赤ちゃんが自分自身の力でうつ伏せの体勢をできるようになるのは、仰向けの状態から寝返りをできるようになるタイミングですが、それより前にうつ伏せの練習をさせる必要があるかどうかは気になるところです。
うつ伏せは練習しないとできるようにならない?練習するならいつ頃から?どんな練習をさせたらいいの?そんなうつ伏せに関する疑問を解決していきましょう。
赤ちゃんにうつ伏せ(腹ばい)の練習は必要?
仰向けの体勢から寝返りをできるようになって初めて、赤ちゃん自身の力でうつ伏せの姿勢をとることができるようになりますが、うつ伏せの体勢は練習しないとできるようにならないのでしょうか。
うつ伏せの練習の必要性とその効果について考えていきます。
うつ伏せは練習が必要です
おなかを床についた姿勢なので「腹ばい」と呼ばれることもある「うつ伏せ」。
2人の子どもを育ててきた経験と、子育て支援センターなどで、たくさんの赤ちゃんとそのお母さんと接してきた経験から、赤ちゃんの成長過程のなかで、私が唯一、事前練習をした方がいいと感じたのがこの「うつ伏せ」の姿勢でした。
赤ちゃんは、成長のペースに個人差はありますが、自分のペースで成長しようとがんばっています。私は、基本的にはその赤ちゃんの自主性を尊重したいという考えを持っているので、赤ちゃんの成長を早めることを目的とした練習をさせることには、あまり賛同ではありません。
赤ちゃん自身が興味を持ち、やりたいという意欲を見せたタイミングで、できなくて悩んでいるときにそっとサポートをしてあげることが重要だと思っています。
子育てに関する考え方は人それぞれですし、練習させたことでプラスの結果を生んでいる赤ちゃんもいると思うので、この考え方を押し付けるつもりはありません。
それなのになぜ、この場で私の子育て方針についてお話したかというと、何事も赤ちゃんのペースに任せたいと思い、実際にそうやって子育てしてきた私でさえ、うつ伏せだけは練習をさせた方がいいと感じたくらい、うつ伏せの練習が重要であるということを伝えたかったからです。
なぜ練習が必要なの?
では、なぜうつ伏せの練習が必要なのか。その理由は、うつ伏せの姿勢は赤ちゃんが自分の意思でやりたいと思ってできる姿勢ではないことにあります。
赤ちゃんの成長過程で取り上げられることの多い「首すわり」や「腰すわり」は、動作ではないので、目に見える効果を得にくく、練習してできるようになるというより、日常生活のなかで少しずつ鍛えられていくものです。
もちろん「首すわり」や「腰すわり」に効果的と言われる練習もありますが、できるようになった、という実感が薄いため、練習の成果を感じづらく、練習させたからできるようになったと言いづらいところがあります。
動作として目に見える成長としてあげられる「寝返り」「ずりばい」「ハイハイ」などは、赤ちゃん自身の動作で、少しずつできるようになっていく様子から、完璧にマスターしたことまで判別しやすく、首すわりや腰すわりより、練習の成果はしっかり感じることができます。
しかし、これらの動作は、赤ちゃん自身がその動きに興味をもち、自分で足をひねってみたり、手を少し前に伸ばしてみたり、足を一歩踏み出してみたりしたいという赤ちゃんの好奇心が働くことが重要です。
早く習得してほしいという一心で、赤ちゃんに練習を無理強いすると、かえってその動作に苦手意識をもって、やらなくなってしまう赤ちゃんもいます。こういった動作は、練習させることより、興味をもってくれるように赤ちゃんの気を引くことを意識した方が効果的です。
このどちらにも属していないのが今回の主役「うつ伏せ(腹ばい)」です。
赤ちゃんは生後しばらくは仰向けの姿勢のまま過ごします。
手や足を自分で動かすころができることを知り、体を動かすことを試しているうちに、寝返りができるようになります。そして、うつ伏せの姿勢になるのですが、これはうつ伏せの姿勢になることを目的に寝返りをしたわけではありません。
寝返りができた結果、うつ伏せになってしまっただけなのです。
「寝返り」や「寝返りがえり」をマスターして、自分の意思で自由にうつ伏せになったり、仰向けに戻ったりできるようになるのは、まだまだ先のことです。
赤ちゃんは、誰かの手でうつ伏せにしてあげないと、うつ伏せの姿勢をとることはできません。すなわち、うつ伏せの姿勢に慣れることはありません。また、興味をもった時点から自分の意思で練習できるものでもないので、親の手で練習をさせてあげることが必要なのです。
練習していないとどうなる?
