3歳がどれだけ言葉を理解するかは、保護者にとっては不安になることがあります。どれくらいわかっているのが順調な成長なのか、ある程度の指標があるとわかりやすいと思いませんか?
ここでは、言語聴覚士が「理解」という観点から、子供の言葉の成長をチェックするポイントを紹介。また、日々の関わりから理解を伸ばすコツもピックアップします。
3歳で理解する言葉の概念と発達段階
子供は生活の中で言葉を自然に学びます。3歳を迎える時期になると、わかるものが一気に増えます。
バラバラに覚えるのではなく、まとまりを作って効率よく覚えることも得意になります。また、見たものを当てはめるという行動も好むようになるので、比較が上手になるのも特徴です。
行動力も伴うようになる年齢の3歳は、アクティブに活動しながら言葉の吸収を加速させます。爆発的に言葉が成長する時期といっても良い柔軟な時期は、色々な概念を学習する機会にするべきです。
3歳で理解する言葉の特徴がわかっていれば、まだ触れていないものを探し、生活しながら意識的に触れるということで経験が積めるでしょう。
一つのまとまりに沿った言葉がわかる
今までは犬や猫など、一つの名称として覚えていた知識が、「動物」というまとまりで覚えられるようになるのが3歳の魅力です。
このようなカテゴリーといってまとまりで覚えていくことができると、効率よく言葉を理解する準備が進みます。
関連付けて覚えられるようになると、操作できる言葉の数も増えますし、覚えやすい法則性を導き出すことも可能です。似ているものでまとめるだけでなく、違いを理解して認識を深めることも3歳では達成するはずです。
3歳は身体部位の理解が進む時期です。お風呂では拙いながらも保護者が言ったところを自分で洗ってみたりと、ボディーイメージが具体的になります。手遊びでも体を使った歌が楽しく感じられるようになるなど、認識の変化が著しい時期です。
頭の中で言葉のまとまりが作られるようになると、バラバラに記憶されていたものが圧縮されます。ですから、新たに覚える余裕が生まれ、言葉の理解が進むのでしょう。
こうした作業を何気なく行っていくからこそ、3歳の言葉の理解は急速な発達を遂げるような印象を与えるのでしょう。
- 身体部位
- 色や形
- 食べ物や飲み物
- 数(1~5くらいまで)
- 動物の名前と泣き声・特徴
- あいさつ語
3歳でも言葉の数は900を超えるくらいまで増加するため、コンパクトに覚えるコツを知ったほうが覚えやすい環境が作れます。言葉を仲間ごとに分類できる知識が養われると、話し言葉にも成長が見られるようになるはずです。
比較を行いながら正しい表現が導ける
3歳の子供は比較をするのが好きになります。目で見てわかるものを比較していくことで、表現の幅が広がります。まだ確実に言えなくても良いので、大よそ「概念」としてわかっていることが大切です。
言葉の種類としては形容詞表現を使った比較が得意になるはず。
- 「大きい」・「小さい」
- 「長い」・「短い」
といった簡単な比較を行い、言葉のバリエーションを拡大させるのが3歳のスキルです。
- 「きれい」・「きたない」
- 「重い」・「軽い」
といった表現なども理解を示してくれるようになるでしょう。
今までは名詞+動詞といった理解が多かったものの、修飾的な表現を含めて理解してくれることが増えてくるので、具体的な表現を伝えることが楽しくなるのが成長のポイントです。
指示の遂行が上手になる
3歳は身体的な発達も著しい時期なので、「できること」が非常に増える時期でもあります。それは、言葉の理解を早くするために必要な成長でもあるのです。
保護者が簡単なお手伝いをお願いした際、子供はそれを言いつけ通りに実行しようと努力します。このような行動の指示を遂行する力が身に付くためには、文章単位の理解をしなければなりません。
簡単な言い付けに応えてくれるという成長は、言葉の理解を推し量るための指標にもなります。言っても伝わっていないという言葉かけのレベルを紐解いていくと、子供の言葉に対する理解力が把握できるでしょう。
ただし、子供が遊んでいるときにお願いをしても、そちらに気をとられていて反応してくれないこともあるので、お願いをするタイミングは気をつけてください。
3歳児の言葉の理解力に遅れを感じるときに、言葉の理解を加速させるお手伝い設定
3歳の子供の理解力を伸ばすのであれば、意図的にお手伝いを行ってもらうような生活演出を考えましょう。
いつもは大人がやってしまうことを、あえて子供にお願いするのです。手間はかかりますが、聞いて理解し行動するということができるようになり、保護者からも褒めてもらえるチャンスを拡大させられます。
