褒められた」というエピソードがあると嬉しいもの。それが、自発的な行動を育むテクニックなのです。


褒められて育てられている子供は、新たな環境への好奇心も前向きに考えられます。

「できるかわからないけれど、ちょっと頑張ってみようかな」と思える気持ちも、自己肯定感が養われていなければ出てこないのです。

いつも失敗ばかりを叱責されて育つ子供ほど、新たな環境が「怖い」と思ってしまうのです。

それは、人との関わりを持とうとするコミュニケーションにも影響します。やり取りが楽しいと思える経験を積んでいる子供ほど、言葉の成長が早くなるのです。

大人の見本をたくさん見せると3歳児の言葉が変わる

子供は保護者をはじめ、周囲を手本にして学ぶ力を誰しも持っています。

言葉の発達を促すためにも、たくさんの見本を見せてあげるべき。それが積み重なることで、自分なりのアレンジができたり、実際のコミュニケーションで使えるといった実用性が高まります。

「3歳なんだから自分でやりなさい」という声かけは、子供にとっては酷なもの。「もう3歳」ではなく、「まだ3歳」という思いで手助けをたくさんしてあげるべきです。


保護者が取り組んでいるものを見ていると、自分でも成功できたという体験ができるようになり、見る大切さが養われます。言いつけを守ると成功したという体験があれば、聞く大切さを養うことになるでしょう。

子供の成功は保護者が支えるものです。大人の声かけ一つで子供の行動がコントロールされるからこそ、見本というものを大切にしましょう。

「なに?」「どうして?」に触れる育児の実践

3歳になると疑問詞を使う機会が増えます。言葉が早い子は、質問攻めをする頻度がアップするはずです。

保護者にとっては返答するのが大変かもしれませんが、これは子供の成長の栄養になるもの。だからこそ、育児の中で子供の何気ない疑問を解決できるような基礎を養うべきです。

子供の言葉を増やすのであれば、「なに?」「どうして?」というやり取りを増やしましょう。具体的にどのような場面で使用すると効果的なのかを説明しましょう。

・「なに?」の使い方

子供が目にしているもの、触れているものが「なに」かわからないときに使える表現です。個人差はあっても子供が考える様子が伺えるのであれば、「これ、なにかなぁ?」と子供の心の動きを言葉にしてあげましょう。

子供が対象のものがわかっているのであれば、知識を披露してくれるでしょうし、わからない場合は返答に困るはず。

知識がある場合には新たな知識を入れるような「おまけ」を付けるのがおすすめ。わからない場合には子供が理解しやすい表現で説明を行いましょう。

こうしたやり取りを行うことで、「なに?」と聞くと知識が得られることを子供ながらに学びます。わかることが楽しいと感じるようになった子供は、どんどん日常の疑問をぶつけるようになるのです。

・「どうして?」の使い方

「どうして?」という疑問の先には、必ずといっていいほど「○○だから」という説明が行われるはずです。

理由を知らせるやり取りは、3歳にとって必要な質問ー応答の力を養います。

日常の中で理由を説明してあげられる場面はたくさんあります。泣いている子供を見かけたときには、「どうして、泣いているのかなぁ?」という気持ちが子供の中には宿ります。

それを保護者が言葉にしてあげることで、疑問と解説が一度に聞けるでしょう。「ママが居なくなったから泣いているんだね」や、「お菓子買って欲しかったのかもね」というように、色々な理由の説明が聞かせられます。

子供の成長は保護者が培うもの

3歳で言葉が早い・遅いという違いが生じるのは、子供が言葉の素晴らしさやコミュニケーションの面白さに気付いているか否かが関係します。

いつも近くにいる保護者を中心に、子供の好奇心を刺激して、言葉という道具を使ってやり取りを行っていく魅力に触れさせることができていれば、きっと豊かな成長を遂げるはずです。


言葉が早いというアドバンテージを日常にも活かせるようにするためにも、教え込む育児ではなく、一緒に育むというスタンスを忘れずにいて下さい。

保護者が焦ってしまうと、子供にとってはデメリットばかりが膨らみます。ゆとりを持って接することを心がけて、知らないものにさりげなく触れるような育児スタイルが貫けるようになると、新たな体験から知識の拡大が行えます。

上手な育児ではなく、体験に意識を置いて心の動きに合わせた言葉かけを行っていくと、子供の心と言葉はどんどん成長します。その喜びがあれば、丁寧な育児がどれだけ大切かを実感できるでしょう。