出産後のママは安静にしていた方がいいという話をよく耳にします。実際にはどのくらいの安静期間が必要で、いつごろから動けるようになるのでしょうか。
産褥期のママの体の状態と退院してからの生活について、私の実体験を交えながらお伝えします。
産後のママはいつから動ける?
これまでの日常生活で発生する家事に、出産してからは育児が加わります。
ただでさえ、出産で疲れているところに、新しい仕事が加わるので、出産直後は周りのサポートも受けながらの生活をおすすめしますが、実際にはいつごろから体を動かすことができるのでしょうか。
いつからでも動けます
出産後、いつまで安静にしていなければいけないという制約はありません。従って、動こうと思えば、退院した日から動くことができます。
実際に私は、実母に泊まり込みで手伝いにきてもらっていましたし、旦那も家事に協力的な人ですが、退院したその日から台所に立っていました。
私の場合、じっとしていると、実母が帰ってからの日常生活に戻れるかどうかという不安が募ってしまい、どこまで自分でできるかを事前に試しておきたいという思いがありました。
少し体を動かしている方が、自分である程度のことができるという安心感を得ることができたので、自分の体と相談しながら、無理のない範囲ではありましたが、家事を行うようにしていました。
ただ、出産を終えたばかりのママの体は思った以上にダメージを受けています。帝王切開や会陰切開のキズが痛む場合や、後陣痛がひどい人もいます。動けるからと言って、無理をすることで、体力の回復が遅れることもあるので、絶対に無理をしないでください。
自分の心の状態と相談しストレスが溜まらない方法をとりましょう。
産後の安静期間はやっぱり必要?
産後、いつからでも動くことは可能ですが、安静にする時間がとれるなら、なるべく安静に過ごすことをおすすめします。
家事は周りの人に頼ることも可能ですが、特に母乳育児を行う場合には、赤ちゃんのお世話に取られる時間が多くなります。生後しばらくは、昼夜問わず、赤ちゃんのお世話が発生します。
赤ちゃんのお世話の合間で休める時間がある場合には、横になる時間を増やし、頼れる人がいる場合には、家事もお任せしましょう。
産後の体調によっては医師から安静を指示されることもあります。その場合は、家事や育児も周りの人に頼りながら、医師の指示に従って安静に過ごしましょう。産後のママは体力の回復に努めることが一番の優先事項です。
出産を終えた退院後のママの生活
出産を終えたばかりのママの体の状態はどうなっているのでしょうか。退院後のママの生活について、どのように過ごしたらいいか、おすすめの過ごし方をご紹介します。
産褥期の体の状態
出産後、ママの体の状態が元に戻るまでの期間を「産褥期」といいます。
出産の際に、ママは赤ちゃんを押し出すために、全身の筋肉や臓器を使っています。陣痛から赤ちゃんがお腹から出てくるまで、長時間の戦いが続くので、出産を終えたままの体は疲労困憊です。
また、赤ちゃんの過ごしていた子宮が元のサイズに戻ろうとすることで、子宮の収縮が起こり、その痛みによる後陣痛に苦しむことがあります。生理痛に似た痛みで、激痛というよりは鈍痛が数日続くことがあります。
それ以外にも帝王切開や会陰切開による切開箇所のキズの痛みで、立ったり座ったりの動作がつらいこともあります。
出産後の痛みの箇所や度合いは、出産方法や過程、出産にかかった時間、ママの体質によって異なるので、一概にはいえませんが、まったく痛みのない産後を迎えることはほとんどありません。痛みを感じたときには無理をせず、ゆっくり休養することを心がけましょう。
こういった痛みと向き合うこととなる産褥期は、個人差がありますが、だいたい6~8週間程度かかります。
産後1ヵ月のときに1ヵ月検診があります。この検診は、赤ちゃんの状態を確認するだけでなく、ママの産後の回復状況も確認してもらえます。医師から回復が遅いと指摘があった場合には、家事負担などを減らし、横になって休む時間を増やせるよう、周りの人と調整しましょう。
まずは体力回復に努める
赤ちゃんが産まれると、育児には休みがありません。出産直後から頑張り過ぎると、産褥期が長引いて、ママの体力や体調が元に戻るのが遅れたり、もしくは体調を悪化することにもつながりかねません。
