産後のママは、慣れない育児と家事で大忙しです。出産によって、体力も奪われているので、体は毎日くたくたです。本当なら、ゆっくり湯船につかって温まることで、体を休めたいところです。

しかし、実際には、産後は湯船に浸からないようにと、産院から指示を受けることがほとんどです。お風呂でゆっくり体を休めたいのに、どうして産後は、お風呂に入ることを控えなくてはならないのか、不満に感じるママも多いでしょう。

出産後しばらくのあいだ、お風呂に入ってはいけないのは、なぜなのでしょうか。また、入浴ができるようになるタイミングはいつ頃で、どのような点に気を付けることが必要なのでしょうか。

産後のママの入浴について詳しくみていきましょう。

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なぜ出産後すぐに入浴してはいけない?

大半のママは、出産した病院を退院するときに、出産後しばらくは、入浴を避けるようにという指示を受けます。体に疲れが溜まっているのに、湯船にゆっくり浸かって、体を休めてはいけないのでしょうか。

産後すぐの入浴を避けた方がいいとされる理由は、どこにあるのでしょうか。また、仮に入浴してはいけないことを知らずに、湯船に浸かってしまった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

産後すぐの入浴は避けましょう

産院から指示される通り、産後しばらくは、入浴するのを避けましょう。

出産を終えたママの体は、すぐに妊娠する前の状態に戻るわけではありません。妊娠中と出産のために変化している体は、徐々に妊娠前の状態を取り戻そうとします。その期間のことを「産褥期」と呼び、個人差はありますが、元の状態に戻るのに、およそ6~8週間程度かかります。

産褥期には、体が妊娠前の状態に戻ろうとする「復古現象」が起きます。そして、この復古現象が終わり、元の体に近づくまでは、入浴を避けた方がいいと言われています。

産後のママの体が、妊娠前の状態に近づくまで、入浴を避けた方がいい理由については、次の章で詳しく説明します。

産後の入浴がダメな理由

およそ10ヵ月間、赤ちゃんが過ごしていたママの子宮は、出産を終えてもすぐに小さくはなりません。復古現象のなかで、徐々に収縮していきます。

子宮が妊娠前の大きさに戻るまでは、子宮口も少し開いたままの状態です。その開いたままの子宮口から子宮の中に細菌が入ってしまう危険性があり、その細菌の影響で、産褥熱(※1)を引き起こしてしまう可能性があります。

普段は、体に害をもたらすことのない細菌でも、出産によって、体力や免疫が低下している産後のママの体には、悪影響を及ぼすことが十分に考えられます。湯船に浸かることで、お湯の中に潜む細菌が子宮口に入りやすくなるので、入浴は避けた方がいいでしょう。

また、出産後は「悪露」と呼ばれる、子宮からの出血があります。悪露は、出産によってはがれた子宮内膜や、胎盤がはがれたところや子宮内にできた傷口からの血液や粘液などが混ざった分泌物です。

湯船に浸かって体を温めると、血行が促進され、出血量が増えてしまうことがあります。悪露が多くなったり、ひどい場合には、脳貧血を起こしてしまう可能性があります。冬などの寒い季節は特に、湯船で体を温めたいところですが、産後のママは、体を温めすぎないようにしてください。

【※1 産褥熱とは】
分娩終了から24時間以降で、産褥10日以内に2日以上にわたって38℃以上の発熱が続く状態を「産褥熱」といいます。産褥熱は、主に分娩時に生じた傷などから細菌感染して発症します。

細菌感染は、入浴だけが原因ではありませんが、湯船に浸かることで、会陰切開などの傷口から細菌感染しやすくなります。体力、免疫ともに低下している産後のママの体力をさらに奪ってしまうので、感染症には充分に注意しましょう。

産後すぐに入浴してしまったら…

入浴してはいけないことを知らずに、入浴をしてしまったとき、どうしたらいいか気になりますよね。

しかし、入浴したという事実をなかったことにすることはできません。できることは、産後しばらくは入浴してはいけないということを知った翌日から、入浴するのを控えることくらいです。

入浴をしてはいけないとされているのは、前述したとおり、悪露の増加による脳貧血などの症状と、子宮口や分娩時にできた傷口などからの細菌感染を予防するためです。入浴したあとにこのような症状が起きなければ、その入浴では、特に問題が起きなかったということでしょう。

1度入浴して何も起きなかったからといって、毎回の入浴で問題が発生しないとは限りません。入浴したときに発生するかもしれない危険を理解しているのであれば、わざわざそのリスクを冒す必要はありませんよね。危険を理解した時点から、入浴は控えるようにしましょう。

産後はいつから入浴できる?湯船に入れる時期は

産後すぐに入浴することの危険性を理解したところで、次に気になるのは、いつから入浴できるようになるのか、という点です。

目安の時期について記載しますが、出産した産院から特別な指示がある場合は、そちらの指示内容に従ってください。

1ヵ月検診が目安です

出産から4週間程度を目安に、入浴が可能と言われていますが、自分では入浴可能かどうかの判断がしづらいところです。そこで、「1ヵ月検診」の結果を目安にすることをおすすめします。

