出産によって骨盤が緩んだ状態にある産後のママは、立ち仕事や足腰に負担のかかる動作を控え、できるだけ横になって休むことを勧められます。
立ち仕事を控えることで、必然的に座って過ごす時間も多くなりますし、赤ちゃんに授乳をするときには座って姿勢をとることがほとんどです。
座って過ごす時間の多い産後のママが、緩んだ骨盤を歪ませないためには、どのような座り方をするのがよいのでしょうか。産後のママが座るときに気を付けた方がいいことや、おすすめの座り方についてお伝えしていきます。
産後のママが座るときに気を付けること
ママの骨盤は、妊娠後期から徐々に赤ちゃんが出てきやすいように、緩んでいきます。少しずつ緩めてきた骨盤は出産によって、赤ちゃんがお腹から出てくるために押し広げられます。
赤ちゃんが出てきた後の骨盤は、開いた状態で固定されるわけではありませんが、自然に妊娠前のように締まった状態に戻るわけでもありません。
出産を終えたばかりのママの骨盤は緩んだままの不安定な状態にあります。そのまま放っておくと、骨盤はどんどん歪み、元の状態を取り戻すことは難しくなりますが、意識して取り組めば、きれいに締まった骨盤を手に入れるチャンスでもあります。
産後のママは座って過ごす時間が長くなります。どのようなことを意識して座ると、骨盤の歪みを防ぐことができるのでしょうか。
左右のズレを作らない!体の重心が、左右均等になる座り方を
左右どちらかに重心がかかる座り方をすると、骨盤の歪みにつながるので、避けた方がいいでしょう。体の重心が、左右均等になることを意識しましょう。
重心に左右のズレが生じる座り方には次のようなものがあります。
- 横座り(お姉さん座り)
- 足を組んで座る
- 机に片肘をつく
このような座り方を好む人の多くは、座りやすい方向が左右どちらかに決まっていて、いつも同じ方向に座ったり足を組んだりしています。それにより、体の左右のバランスが崩れた状態になり、骨盤にも左右のズレが生じます。
体の重心が常に、体の中心にくることを意識しましょう。
骨盤を締めることを意識する
産後のママの骨盤は、赤ちゃんが出てくるときに押し広げられています。骨盤が開いたままになると、その開いた骨盤の間に、子宮や内臓が入り込む「内臓下垂」を引き起こすことがあります。
内臓下垂の具体的な症状については後述しますが、骨盤が開いたままになり、内臓の位置が下に下がってしまうことで、下腹部がぽっこりと出て、お腹の調子が悪くなったり、頻尿や尿漏れなどの症状が現れることがあります。
座るときに限らずですが、骨盤を締めた状態を維持することを意識しましょう。
猫背にならない
母乳育児をしていると、授乳中は特に猫背になりがちです。おっぱいを咥えている赤ちゃんがきちんと母乳を飲めているか、赤ちゃんの表情を確認しようと思うと、どうしても前かがみの姿勢になり、背中がまるまってしまうものです。
ただし、猫背の姿勢は、体の血流が悪くなり、代謝が落ちるだけでなく、肩こりや腰痛の原因となることがあります。
私は元々、姿勢が悪く、猫背を指摘されることが多いタイプでした。出産後、急に姿勢がよくなるわけもなく、姿勢をよくしようという意識も薄かったため、授乳期間中はさらに猫背が進行して、肩こりからくる片頭痛に悩まされる日々が続きました。理由が明確なのに、改善しようとしなかったことを今でも悔やみます。
姿勢は意識したからといって、急によくできるものではありません。気が付いたら背筋を伸ばしたり、伸びをしたりすることを実践してみましょう。少しずつ姿勢をよくする意識が芽生え、慣れてくることで、それほど意識しなくても姿勢を保つことができるようになっていきます。
産後のママにおすすめの座り方【床編】
産後のママは、前述した内容に気をつけながら、どのような座り方をするのが骨盤の歪みを防ぎ、体を健康な状態に保ってくれるでしょうか。まずは、床に座るときのケースからみていきましょう。
あぐら