できれば産後1ヵ月程度は、家事や育児は周りの手助けを借りて、ママの体力回復に努めることを意識してください。
疲れた体で取り組む育児は、ママにとって負担であることはもちろんですが、赤ちゃんにもそのつらい気持ちが伝わってしまいます。頼れる人がいる場合には思い切り頼り、割り切ってゆっくり休むことで、体を元の状態に戻した万全の状態をとることが最優先です。それからでもママとしての新しい生活を始めるのは遅くありません。
完全母乳で育児をスタートする場合には、おっぱいあげる時間だけはママ自身で確保する必要があります。新生児は、まだおっぱいを吸う力が弱く、1回の授乳に数十分かかるうえに、2~3時間に1回の授乳を要求されます。
この授乳への対応をするだけでも1日の大半の時間を費やしているような気分になります。授乳は昼夜問わず発生するので、授乳が終わったタイミングで、赤ちゃんと一緒に横になることで、少しでも体を休めましょう。
産後の体力回復を早める過ごし方
産後の体力を回復するためには、どのような過ごし方をすると効果的でしょうか。体を休めながら、少しでも早く出産前の体力を取り戻す方法についてお伝えします。
むりをしない
まずは、むりをしないことが基本です。意外と動けると感じていても、動いたあとからどっと疲れを感じたり、動きすぎで骨盤のゆがみを誘発したりすることもあります。動き過ぎたことによって体調を崩しては元も子もありません。
なかには、私のようにじっとしていることで、ストレスを感じてしまうタイプの人もいます。このタイプの人は、常に自分の体の状態と向き合いながら、むりのない範囲で体を動かしましょう。
自分でできると思ったことの7割程度からスタートすることをおすすめします。100%の力を発揮するのは、産褥期を終えてからで問題ありません。
家事は人頼りで、ママは赤ちゃんの育児を優先
両親や義理の両親、旦那さんや兄弟など、身内に頼れる人がいる場合には、どんどん頼りましょう。
少し心と体に余裕がある場合は、赤ちゃんの授乳やおむつ替えなどの育児に時間を割くことをおすすめします。掃除や洗濯、料理といった家事は、体の動作が大きいので、ママの体に与える負担が大きくなります。
また、どちらかというと、家事の方が代わりにできる人がいます。授乳はママが行う必要がありますし、ミルクを与える場合も、赤ちゃんがどの程度飲んでいるかを把握することで、赤ちゃんの体調を確認することができます。
おむつ替えでうんちの状態をチェックすることも、赤ちゃんの体調管理につながります。家事をする余裕があると感じている場合でも、できる限りでかまいませんが、赤ちゃんの体調を確認することができるお世話を優先してみましょう。ママの体の動きは少なくてすむので、体を休めながらできます。
バランスのよい食生活
産後太りが気になるところではありますが、体力を回復するためには、食べることも重要です。
特に母乳育児をする場合には、赤ちゃんの分の栄養も摂取する必要があるので、疲れで食欲がなくなることもありますが、自分の体力回復と、赤ちゃんの成長のためと考え、意識的に食べるように注意しましょう。
新生児を連れて外出することはなるべく避けたいので、買い物は周りの人に頼むか、赤ちゃんを預けられるときに、まとめ買いするようにしましょう。台所に立つ体力がない場合には、宅配サービスや冷凍食品を有効活用してください。できる限り、自分の体力は温存しましょう。
ただし、栄養の偏りには充分に注意が必要です。母乳育児中のママには鉄分、カルシウム、タンパク質が重要不可欠です。栄養を意識する余裕はないかもしれませんが、赤ちゃんのご飯も兼ねていることを念頭においた食事をとりましょう。
横になる時間を増やす
産後は、骨盤が開いた状態になっているので、長時間歩き回ったり、起き上がった姿勢ばかりとったりしていると、広がった骨盤のなかに内蔵が落ち込んでしまいます。
内臓が骨盤のあいだにはまってしまうと、骨盤が元に戻らなくなったり、歪みを生じたりします。尿漏れしやすくなったり、下半身太りの原因となる可能性があるので、休む時間があるときには、ふとんで横になることを心がけましょう。
