2歳になったのに子供が喋らないのは、発達障害や難聴がなくても起こります。その原因は保護者の関わりかもしれません。
子供が話したいという意識を高めるためには、日々の接し方から見直すべき。特別なトレーニングを受けることなく、家庭で子供の言葉を育むことができるでしょう。
今までの接し方を少しだけ変えてみると、子供の変化に気付くタイミングが生まれます。
意識すると伸びが全然違うので、コツをつかんで育児を楽しみ、子供の成長を喜べる生活をおくる方法を言語聴覚士が解説します。
2歳児が喋らない・言葉がでない原因は保護者にある理由!言葉を教える・覚える関わり方
子供の成長は保護者の関わり次第で大きな差がつきます。
ですから、2歳で喋らないという事実を発達の問題と捉える前に、日常的な関わりから子供の成長が積み重なっているかを確認することが大切です。
育児のスタイルが原因というのは、保護者にとってはショックかもしれませんが、どれだけ育児の経験があったとしても子供に合った関わり方ができなければ順当な伸びはありません。
ただ、コツをつかんで関わりの修正ができるようになると、今までの分を挽回する言葉の発達は大いに期待できます。
保護者の関わりが子供の発達に繋がるため、育児の意識を変えるためのポイントを学ぶべき。関わり方一つで喋らないという悩みが解消される日が近づきます。
関わり方が子供の成長に合っていない
保護者は早く喋って欲しいという思いがあるので、子供に求める言葉のレベルも高くなってしまいがち。でも、全然喋っていない状態で言葉を引き出そうとしても、それは無理難題にしか感じることができないのです。
子供の成長を踏まえて言葉のやり取りを行わなければ、子供側からのリアクションは拾えません。言葉の階段をもう少し低く設定してあげると、応答しやすい状況が生まれるはずです。
2歳の子供は「はい」「いいえ」といったYES・NO反応ができるようになるのが一般的。
日常の関わりの中で子供に何かを伺うときに、簡単に返答できるような質問をしてみましょう。きっと何らかのリアクションをしてくれるはず。丁寧に了解を取っていくようなやり取りを行うことで、確実な表現の出し分けができるようになります。
もっと意識してYES・NO反応を求めるのであれば、否定させるということをわざと仕向けてみましょう。
絶対「うん」と言うような質問を投げかけるのではなく、否定的に応えてくれるような質問をするのがポイントです。
- 「お茶いる?」と聞くのではなく、「お茶いらない?」と聞いてみる
- 好きなテレビを見ているときに、「もうテレビ消す?」と聞いてみる
- 遊んでいる最中に、「もうネンネする?」と聞いてみる
このように、ストレートに「うん」と言わない場面を演出することも、手間にはなりますが必要な経験です。
何でも子供が首を縦に振るだけで場面が打開できるような関わりをしているようであれば、回り道をするようなやり取りを入れてみましょう。
難しい言い回しを控えて、シンプルに話しかけることも2歳では重要です。
長々と話しても、子供の記憶には限界があります。いくつもの要素を入れないように気を付けて、確実に「わかる」という体験を積んでください。わかる体験の積み重ねが、やがては自分で言葉を喋るという表現に繋がります。
- 「そのお皿リビングに持って行って、全部並べておいて」ではなく
- 「このお皿、向こうに持って行って」とお願いし、リビングに着いてから次の指示「お皿並べようか」と入れる。
このように、細かく分けてあげることも大切なのです。
「お皿」という表現を何度も使ってあげることもできるので、わからない言葉を数多く聞いて学ぶチャンスも作れます。いかにして子供に寄り添った丁寧な言葉かけを行うかが意識のポイントです。
教え込むことは言葉の楽しさを奪う
子供が喋るのは、言葉を使って楽しいと思えるような体験を重ねなければいけません。
教育熱心な家庭ほど見誤ってしまうのですが、教え込んでも言葉を喋る近道にはなりません。逆に言葉を使うことが苦しくなってしまうと、言葉を聞くことさえも拒絶してしまいます。