- 新聞を取ってきてもらう
- リビングの電気をつけてもらう
- テレビのリモコンを取ってもらう
- ティッシュを捨ててもらう
- カーテンの開け閉めをしてもらう
- ドアの開け閉めをしてもらう
- お皿を並べてもらう
- 食器をそれぞれの食べるところへ置いてもらう
- 歯ブラシを持ってきてもらう
- 野菜をちぎってもらう
- 洗濯物をたたんでもらう
このように、簡単なお手伝い設定は大人が行っている何気ない行動をお願いするだけで十分です。
どのようにお願いをすることが子供の心をくすぐるかは、「困っている風」に演出することも大切です。子供は保護者が喜ぶことをしたいという思いがあるため、「役に立つ」ということを日常的に探しています。
その気持ちに寄り添ったお願い事をしていくと、きっと期待に沿うように遂行してくれるでしょう。
保護者のお願いは子供の行動力を左右する
子供は保護者のことが大好きです。ですから、お願いをされるということは、「自分を頼ってくれている」という気持ちが働きます。
「ぼく(わたし)って凄い!」という自己肯定感を育む関わりを日常的に取り入れられるようになると、子供の行動力を伸ばすことができます。
一緒に過ごしている時間の中で、子供にお願いできることは山ほどあります。時間がかかったり、言うのが面倒だったりするために保護者が自分で行っているでしょうが、3歳でもできそうなことを少しでもお願いしてみてはいかがでしょうか。
子供が気付き、誰かのために動くという状況判断の力は、日々の生活で磨かれるスキルです。保護者がきっかけを作ってあげることで、子供の行動力はどんどん成長します。
やがては誰かのために何かをするということが当たり前になり、人のことを思いやる感情が芽生えます。そんな優しさを育てるのは、保護者との関わりなのです。
自発的な表現が出るような理解を養う
子供の理解を育てていくと、自発的に考えて何かを伝える力が伸びてきます。それは、理解だけでなく表出面の促進にも作用します。
言葉は日々の関わりが引き伸ばすためのエッセンスなので、自分で考えて他者と繋がることで、表現力の豊かさが生まれてきます。丁寧に関わりを行っていくと、いつしか理解と表出が繋がる瞬間がわかるはず。
それまでは根気強く関わりつつ、言葉を引き出すコツをつかむための時間と考え、あせらずじっくりやり取りを行ってください。
理解力を進捗させるためには、意図的に交渉するということをしなければなりません。一方的な言葉かけだけでは、理解を促すには限界があります。
子供と保護者の双方が言葉という道具を用いて関わることこそ、自分で考えて何かを作り出す原動力を養います。
話すという前にわかることが大切なのが言葉のルールです。まだ知らないことでも周囲の働きかけで「わかる」状態へと変化するのであれば、言葉の理解は着実に貯まっている証拠です。
3歳児と会話が成り立たない・噛み合わない!言葉の理解力が伸びてこそ表現する力が磨かれる
言葉の理解は表現する力の源になります。ですから、「わかること」が積み重なっていかなければ、3歳が使いこなす表現のバリエーションは生まれません。
言葉は上辺だけでなく、深く掘り下げて考えることも必要なもの。そのためにも、理解力を伸ばすようなやり取りを意識しなければなりません。
子供の言葉を伸ばす方法は、専門的な療育を活用するという方法がイメージされるかもしれませんが、基本は家庭の中でやり取りを行うことで培われるものではないでしょうか。
生活の中で「わかる」という楽しみを感じ、そこから新たなコミュニケーションが生まれたときこそ、言葉の力に魅力を感じます。
子供が言葉を話すためには、「わかること」が無ければ実現不可能です。
想像以上に急成長する要素を持っていたとしても、丁寧にわかる言葉を増やしつつ、その言葉を使って関わることを怠っていると、実用的なコミュニケーション能力はいつまでも成長しないままです。
言葉にも色々な法則があるため、効率よく覚えるために圧縮する作業も必要です。理解を早く繋げてあげるためにも、関連付けを行いながら言葉の成長を願いましょう。
保護者が努力して意識的に関わった分だけ、子供は会話のスキルを学ぶもの。3歳になっても周囲より言葉が遅れていると感じるようであれば、まずは理解がどこまで育っているかを確認しましょう。
特別なサービスを使用しなくても大よその見立てができるので、母子健康手帳の3歳児のあたりをチェックして、言葉を中心に発達を遂げているところを確認しましょう。
それが行える人ほど、子供の言葉を育てることに抵抗が無く、自然なやり取りの中で言葉に触れることを実践できます。