産後のママが床に座るときにおすすめの姿勢は「あぐら」です。
あぐらは、膝が体の外側を向いていて、足を開いた状態になるので、骨盤をさらに広げてしまうと思われがちです。あぐらで座ることを意識的に避けているママも多いかもしれません。
しかし実際には、あぐらは足は外側に向いているものの、骨盤は内側に捻じれます。捻じれる方向が体の内側なので、今以上に骨盤を広げることはありません。むしろ、骨盤を締めてくれる効果を期待できる座り方なのです。
そんな骨盤ケアに有効なあぐらですが、注意事項もあります。あぐらをかくと、膝が股関節より高い位置にくるので、骨盤が後傾になります。骨盤が後ろに倒れることで、体の重心が後ろになってしまうので、バランスをとるために、頭が前方に出てきます。この姿勢は猫背へとつながり、肩こりや腰痛を引き起こしてしまいます。
骨盤の歪みが防止できても猫背が進行してしまっては、産後におすすめの座り方とはいえません。あぐらをかくときは、クッションや座布団をおしりの下に挟むことで、骨盤が後傾になるのを防ぎ、骨盤と背骨の両方をケアすることを意識しましょう。
正座
「正座」も産後のママが床に座るときには、おすすめの座り方です。
体の左右の重心も均等に保つことができますし、骨盤の広がりを助長することもありません。骨盤ケアの観点からすると、正座が一番おすすめの座り方です。ただ、その「正座」よりも先に「あぐら」を紹介したのには、わけがあります。
それは、みなさんもご存知のとおり、正座は足がしびれてしまい、長時間継続することが難しいからです。産後ママは座って過ごす時間が長くなります。長時間継続できない姿勢をおすすめしても、現実味がありませんよね。
むりに正座をし続け、足がしびれてくると、だんだん足からおしりが落ち、ペタンコ座りと呼ばれる座り方になります。ペタンコ座りは、骨盤が外側に捻じれるので、骨盤の開きや歪みを誘発します。
ペタンコ座りについての詳細は後述しますが、疲れたときに、骨盤によくない座り方になってしまうくらいであれば、始めからやらない方がいいでしょう。
正座が長時間継続できる人はぜひ、正座で過ごしてください。また、あぐらの体勢に飽きたときの気分転換などに、取り入れてみるのは効果的でしょう。
産後のママがやってはいけない座り方【床編】
あぐらや正座とは逆に、産後のママが避けた方がいい座り方にはどのようなものがあるでしょうか。床にすわるときに避けた方がいい座り方から紹介します。
横座り(お姉さん座り)
「横座り」は、女性がしていることが多いことから、「お姉さん座り」とも呼ばれます。この座り方は、両足を左右のどちらか一方に流した状態で座るので、股関節が捻じれてしまいます。股関節が捻じれることで、骨盤の歪みにもつながるので注意が必要です。
いつも同じ方向で横座りするからいけないんだ、という安易な発想から、たまに足の向きを変えて座ればいいと思い込んでいる人もいます。私もその一人でした。
向きを変えながら横座りを継続すると、片方に捻じれた股関節をまた違う方向に捻じることになるので、股関節の捻じれはどんどん複雑になっていきます。複雑になればなるほど、元の状態に戻すことは困難です。
そのことに気づいた今からでも遅くはありません。骨盤の歪みにつながる横座りは控えるようにしましょう。
ぺたんこ座り
「ぺたんこ座り」は、正座が崩れて足と足の間にお尻が落ちた状態の座り方です。「ぺちゃんこ座り」と呼ばれることもあります。
ぺたんこ座りは、左右の重心が均等ですし、膝がくっついているので、骨盤を締めた座り方のように感じ、産後のママにはおすすめの座り方のようにも思えますが、そうではありません。
ぺたんこ座りをすると、股関節が内側に捻じれるので、骨盤は外側に引っ張られます。その結果、骨盤は開いた状態になってしまいます。股関節は外側に向き、骨盤が内側を向くことになる「あぐら」と、正反対の座り方です。