産後1ヵ月が経つと、「1ヵ月検診」があります。1ヵ月検診は、赤ちゃんの状態だけでなく、ママの産後の回復具合も診察の対象となります。

1ヵ月検診の際に、ママの体の回復具合に問題がないと判断された場合には、その日から入浴しても問題ないでしょう。入浴していいかどうかが不安な場合は、担当医師に「お風呂は入っても大丈夫ですか?」と率直に聞いてみましょう。

悪露が続いていたり、会陰切開の傷などの状態が悪い場合には、もう少し入浴を控えるよう指示があるケースもあります。早く入浴したい気持ちは理解できますが、ママ自身の体のためです。専門家の指示に従いましょう。

シャワーなら翌日からOK

湯船に浸かる入浴は、1ヵ月程度控える必要がありますが、シャワーなら出産の翌日から可能です。ただし、出産の状況と産院の方針によっては、1週間程度シャワーの許可もおりないこともあるようです。

特に帝王切開の場合は、傷口の回復具合によって、シャワーを浴びてもいいという許可がおりるまでに数日かかることがあります。

湯船に浸からないにしても、シャワーくらいは浴びて、さっぱりしたいところですが、こちらもママ自身の体を守るためです。シャワーを浴びる時期についても、産院の指示に従いましょう。


ちなみに、私は第1子のときは会陰切開ありの無痛分娩、第2子のときは会陰切開なしの普通分娩で、それぞれ別の産院で出産しましたが、どちらも出産翌日から産院のシャワーの使用許可がおりました。

シャワーを浴びる時間帯は朝や夜ではなく昼間で、他の入院中の人とかぶらない時間を選択する方式でした。入院中は希望する時間にシャワーを浴びられるわけではないので、心に留めておいてください。

また、シャワーを浴びることは可能と言いましたが、まだ産後まもないママの体の状態では、シャワーを浴びるときにも注意が必要な点があります。シャワーを浴びるときの注意点を次の章にまとめましたので、注意点を守り、ママの体を危険にさらさないようにしましょう。

産後1ヵ月程度のシャワーを浴びるときの注意点

産後1ヵ月程度は、入浴を控え、シャワーだけで済ます日が続きます。ママの体は、まだ復古現象の最中です。シャワーを浴びるときには次のことに注意することが必要です。

  • 短時間で手早く済ませる
  • シャワーの温度はぬるめに設定
  • 浴室や脱衣所を事前に温める

それぞれの注意点について、詳しくみていきましょう。

短時間で手早く済ませる

産後まもないママは、出産によって、体力が著しく低下しています。シャワーを浴びるだけでも、体力を消耗してしまいます。少しでも横になって休む時間を多くとるためにも、短時間で手早く浴びることを意識しましょう。

また、湯船に浸からないため、体を温めることができません。特に寒い季節に出産した場合には、シャワーだけでは寒く感じます。裸で過ごす時間は、最小限に抑えることを心がけてください。

シャワーの温度はぬるめに設定

シャワーの温度が熱いと、シャワーを浴びているだけでも、体が温まり過ぎて、のぼせてしまうことがあります。産後のママが体を温めすぎると、体の血行が促進され、悪露の出血量が増え、貧血を招く恐れがあります。

寒い季節の場合は特に、入浴できない分、シャワーで体を温めたいところではありますが、体を温めすぎるのはよくありません。シャワーの温度はぬるめに設定し、長時間浴び続けないように注意してください。

浴室や脱衣所を事前に温める

シャワーで体を温めることができないとなると、体の冷えが心配になりますよね。体を温めすぎるのもよくありませんが、体を冷やすことももちろんよくありません。体の冷えは、浴室や脱衣所を事前に温めておくことで対策をとりましょう。

浴室暖房がある場合には、シャワーを浴びる前に暖房を付けておきましょう。脱衣所には暖房がないことが多いです。持ち運びができるミニストーブなどを利用するか、脱衣所につながる部屋のドアを開けておくことで、リビングなどのいつも過ごしている部屋との温度差を少なくしておくことをおすすめします。

1ヵ月検診で入浴許可がおりた!産後の入浴する(湯船につかる)ときの注意点

1ヵ月検診で入浴許可がおりたら、いよいよ待ちに待った入浴タイムです。久しぶりの入浴を気兼ねなく満喫したいところではありますが、急に無制限な入浴が可能になるわけではありません。

シャワーのときと同様、入浴についても注意しなければいけないことがあります。

  • 一番風呂に入る
  • 長風呂はしない
  • 湯船のお湯もぬるめに設定する
  • 悪露が続くようなら入浴は見合わせる
  • お湯漏れ対策をする

それぞれの注意点について、具体的にみていきましょう。

一番風呂に入る

産後まもないママが入浴を控えるべき理由のひとつに、細菌感染のリスクがあることをお伝えしました。入浴許可がおりたと言っても、いきなりその日から細菌感染のリスクがゼロになるわけではありません。

