子供の成長を見守っていたけれど、3歳になっても言葉が遅いという印象が解消されないという場合には、そろそろ専門的支援を検討する時期かもしれません。

育児のコツをつかむだけでも、子供が変わるという瞬間が体験できます。

ここでは、3歳児の言葉が遅いと感じる保護者の心配事と、家庭で悩みを小さくするための関わりを言語聴覚士が紹介します。

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3歳児の言葉が遅い!しゃべらない・言葉が出ないときに取るべき行動

保護者が感じる言葉の不安は、3歳になるとより一層強く感じるようになります。それは、乳幼児健康診査で同じ月齢の子供を見る機会があるからではないでしょうか。

3歳児に実施する乳幼児健康診査は、国で決められた必須のものです。統計としても3歳児の90%以上が受けていて、身長や体重を計測したり歯科検診を行ったりと、子供の成長を確認することができる貴重な機会です。無料で受けられるというのも、90%以上という実施率を支えています。

もしも言葉が遅いと感じているのであれば、3歳児健診での相談がおすすめです。

当日は多くの子供と保護者が来るので、じっくりと相談する機会を別に設けてくれることもあります。現時点で抱えている言葉についての相談を行うと、今後の流れが提示されるはずです。

まずは地域の保健センターが相談先となる

3歳児健診を実施している地域の保健センターでは、言葉の発達に関する相談を随時受け付けています。

しかも、今後の見通しを明確にしてくれます。保護者にとっては思い切って相談できるチャンスなので、日ごろから気になっていることを遠慮なくぶつけましょう。

保健センターには保健師だけでなく、小児科医や歯科医、時には言語聴覚士や心理士などが介入していることもあります。言葉の相談を行うと、専門職による面談を設定してくれるところもあります。


3歳で発達に問題なしとなる場合には、5歳児健診が設定されなければ小学校まで言葉の相談を行う公の機会はありません。ある意味、就学前の最後の砦といっても過言ではないのです。

地域の保健センターは日ごろから保護者の相談を受け付けています。3歳児健診では伺うことができなかったという場合でも、電話で面談の日取りを決めて頂くことができます。

これからどこに相談するのが良いかも示してくれるので、まずは保健センターに連絡するのが良いでしょう。

悩みにあわせた専門家への相談もおすすめ

3歳で言葉が遅いと感じるようであれば、子供の言語発達を専門的に見ている言語聴覚士に相談するのもおすすめです。

言葉という視点から子供を評価し、日常生活の関わりから発達を促す働きかけを行ってくれます。育児の悩みを共有し、どうすれば現状が打開できるかを考えてくれるため、保護者の負担を大きく減らす存在になってくれるでしょう。


保育園に通っているのであれば、まずは保育士に言葉の状況を伺ってみるのも良いでしょう。保護者よりも専門的な立場から子供を観察しているため、日々の関わりから成長の様子を教えてくれるはずです。

ほかにも、心理士が介入しているところがあれば、子供の発達心理に関わる視点からの評価が行われます。一般的な3歳と比較してどうなのかというイメージをハッキリさせることもできますし、心理検査を使用した全般的な発達評価も行ってくれるでしょう。


このように、3歳でも言葉に関する専門家に触れる機会はたくさんあります。

ただし、保護者が行動を起こさなければ出会うことがない専門家もいます。3歳になったのに言葉が遅いと感じるのであれば、「様子を見る」という時間を過ごすのではなく、現状を把握してもらって次のステップに向かえる体制を整えてください。

言葉の遅れ・しゃべらない原因は?3歳の子供を持つ保護者が抱く発達の不安要素

3歳に成長した自分の子供は、想定しているような発達の経過をたどっていないかもしれないと思ったとき、どうやって関わっていけば良いかがわからなくなります。

そんな不安が募ると育児に対する自信がなくなり、相談できる人が身近にいなければ保護者の心配ばかりが膨らんでしまいます。

このような環境は育児をするうえで良いものではありません。

言葉が遅いといっても、実際にはどんなことが保護者の中で引っかかっているかをまとめておくのが、迅速な介入にも繋がります。

自分の子供のことで悩んでいるのがどういったものなのかを、相談が多い傾向と照らし合わせてみてはいかがでしょうか。それによって問題を小さくするための介入が見えてきます。