子供の才能を早くから刺激したいという気持ちは理解できますが、それが違う方向へ進まないようにしなければ、いつまでも言葉を喋る楽しさを獲得してくれません。コミュニケーションが楽しいと思えるような働きかけを意識することが、やり取りに対する意欲をアップさせます。
目が合ったらコップに手を伸ばし、「取って」という訴えをするはずです。
まだ「取って」とは言わなくても、保護者は子供の気持ちを感じ取ることは容易なはずです。
そのタイミングで、「取ってなの?」と心の動きに寄り添った声かけを行ってあげることで、「取って」と言うとママがコップを取ってくれるという学習をすることになるのです。
言葉の習得には何らかの報酬が発生しているはずです。「取って」というと手の届くところに持ってきてくれたという状況も、子供にとっては報酬です。
言葉を話すと何かが叶えられたという体験がわかるようになると、おのずと言葉を真似することに意義を感じるようになるのです。それこそが、話すための準備を重ねる基礎を作ります。
教え込む必要は全くなく、むしろ自然なやり取りの中で表現することのメリットを感じてもらうだけで十分なのです。
2歳で喋らない・言葉が遅い場合、上の子が関係しているケースも!言葉を教える・覚えるための接し方
2歳の子供が喋らない理由は、「喋る必要が無い」という認識をしているかもしれません。
それは、周囲が子供を愛するからこそ起こっていることの場合もあるのです。よかれと思ってしている計らいが、子供の言葉に影響することがわかると、保護者の気遣いで修正をかけることができるはず。
言葉が遅いという状況は、保護者の関わりが大きな影響を及ぼすことが少なくありません。発達障害などの原因が何も見つからなくても、日々の積み重ねから言葉の発達が遅れてしまうのです。
それだけ日々のやり取りが重要であることを実感したとき、子供のためにすべきことが見えてくるのでしょう。
言葉を発するチャンスを逃す上の子の気遣い
2歳で喋らないという子供の相談を受けることがある言語聴覚士は、家庭環境をリサーチして原因を探ることがあります。
それは、上の子がいてお利口さんの場合には、何気ないやり取りを兄や姉が先取りしてしまい、2歳児は言葉を持たなくても生活に不便しないという状況が起こっている場合があるからなのです。
本来であれば子供が言葉を発することで周囲が気付き、そこからコミュニケーションが始まるチャンスが生まれます。でも、肝心な表現を周囲が簡単に汲み取ってしまうことで、何も発することなく要求が通ってしまうことがあります。
そんな暖かい家庭に生まれた子供ほど、言葉が遅れてしまうというリスクが生じやすくなります。
上の子が優しくて、いつも下の子の面倒を見ているという感じの家庭や、お父さんがイクメンで、積極的に子供の面倒を見ている家庭にも起こりやすい状況のため、母親にとっては「どうして言葉が出てこないのだろう?」という感覚が宿ります。
でも、環境を整理していくと、チャンスが少ないという状況が見えてきます。
してあげることは良いことばかりではない
子供に優しい環境は、一見すると言葉の発達を促進するというイメージがあるかもしれません。でも、子供の要求をきちんと汲み取る姿勢ができていなければ、言葉の先取りをしている可能性が生じます。
せっかく何かを言えたのに、それが無くてもやり取りが成立し、自分の欲求が満たされるということは、言葉を発する必要性を学ぶことができません。
赤ちゃんは「泣き」で要求を行いますが、それすらも必要なく至れり尽くせりの環境があると、表現することのメリットがわからなくなってしまいます。
してあげることは優しさですが、そればかりでは言葉を育む環境としては良いものではないのです。
上の子がいる場合には、どうしても「してあげることが良いこと」というイメージを抱いてしまいます。
でも、経験不足を露呈する前に、きちんと言葉を学ぶためのエッセンスを下の子にも経験させることを保護者は気を付けてください。上の子にもお手伝いばかりではなく、見守ってもらうことをお願いするのも大切です。
2歳児が言葉を覚える・話せるようになる!言葉を促し増やすための保護者の基本姿勢