産後のママには、できるだけ雑菌の少ないキレイなお湯に浸かってほしいので、一番風呂に入ることをおすすめします。誰かが入ったあとのお風呂はどうしても雑菌が増えてしまっています。家族の了解を得て、一番風呂の権利をもらいましょう。

長風呂はしない

せっかくの入浴解禁で、ゆっくり長風呂を楽しみたいところですが、湯船に長く浸かり過ぎることは控えましょう。シャワーを浴びるときの注意点でもお伝えした通り、産後のママの体が温まり過ぎると、血行が促進され、出血量が増えることがあります。

出血量が増えることで、止まりかけていた悪露が増えたり、ひどい場合には脳貧血を引き起こす可能性があります。

入浴許可がおりたとはいえ、まだ産褥期のママは、体が完全に復調しているわけではありません。悪露が完全になくなり、体が妊娠前の状態に戻ったといえるまでは、長風呂は控えてください。

湯船のお湯もぬるめに設定する

シャワーの温度と同様、湯船のお湯もぬるめに設定しましょう。理由は「長風呂しない」理由と同じです。体を温め過ぎることで、血行が促進され、出血量を増やしてしまうことが想定されます。

ぬるいお湯ではお風呂に入った気がしない、という人もいると思いますが、お湯の温度が熱いと、出血多量による脳貧血のリスクが高まります。ママ自身の体のためですので、もうしばらく我慢しましょう。

お湯漏れ対策をする

私も自分自身が出産してから知った現象なのですが、産後のママは「お湯漏れ」をすることがあるので注意が必要です。

お湯漏れは、出産によって、骨盤や膣口が緩んでいる状態の産後特有の現象で、お風呂のお湯が膣内に流れ込み、お風呂から上がってしばらくしてから、膣内からお湯が漏れ出てきます。

無意識のうちに尿がでてしまう「尿漏れ」の感覚に似ているので、お湯漏れという現象を知らないと、尿漏れだと勘違いしがちな現象です。

日中も尿漏れがある場合には、尿漏れの可能性も否定できませんが、お風呂上がりだけであれば、お湯漏れとみて間違いないでしょう。個人差がありますが、人によってかなりの量のお湯が出ることがあるので、下着やパジャマを着替える必要が生じてしまいます。

お湯漏れが頻繁にある人は、膣に流れ込んだお湯をお風呂場で出し切ることを意識してみましょう。湯船から出た後に、背筋を伸ばした状態で、腹筋に力を入れてスクワットを何度かすると、膣からお湯が出てきやすいようですのでお試しください。

お湯漏れは、骨盤や膣口が閉じてくることで解消されていきます。骨盤ベルトや骨盤トレーニングなどで、徐々に骨盤を矯正し、お湯漏れを解消していきましょう。

悪露が続くようなら入浴は見合わせる

入浴許可がおりていたとしても、入浴してみた結果、悪露が悪化したり、悪露が治まらない場合には、いったん入浴するのを見合わせましょう。

ここまでの注意事項に反していなければ、悪露が悪化した原因が入浴にあるとは考えにくいですが、悪露が治まらない、あるいは悪化しているとすれば、子宮の収縮がまだ完了していないか、ママの体になにか異変が起きているかもしれません。

細菌感染などのリスクが考えられる入浴行為も、様子を見た方がいいでしょう。異常を感じた場合には、病院を受診することをおすすめします。

悪露は通常、1ヵ月程度で終わりますが、なかには2ヵ月以上続く人もいます。産後、むりに体を動かしていると悪露が長引く傾向にあります。産後のママは体力の回復が最優先事項です。体をゆっくりと休めることを心がけましょう。

まとめ

産後のママの疲れた体を、温かいお風呂で癒したいところではありますが、細菌感染や出血多量などのリスクがある入浴は控え、しばらくはシャワーでリフレッシュしましょう。

産後のママの体を回復させるためには、横になって休むことが一番です。とにかく横になる時間を長くとることで、ママの体の回復を早める近道です。体が回復してくれば、楽しみにしていた入浴もすぐそこです。

寒い季節に出産したママは、シャワーだけで過ごすおよそ1ヵ月間が、過酷なものに感じるかもしれません。体力も免疫力も低下している産後のママは、小さな要因からでも、体調を崩しがちです。

シャワーを浴びている間に、体を冷やし過ぎないよう、室温の設定や、着替えの準備を万端にしてから、手早くシャワーを浴びることを意識しましょう。

ちなみに、1ヵ月検診の結果、赤ちゃんにも特にも問題がなかった場合、赤ちゃんも入浴が可能になります。赤ちゃんと一緒にお風呂に入る日を待ち望んでいた人は、もちろん一緒に入って、赤ちゃんとの初入浴を楽しんでください。

ただ、私個人の見解としては、ママの入浴解禁日は、できることならママ1人で入浴することをおすすめします。赤ちゃんとの初めての入浴は、緊張と失敗の連続です。とても慌ただしい時間になるので、お風呂上がりなのに、なぜかとても疲れを感じます。

入浴解禁日くらいは、長風呂はできないとしても、ママ1人の入浴タイムを満喫して、リフレッシュしてみてくださいね。