子供の成長を願う保護者は、日々の関わりから言葉の発達を促しています。

でも、意識して「言葉を伸ばす」という関わりをしているのではなく、自然な流れで赤ちゃんへの声かけを行っているはずです。

ここでは、話しかける大切さと言葉の成長への効果、声かけをしないとどのようなデメリットが生じるかを、療育に携わっている言語聴覚士の視点も交えて説明します。

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赤ちゃんへの声かけ・話しかけ時期はいつから行うべきか?

赤ちゃんへの声かけは、生後間もなくして保護者が何気ない言葉を聞かせ、愛情を表現するのが一般的。「可愛いねぇ」「お腹すいたかな?」「おしっこ出たねぇ」など、子供が示す反応を言語化するのが基本ではないでしょうか。

声かけはいつから行うかではなく、生後すぐに当たり前のように行われているのが基本です。つまり、保護者が何気なく発する言葉かけこそ、赤ちゃんの反応を促すエッセンスとなります。その大切さと刺激の頻度を学びましょう。

生後間もなく声かけを開始するのが一般的

赤ちゃんへの声かけは、生後間もなくから開始されます。赤ちゃんが示す空腹や不快な感情に対して、声を出したり泣いたりといったアクションを起こします。それに保護者がお世話をするというのが関わりです。

このやり取りを丁寧に行うことこそ、親子の関係を深めるために重要な役割を持っています。この時期から声かけを意識することは、その後のコミュニケーションへ繋がります。生後間もなくから4ヶ月くらいまでは、赤ちゃんの泣きに素早く反応することが、質の高いやり取りへと波及するのです。

言葉・話しかけ方は?どのくらいするのが良いのか?

「赤ちゃんには言葉のシャワーを浴びせましょう」という表現を目にすることがあるかもしれませんが、果たしてずっと声かけ・話しかけをすることはできるでしょうか?実際には「浴びせ続ける」ことはできないはず。

あくまで自然に話しかけるくらいを意識すると、言葉が話せない時期の赤ちゃんでも、あたかも親子でコミュニケーションを取っているような感じに見えるはずです。言葉を育むためには、子供の反応に寄り添った声かけ・話しかけを行わなければ意味がありません。

「言葉の刺激に触れさせるためにテレビをずっとつけている」というのもNGです。子供の気持ちに関係なく言葉を聞かせても、無機質な学習にしか繋がりません。実用的なコミュニケーションを養うには、生のやり取りを積み重ねることが必要です。

赤ちゃんが声かけ・話しかけに反応する時期はいつから?

赤ちゃんはいつから声かけに反応するのだろうと考える保護者は多いでしょうが、生まれて間もなく行う新生児聴覚スクリーニングという検査からも、音に対する反応は生後すぐから始まっていることがわかります。

子供の言葉が遅いという心配をして言語聴覚士の療育に出向く保護者も多いのですが、赤ちゃんの時期からの関わりが、その後の成長へと繋がることは明確です。それだけに、月齢に応じた関わりのコツを学びましょう。

4ヶ月くらいまでの反応

生まれて間もない頃の赤ちゃんは、泣くことで大人の注意を引く以外のコミュニケーション手段を知りません。でも、4ヶ月くらいまでに徐々に愛着が形成されるようになるのは、日々の関わりから学習している成果です。

まだ話さない時期だから声かけはいらないのではなく、表情や温もりでのコミュニケーションはすでに始まっています。だからこそ、子供側の反応の有無に関係なく、話しかけるように心がけるべきです。

この時期は、赤ちゃんの発信に対して保護者が反応するといったやり取りが活発に行われるべきとも言えます。欲求を叶えることで機嫌が良くなり、そのタイミングで保護者が声かけをすることで、やがては意図して求めるようになるのです。

4ヶ月くらい~12ヶ月くらいまでの反応

赤ちゃんの首がすわる時期に差し掛かると、音に対する反応も変化します。徐々に音を探すことが上手になってきますから、保護者の声かけに反応する明確さもアップする時期です。

喃語を話し始める4ヶ月くらいの時期になると、言葉にならない赤ちゃん側の発信も、保護者が「ミルクかな?」「オムツ濡れたの?」「ネンネかなぁ」といった言葉にしながらやり取りを行います。欲求を満たすことを丁寧に行っていくことで、どんどん愛着が強くなり、やがては人見知りを迎える時期にさしかかります。