骨盤が開いたままになってしまうと、その骨盤の間に子宮や内臓が入り込む内臓下垂の要因ともなります。出産によって、ただでさえ開きやすくなっている骨盤をさらに広げる座り方は避けた方がいいでしょう。
産後のママにおすすめの座り方【椅子編】
ここまで、床に座るときのケースを紹介してきましたが、椅子に座るときにはどんな座り方を意識したらいいでしょうか。椅子に座るときのおすすめの方法から紹介します。
お尻を深く腰掛ける
椅子に座るときはおしりを深く腰掛けることを意識しましょう。おしりが椅子の背もたれに付くくらい深く座ることで、骨盤が後ろに倒れることを防止します。骨盤がまっすぐ立っていると、自然に背筋も伸び、猫背になることもなく、いい姿勢をキープすることができます。
ただし、普段から浅く座ることに慣れてしまっている人は、深く座っているつもりでも、だんだんおしりが前にズレてきて、結局はいつもの猫背姿勢を誘引してしまいがちです。何分かに一度でかまいませんので、気が付いたらおしりを深く座り直すようにしましょう。
背もたれに背中をつける
おしりを深く腰掛けているという条件付きですが、背もたれに背中をつけることで、背筋を伸ばした姿勢をキープすることができます。頭が前に出る前傾姿勢をとりやすいことを自覚している人は、特に背もたれにもたれることで疲れることなく、いい姿勢を保つことにつながります。
おしりを深く腰掛けているという条件をつけたのは、浅く腰掛けた状態で背もたれに背中をつけても、まったく骨盤や背骨のケアにつながらないからです。
椅子に浅く座った状態で、背もたれにもたれると、骨盤は後傾になります。骨盤が後傾になると、体のバランスをとるために頭が前方に出ることは、先ほども紹介したとおりです。猫背になり、肩こりや腰痛を引き起こすので、十分に注意しましょう。
産後のママがやってはいけない座り方【椅子編】
おすすめの座り方を学んだところで、次は注意が必要な座り方について紹介します。椅子に座るときに、避けた方がいい座り方にはどのようなものがあるのでしょうか。
おすすめの座り方と内容が重複する部分もありますが、重点事項の復習だと思ってください。
足を組む
足を組んで座ることは、そのまま骨盤の歪みに直結します。たぶん、普段から足を組んで座ることの多い人は、歪みを引き起こす座り方であることをなんとなく実感しているのではないでしょうか。足を組んで座ると、体の左右の重心にズレが生じます。
いつも同じ方向の足を上にして足を組むから、歪みが生じるんだと、安易に考えないでください。「横座り」の章でも説明しましたが、左右の足を組みかえても、骨盤の歪みは解消されません。それどころか、歪みや捻じれがより複雑化し、かえって元の状態に戻りづらくなります。
歪みを自覚していて、左右の足を組みかえる努力をする意思があるのであれば、そこは組みかえるのではなく、足を組まない努力をしましょう。
私は、第2子出産後に産後の骨盤矯正に整骨院に通院していたのですが、真っ先に言われたのが「まずは足を組んで座るのを止めましょう」でした。
足を組んで座ると、骨盤が歪むだけでなく、血行が悪くなったり、代謝が落ちることにもつながります。体にいいことがないので、避けるに越したことはありません。
浅く座る
おすすめの座り方で「おしりを深く腰掛ける」方法を紹介したので、お分かりかと思いますが、産後のママが避けた方がいいのは「椅子に浅く座ること」です。
おしりを浅く腰掛けると、必然的に骨盤は後ろに倒れます。骨盤が後ろに倒れると、体のバランスをとるために、頭が前にでます。おしりと頭が前にでているので、そのあいだにある背中は丸まり、猫背の姿勢が完成してしまいます。
猫背の姿勢は、頭を首や肩の力で支えなければいけないので、首こりや肩こりを引き起こすほか、丸まった背中は腰への負担が大きく、腰痛につながります。
産後のママは、まだまだ体力を回復している途中なので、疲れやすいです。背もたれに頼ってかまいませんので、おしりを深く腰掛け、背筋が伸びた状態になることを意識しましょう。