骨盤矯正をする
開いてしまった骨盤を、早くから矯正しておくことも産後すぐに取り組める対策のひとつです。骨盤ベルトなどを装着して、子宮が小さくなっても内蔵が下に降りてこないように、骨盤をしっかり支えましょう。
骨盤矯正をすることで、体力の回復が早まるわけではありませんが、骨盤のゆがみから体を守ることで、産後の体調不良を防止することにつながります。
私は第2子のとき、骨盤ベルトすることで動きづらく感じたため、産後ほとんどケアをしていませんでした。生後3ヵ月ころになって、整骨院の産後骨盤矯正コースに通いましたが、すでに子宮が下に落ちる子宮脱が進行してしまっていました。
骨盤は早くからケアするに越したことはありません。骨盤ベルトが苦手な人は、骨盤矯正のショーツもあります。自分に合った形の骨盤ケアをみつけましょう。
座る・寝るとき、産後にしない方がいい姿勢
休む時間がある場合には、横になった方がいいと前述しましたが、それ以外にも産後のママが控えた方がいい姿勢があります。
授乳や、赤ちゃんのお世話の際にとる姿勢で、産後の回復が思わしくないことがあります。座っているときや寝ているときに注意する姿勢にはどのようなものがあるのでしょうか。
床に座るときの姿勢は、お姉さん座り・ぺたんこ座りに注意
床に座るときに注意が必要なのは、お姉さん座りとの呼ばれる横座りの姿勢と、床にお尻がついているぺたんこ座りの姿勢です。
横座りは、股関節の捻りが生じるため、その捻りが骨盤の歪みにつながります。いつも同じ方向で横座りしているからよくないと思い込み、バランスをとるために、たまに向きを変えて横座りをするといった対策をとる人がいます。
私もまさしくそのタイプでした。しかし、逆方向での横座りを混ぜることでより複雑な捻りが生まれ、骨盤の歪みも戻りにくくなります。歪むことを理解しているのであれば、この座り方は控えましょう。
ぺたんこ座りは、左右に歪むことはありませんが、股関節が内側に捻ります、結果、骨盤が外側に引っ張られるので、骨盤の開きの原因になります。
この姿勢で座っている人は骨盤ベルトなどの対策をとっても、なかなか骨盤が元に戻りません。クッションや座布団をおしりの下に挟むことで、おしりの位置を高くして、股関節の捻りを最小限に抑えましょう。
椅子に座るときの姿勢は深く腰掛ける
椅子に座るときには、深く腰掛けましょう。
浅く座り続けていると、骨盤が後ろに倒れます。バランスをとるために頭が前に出てくることで、猫背が進行します。猫背は、見た目が悪いだけでなく、内臓の機能低下を招きます。
椅子に深く腰掛けることで、背筋が伸び、腰痛や肩こりを軽減することができます。赤ちゃんの抱っこや授乳で、ただでさえ、腰痛や肩こりに悩まされる時期です。少しでも腰や肩の負担を軽減してください。
また、骨盤の状態が不安定な産褥期は、骨盤が歪んだ状態で長い時間座ったままにならないよう、特に注意しましょう。
寝るときの姿勢は横向きに注意
横になる時間をとることを推奨しましたが、産後は横になるときの姿勢にも注意が必要です。
横になるときに避けた方がいいのは横向きの姿勢です。横向きの姿勢で寝ることが骨盤の歪みにつながってしまいます。赤ちゃんに添い寝するなどの理由で、横向きで寝る場合には、足の間にクッションをはさむなどして、歪みを最小限に抑えることを意識するといいでしょう。
うつ伏せや仰向けは、左右の歪みが生じにくいので問題ありませんが、うつ伏せの場合、産後はまだ子宮が大きく、下腹部に痛みを感じたり、おっぱいが張っていたりするので、つらく感じることがあります。苦しい場合には、仰向けの姿勢になりましょう。
ただ、産褥期のママは、体を休めることが最優先事項です。寝づらいと感じた場合には、むりにその姿勢をとる必要はありません。横向きでもうつ伏せでも仰向けでも自分が寝やすい姿勢をみつけて、熟睡できる環境を作ることを一番に考えましょう。
まとめ
産後のママは、体力回復が最優先事項です。頼れるところは人に頼って、できる限り、体を休めることに専念しましょう。
焦ることはありません。ゆっくり休むことで、体の回復を早め、これからずっと続いていく育児との長いお付き合いを始めていきましょう。