3歳で言葉の発達で相談が多い子供の傾向

保護者が日常子供と関わるうえで感じる不安要素。3歳にもなると困ったことが多くなるのですが、ある程度の傾向に分類することができます。

言葉が遅いといっても掘り下げて伺ってみると、根本的に不安を抱えている部分が違うことに気づくはずです。

保護者が抱く言葉に関する不安要素としては、

  • 言葉を全然喋ってくれない
  • 発音・滑舌が不明瞭で何を言っているかわからない
  • 癇癪が酷くてしつけに困っている
  • こだわりが強くて関わりにくい
  • 人に対する恐怖心が強くて保護者以外との関わりができない
  • 体調を崩しやすく常に鼻が詰まっている
  • ルールに沿ったやり取りができず保育にのれない
  • 吃音(吃り)があって円滑にやり取りが行えない


このような相談を相談先で行うと、そこからは専門的な支援がスタートするのが一般的。

言語聴覚士をはじめ、子供に関わる専門家のトレーニングを受けて、言葉を用いたやり取りの成長を促す働きかけが行われます。もしくは子育て支援のサービスを活用しながら、成長の刺激になるような体験が設定されます。

ただし、全ての家庭に同じような対応をとるのではなく、それぞれが抱く困り感の解消を行う働きかけをしていきます。

身近な家庭で言葉の相談を行っている人がいたとしても、そこで呈示された支援内容は自分の子供には使えません。

家庭それぞれの成長を踏まえて指導されているものなので、同じようなことをしても伸びないというのは、子供の現状に合っていないからなのです。

言葉が遅い問題を解決するための介入方法

ここでは、3歳児健診で多くの相談が寄せられるものをピックアップし、介入の一例を紹介します。同じような悩みを抱えている場合には、指導を参考にしながら関わってみましょう。

ただし、ベストなのは言葉が遅い状態を専門家に相談することです。早くに相談すればできること・伸ばせることがたくさんありますから、勇気を出して相談の一歩を踏み出してください。

■言葉をまったく喋らない・単語しか話さない場合

3歳になって言葉を喋らないという状態は、理解がどこまで育っているかを評価します。「わかっているけれど喋らない」状態なのか、「そもそも言葉という概念が出来上がっていない」状態も考えられます。

わかっている言葉は育っていても、やり取りに話し言葉を必要と感じていなければ、3歳になっても言葉を喋ってくれない状況が生まれます。

こうしたケースには、喋ることで希望が叶えられるような関わりを指導して、言葉を伝える楽しみを育むやり取りの提案が成されます。

「聞こえがどうか?」というチェックも大切です。発達に問題があったとしても、表現する何らかの手立てを持っているはず。話し言葉が出ないという場合には、聞こえが正常であるかも確認しましょう。

■発音が不明瞭・滑舌が悪く何を言っているかわからない、聞き取れない場合

3歳はまだまだ日本語の発音が完ぺきに言えるわけではありません。もちろん、成長には個人差があるので、とても綺麗に話してくれる子供がいるのも事実です。

日本語の完成は4歳半くらいが目安になります。つまり、まだ不完全でも構わない年齢です。

それでも子供同士のやり取りを聞いていると、発音が未熟だという心配を抱くことはあるでしょうから、口の動きや舌の動きを向上させる働きかけをするべきです。


食事を中心に、発声・発語に関わる運動機能をアップさせる環境調整が行えると、毎日トレーニングが無理なく実施できます。

訓練的に発音を明瞭にするのではなく、日々の関わりから機能向上ができると良いでしょう。

特に舌の動きの悪さは幼い発音に感じさせる印象を生みます。その傾向がわかるだけでも改善点がはっきりするでしょう。

■癇癪が酷くてしつけに困っている場合

子供が癇癪を起すということは、子供が抱く意思と実際に起こっていることがズレているのがほとんどです。原因を探っていくと、癇癪を起したワケが理解できるのではないでしょうか。

こうした困り感を解決するには、日々の記録を付けておくのが有効です。

一日を振り返ったときに、どうして癇癪を起したのかを冷静に考えてみると、子供が考えていた意図がわかるはずです。

保護者目線で考えるのではなく、子供の気持ちに成り代わって考えてみることが必要です。こうした発想の転換を身に着けることができるようになると、癇癪を起しにくい対応ができるようになるでしょう。

■こだわりが強くて関わりにくい場合

子供がこだわりを持つことは、決して悪いことではありません。「僕はこうしたい!」という自我が目覚めるのは大切な成長と言えます。

でも、保護者の言葉かけに関係なく自分の望みだけを叶えようとするスタイルは、関わりにくさを感じてしまう場面があるはずです。

こだわりの原因になるものがわかっているのであれば、それをストップさせる術を持ちましょう。


食事前にテレビを見るのが止められないのであれば、そもそも食事前にテレビを見なくても済むようなやり取りを行っているだけでも回避ができます。

ショッピングに出かけると走りだして迷子になるようであれば、買うものを一緒に見つけるといった興味を引くような行動を体験させてあげるだけでも違います。

手を繋いで歩くのは3歳児にとっては大変です。体力も削れてくるとグダグダになってしまうことも多いので、カートに乗って楽しく買い物を経験することも重要です。手を繋いで歩くという行動は、ほかの場面で経験すれば良いのですから。