保護者の関わりが上達するだけで、子供の言葉はどんどん成長します。コミュニケーションの基本姿勢を知っておくと、誰でも簡単に質の高い言葉の学習を生活の中に盛り込むことができるのです。
子供の発達を見守る大人の基本姿勢は、SOULという技法が存在します。これは、ほんの少し意識するだけでも使えるエッセンスですから、自分の子供と接するときに意識を向けてみましょう。
SOULは4つの要素の英語表記の頭文字を取ったものです。
- Silence:子供がしたいことを静かに見守る。大人が必要以上に介入しない。
- Observation:子供の思考・行動をよく観察する。
- Understanding:観察した情報から子供に必要なものを理解する。
- Listening:子供の言葉やサインなど、発したものに丁寧な傾聴を行う。
関わりのための技法は色々なものがありますが、基本はこの4つの要素を保護者が意識して、そのうえで必要な言葉かけを行っていくことでコミュニケーションが成り立ちます。
2歳になったけれど喋らないという心配をしているようであれば、周囲の関わりを見つめ、子供の言葉育てを阻害していないかを確認してください。
もしも改善点があると感じたのであれば、それを日常で修正することから始めましょう。
子供の発信を待つ我慢が必要
大人はこれまでに様々な経験を重ねてきたため、子供のしたいことを予測することができます。ですから、何らかのアクションを起こす前に、見通しを立てた行動で危険を回避したり、泣かないように希望を叶えることができます。
でも、子供の成長にとっては、失敗することも必要ですし、未知なる体験を重ね、自分なりに考えることも必要です。
子供の発信を断つことになるような回避をするのではなく、できることなら経験させて学ぶということも必要です。命の危険が及ぶようなことは止めなければなりませんが、小さな失敗から考えて修正するということも言葉の成長には必要不可欠です。
声を出すことで大人が自分の元に来てくれるという認識も、日々の関わりの中で学習されたルールです。
子供の発信を待つ我慢を大人が理解していると、きっとこぼれてくるものがあるはずです。それを言葉にしてあげるのが、周囲の役割ではないでしょうか。
要求を促す生活演出が必要
子供が思わず話したくなるような生活演出が行えるようになると、自然と言葉を使う習慣が身に着きます。
まだ喋らないというのであれば、日々の関わりを少し変えてみることで、何かを表現する機会が生まれます。どうやって子供が対応してくれたのかを追っていくと、言葉を使うことへの準備を整えていることがわかるかもしれません。
子供が言葉を発するタイミングは、欲求を満たしたいときに起こります。
- 自分では達成できないことがあるとき
- 体験を共有したいとき
このような場面があれば、子供の「こうしてほしい」という気持ちが生じます。それを保護者が子供の気持ちを代弁してあげると、言葉の表現方法が学べます。
言葉は真似をして上手になっていくものです。つまり、良い見本が無ければ成長しません。
2歳になっても喋ってくれないのであれば、子供の気持ちを汲み取ったときに、さりげなく子供が伝えたい心の動きを言葉にしましょう。
- 「コップ、取って」
- 「ママ、見て」
- 「おいでー」
- 「ちょうだい」
といった簡単な表現でも、子供はどう伝えると良いのかがわからないもの。それを周囲が子供の気持ちに合わせて代弁してあげるべきなのです。
先取りをするのではなく、子供が「伝えたい」と感じるときまで待つことが重要です。
2歳なのに言葉がでない、喋らないからといって焦らないことが大切
子供の言葉が出てこないという状況は、2歳になると焦ってしまうのが一般的。でも、保護者が関わりのコツを習得するだけで、そんな困り感を解消できるかもしれません。
思い悩んで毎日を過ごすよりも、できることを実践して変わったという印象を抱いた方が、育児が安心できるようになります。
子育てはほんのわずかなコツを知っているだけでも大きなアドバンテージになります。
言葉に触れるという点での魅力を子供に感じさせる毎日を過ごすことができるようになると、きっと何らかの変化が起こるはず。それを家庭で培っていくことこそ、育児の楽しみや達成感を味わうためには必要です。