産後の骨盤の開きや歪みが招く弊害
産後のママは、骨盤が歪んだり、開いたままになることを避ける座り方をした方がいいと紹介してきましたが、骨盤の開きや歪みは、具体的には体にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。
骨盤の開きや歪みが招く弊害には次のようなものが挙げられます。
- 子宮や内臓が下がる
- 新陳代謝の低下
- O脚
それぞれの詳細な症状についてみていきましょう。
子宮や内臓が下がる
骨盤が開いたままになると、開いた骨盤の間に子宮や内臓が下がってきて入り込む「内臓下垂」を引き起こすことがあります。内臓下垂は、内臓が本来あるべき場所より、下に下がった状態のことをいいます。
内臓下垂になると、下腹部がぽっこりするほか、内臓により下腹部が圧迫されるため、頻尿や尿漏れなどの症状を引き起こすことがあります。
骨盤のあいだに入り込んだ内臓によって、臓器のなかでも下側にある腸は、最も圧迫されやすい箇所です。腸が圧迫されて、正常に稼働しなくなると、便秘や下痢などの症状を招いたり、血行が悪くなり、体が冷えやすくなったりします。
骨盤の広がりを抑え、内臓が体の正しい位置で、きちんと働くことができる体内環境を整えることを意識しましょう。
新陳代謝の低下
骨盤が歪むと、歪みは骨盤だけにとどまらず、全身の歪みにつながっていきます。体全体が歪むことで、血行やリンパの流れが悪くなり、体の冷えやむくみを引き起こします。体が冷えると、脂肪の燃焼されなくなり、新陳代謝が低下してしまいます。
一度、新陳代謝が低下すると、排出されなくなった老廃物や水分が体内に蓄積し、ますます血行が悪くなるという悪循環に陥り、太りやすい体質になってしまうので、注意が必要です。
前述した内臓が正しい位置より下に下がる内臓下垂も同時に引き起こしていると、代謝は低下する一方です。骨盤の開きも歪みも新陳代謝の低下につながるということを忘れないようにしましょう。
O脚になる
まっすぐに伸びたキレイな足は、女性の憧れですが、日本人の女性は「O脚」で悩んでいる人の割合が多いと言われています。
O脚は、足をまっすぐ付けて立っているのに、両足の膝の間に隙間ができる足の形のことをいいます。その足の形がアルファベットの「O」に似ていることからO脚と呼ばれています。
O脚には先天性のものと後天性のものがあり、後天性のものは、骨盤の歪みから発生することがほとんどです。O脚になると、スタイルが悪く見えてしまうという見た目の問題だけでなく、足の一部分だけに余計な力が加わり、筋肉の一部だけが硬く緊張した状態になってしまいます。
O脚が進行することで、歩き方にまで影響を及ぼします。後天性のO脚は歩き方や座り方など、日常の生活習慣を見直すことで、ある程度の改善が見込めます。意識するところは、骨盤の開きや歪みの対策と同じですので、同時に改善していきましょう。
まとめ
産後のママの骨盤は、出産によってゆるゆるにゆるんだ状態です。いつも以上に骨盤が開きやすく、また歪みやすい時期ではありますが、反対にゆるんでいるので、正しい位置に矯正しやすい時期であるとも言えます。
私は、第1子を出産したあと、それほど骨盤を意識しなくても影響を感じなかったこともあり、第2子を出産したときも、骨盤ケアをほとんど行いませんでした。その結果、骨盤は開き、下腹部はぽっこり、内臓下垂を引き起こし、頻尿、尿漏れ、便秘、体温低下など、様々な症状を経験しました。
小さい子どもを抱えていると、体調が悪くても休みたいときに休めません。体調不良を引き起こす要因が分かっているのであれば、未然に防ぎたいものです。
骨盤ケアを意識した座り方をすることで、その後の体調不良に陥る可能性も軽減されます。産後は体力も低下していて、体調を崩しやすいです。少しでもその要因を取り除いて、健康的なママライフを満喫してください。