つまり、日々の声かけに意味のある反応を示すようになり、その積み重ねが言葉を真似するといった行動に波及し、意味のある言葉を発する準備が整えられます。赤ちゃんが言葉を発信するための貯めを作っている時期といっても良いでしょう。

声かけ・話しかけの効果!語彙拡大には声かけが必須となる

赤ちゃんが成長すると、意味のある言葉を発する「初語」が確認できる時期がきます。そこからは保護者も話せる言葉の数をカウントするのが大変になるくらい、どんどん新たな表現をコミュニケーションの中で使われます。

こうした子供の語彙拡大は、日常生活の中で触れたものが使われます。つまり、親子もしくは赤ちゃんに接する人が使っている言葉が、語彙の数へと直結します。

声かけが苦手だからといって無言のままの生活を送っていると、いつまで経っても子供は言葉を用いたコミュニケーションの素晴らしさを感じることはできません。意図して関わる必要があるのです。

12ヶ月以降は爆発的な言葉の増加時期

いわゆる「初語」といって、意味のある言葉を話し始めるのが12ヶ月くらいです。個人差はありますが、母子健康手帳を確認すると、おおよそ1歳前後に何らかの意味のある言葉が赤ちゃんから聞かれることがわかります。

ただし、言葉の貯めを作っていてまだ表面に出てこないこともあるので、まだ意味のある言葉を話していないからといって、すぐに医療機関を受診しなければならないわけではありません。

言葉の成長に心配がある場合には、次の4点を押さえておきましょう。

  • 1歳6ヶ月時に行われる乳幼児健康診査で相談する
  • お住まいの保健センターへ電話して、面談の予約を取る
  • 小児専門の言語聴覚士がいるところへ相談する
  • 子育て支援事業に参加して、そこで子供の様子を見てもらう

こうしたサービスを利用して、赤ちゃんの現時点での成長を評価してもらうことも可能です。

この時期は本当に個人差が大きく、ペラペラ数語を話す子もいれば、まだ一語も話さないということも考えられます。でも、心配に思ったときには保護者の不安を解消するための行動を起こすべきです。

相談先では育児に対する指導を行ってくれるため、声かけが苦手だというお母さんにとっても関わりのコツがわかり、子供への接し方を上達させるチャンスです。自分の関わりが子供にプラスの効果を与えていることがわかるようになると、育児に対するモチベーションもアップするでしょう。

声かけが苦手なら寄り添う気持ちが必要

赤ちゃんへどのような声かけを行えば良いかがわからず、接し方に困る保護者も少なくありません。それは、一昔前とは違って核家族化が進み、育児のお手本を見る機会が絶対的に少なくなったことも影響しています。

でも、目の前の赤ちゃんはどんどん成長します。保護者が意図して関わらなければ、成長のスピードを緩やかにしてしまうかもしれません。ただ、「どうやって」の部分がわからなければ、育児ストレスが大きくなり、関わるのが嫌になって赤ちゃんへの愛情が注げなくなるといった困り感が膨らむばかりです。

もしも声かけが苦手なのであれば、赤ちゃんの行動を実況するように語ってみましょう。自分からの発信だけでなく、子供目線での言葉も話すようにしてみてはいかがでしょうか。すると、行動に寄り添った声かけが自然に行われるようになるはずです。

赤ちゃんが目にしたものに共感し、そこに言葉を添えるくらいがちょうど良いもの。赤ちゃんがボールをじっと見つめているのであれば、「あっ、大きいボールあったねぇ」「触ってみようかな?」「コロコロ転がるねぇ」といった感じで話しかけてみましょう。

何かを言わなければいけないという使命感で接するのではなく、寄り添うというスタンスが大切です。

日ごろの声かけ・話しかけは言葉を育むエッセンスとなる

赤ちゃんは日常的な関わりの中で言葉を獲得し、それを道具として使用してコミュニケーションを重ねます。その礎は保護者が培うものです。日ごろの声かけが言葉を育むエッセンスだということがわかるだけでも、意識的に刺激することが保護者に宿ります。

初めての赤ちゃんほど関わり方がわからないという悩みは抱くもの。でも、子供目線で共感することに意識をおくと、難しいという感じがなくなります。苦手意識を払拭するような関わりの楽しさがわかるようになると、きっと育児がもっと肩の力を抜いて行えます。

言葉を育むのは耳で聞くことがとても大切です。どんな言語でも話し言葉から概念を獲得していくのが一般的です。日常生活で保護者が赤ちゃんへと声かけするのは、その後の成長にとって重要なファクターであることを認識し、丁寧な関わりを心がけるべきではないでしょうか。