■人に対する恐怖心が強い、怖がりで保護者以外との関わりができない場合

保護者以外のやり取りに恐怖心がある子供は、どのように関われば良いかがわからずに困っているかもしれません。

単に不安というだけでなく、相手の言動や行動が予測できないため、怖さという感情が膨らんでしまうのでしょう。

こうした状況の子供を無理に一人で遊ばせるような突き放し方をしても、なにも良いことはありません。むしろ、保護者が子供に寄り添って関わっていくと、自然と自分との距離を空けても大丈夫という気持ちが生まれます。

じっくりと子供の不安を解消する関わりのコツを覚えると、不安を少なくさせるやり取りから子供だけで行動する世界が広がります。

■体調を崩しやすく常に鼻がつまっている

保育園に通っている子供に多いのですが、風邪をもらうことがあって鼻づまりが年中あるというケースも少なくありません。

中耳炎を起こしている場合もあり、聞こえにくさがあるまま生活している場合もあります。

こうした環境は発音が不明瞭になったり、鼻づまりによって集中力が低下して落ち着きが無かったりと、言葉の部分だけでなく生活態度にまで影響します。

耳鼻咽喉科を受診して、しっかり鼻の治療を行うことで改善が期待できるでしょう。

■落ち着きがない・多動、ルールに沿ったやり取りができず保育にのれない

自分の要求を訴えることができても、集団生活に馴染めないという子供がいます。ルールに沿ったやり取りができず、自分ルールで動いてしまっているような子です。

保育の中でのトラブルが多い場合には、どこまで子供が理解できているかを把握するべきです。

簡単な行動の指示が聞けるかを見るには、家庭で簡単なお手伝いをお願いするのがおすすめです。

口頭で言ってわかるのか、身振りなどの視覚情報を含めて呈示することで理解してくれるのかなど、子供が「わかった」と感じ取った場面を振り返り、ルールの線引きができる・できないものを絞り込みましょう。

先々の予定を事前にアナウンスするだけで円滑に動ける子供もいるでしょうし、言葉だけでは理解が難しいという場合もあるはずです。それぞれの理解度に合わせた関わり調整が必要です。

■吃音(吃り)・言葉に詰まることがあって円滑にやり取りが行えない

話しの流暢さが損なわれる吃音(きつおん)。

吃り(どもり)といって、「ぼ、ぼ、ぼくは」など言葉の出だしがつまってしまったり、「ぼーーくはね」といった言葉の一部を引き延ばすこともあります。「ぼ・・・・」っと言ったきりでしばらく言葉が出てこないという難発という状態に発展している子供も存在します。

吃音がある子供への関わり方は、保護者が思っていることと正しい対応方法は違いが生じているのが一般的。「ゆっくり話していいよ」「落ち着いてもう一回言ってみて」といった促しをしてはいけません。


3歳になって話せるようになったからといって、周囲は難しいやり取りを求めてしまうことがありますが、会話のレベルを下げて接することも必要です。

たとえば、「今日何食べたい?」と聞くよりも、「今日パンとご飯どっちにする?」というように、広い範囲から言葉を引き出して説明するのではなく、選択肢を与えて返答を簡単にするといったやり取りも必要です。

正しい接し方を学ぶためにも、言語聴覚士の指導を受けるのがおすすめです。

3歳で言葉が遅い・出ない・しゃべらない場合は「様子をみない」が鉄則!

子供の言葉が遅いという意識は、3歳を迎えているのであれば「様子をみない」という意識を持ちましょう。

待っていても時間の無駄になってしまいますし、困り感はどんどん募る一方です。相談先はどんな地域でも保健センターがあるでしょうから、今後の見通しを立ててもらうためにもコンタクトを取りましょう。

3歳という時期は待つのではなく、積極的に行動する時期です。その判断が早ければ、年齢水準まで言葉が成長するまでの時間も短くて済むはずです。


周囲の子と同じようにペラペラ喋ってほしいという思いは、今後の育児にかかっています。

でも、保護者が頑張るだけでは順序良く言葉の経験を積み重ねられないのが現状です。そこで、言語聴覚士をはじめとした言葉のスペシャリストと協力して、子供に足りないものを見極めて、できることを着実に増やすことが行われています。

後悔をしない育児を行うためにも、様子をみるという判断をしないように気を付けましょう。

どれだけ子供のことを思って行動し、日常の育児でも発達に寄り添って関われるかが、今後の成功を左右するのです。