寝返りができるようになって、自分でうつ伏せの姿勢をできるようになってから、少しずつ慣らしていけばいいのではないか、と考える人もいるでしょう。
もちろん、その方法がないわけではありません。私の第1子である娘はそのパターンでした。「うつ伏せの練習ってさせた方がいいのかな?」と漠然と考えていたころ、寝返りをできるようになってしまったからです。まだ生後2ヵ月になる前で、首もすわっていませんでした。
うつ伏せという姿勢を知らない赤ちゃんは、うつ伏せになったら、顔を持ち上げるか横に向けるかしないと呼吸ができないということを理解していません。そのため、寝返りをしても顔を動かそうとしないので、そのまま顔が床に埋もれた状態で、窒息してしまう可能性が非常に高くなります。
もちろんうつ伏せの姿勢に慣れておらず、うつ伏せのまま放置することができません。寝返りをするたびに、すぐに仰向けに戻してあげる必要があります。
このような、赤ちゃんがいつ窒息してしまうか分からないという緊迫した日々を送った経験者として、寝返りができるようになる前に、少しでもうつ伏せの練習をして、せめて呼吸する方法だけでも赤ちゃんに習得しておいてほしいと感じたのです。
第1子のときの反省を生かし、第2子にはうつ伏せ練習を早くからさせようと意気込んでいましたが、第2子は、典型的なママっ子で、うつ伏せどころか、布団に置かれることすら拒否する赤ちゃんだったので、うつ伏せはまったく練習させることができませんでした。
私の顔が見えなくなる不安からか、その後もうつ伏せの姿勢を極端に嫌い、うつ伏せがうまくできないまま、おすわりを先に習得して、おすわりの姿勢で遊ぶようになりました。
こういったケースもあるので、練習させようと思ってもうまくいかないこともあると心に留めておいてください。
うつ伏せ(腹ばい)練習方法!いつから練習する?やり方や練習時間は?
うつ伏せの練習は具体的にどうやって行ったらいいのでしょうか。うつ伏せ練習を始める時期や練習方法、練習時間などについて具体的にご紹介していきます。
うつ伏せはいつから練習する?
うつ伏せの練習は、基本的には生後1ヵ月くらいから始めることができます。
生後すぐにうつ伏せをさせてもいいという方針で、入院中からうつ伏せの体勢を取り入れる産院もあるので、早くからうつ伏せの姿勢を取り入れていきたい場合には、出産した産院に相談してみましょう。
ただ、焦って練習させる必要はまったくないので、赤ちゃんの様子をみながら、無理のない範囲で行いましょう。
- 初めてうつ伏せの姿勢をさせるときは、必ず赤ちゃんの表情を確認しながら行ってください。
- 顔を持ち上げることができない赤ちゃんがほとんどですので、数秒もしくは1~2秒でかまいません。
- すぐ元の姿勢に戻すか抱き上げてください。繰り返し行っていくことで、少しずつ慣れていきます。
首すわり前の初めての練習
まだ首のすわっていない赤ちゃんをうつ伏せの姿勢にさせるのは、なかなか勇気のいることです。心配な場合は、赤ちゃんを抱っこしたまま、親が仰向けの姿勢に寝転んでみましょう。
- 赤ちゃんを抱っこしたまま、親が仰向けの姿勢に寝転んでみましょう。
- 抱っこされている赤ちゃんは自然とうつ伏せの姿勢になります。親と密着していることで、赤ちゃんが不安になることもありません。
- 赤ちゃんの顔が真下を向いて、呼吸ができなくなっていないことを確認しながら、初めは10秒程度で起き上がりましょう。
- 赤ちゃんが苦しそうでなければ、少しずつ時間を伸ばしていってかまいません。
お腹の上でうつ伏せができたら床の上で実践練習
お腹の上でうつ伏せの姿勢ができることを確認したら、次は床で挑戦しましょう。
痛そうという理由で、柔らかい布団の上で練習したいところですが、柔らかい布団は顔が下を向いてしまったときの窒息の危険性を高めるので、固めの布団か毛足の短いカーペットなどをおすすめします。
- まだ首がすわっていない段階なので、むりに身体をひねらず、片手で首と背中を、もう片方の手でお腹から股関節あたりを優しく支えながらうつ伏せにしてあげることに心がけましょう。
- うつ伏せの姿勢にしたときに、顔が下を向いてしまっていたら、そっと横向きに顔を動かしてあげてください。まだ自分の意思で顔の向きを変えられない赤ちゃんも多いので、そこはお手伝いが必要です。
- うつ伏せ練習で一番注意が必要なのが、赤ちゃんを窒息させないことです。呼吸できる状態になっていることを常に確認しましょう。
練習後のアフターフォローは忘れずに
どんなに短時間でも練習をしたあとには、頑張ったことをほめてあげてください。言葉はまだ通じないかもしれませんが、赤ちゃんは表情から大人の気持ちを読み取っています。
ちょっとつらくても頑張ったら喜んでもらえると思うと、練習にも身が入るものです。ただつらいだけの練習であると感じさせないように注意しましょう。
うつ伏せ(腹ばい)の練習する際の注意点
うつ伏せの練習では、赤ちゃんが窒息しないことに注意が必要であると前述しましたが、それ以外にも注意が必要なことがあります。事前に確認してから練習に挑みましょう。
環境を整える・安全対策をする
生後1ヵ月のころは、仰向けの姿勢で寝ていて、まだ場所を移動することもないので、部屋のなかが赤ちゃん仕様になっていないことがあります。
しかし、うつ伏せ練習を始めると、赤ちゃんの視野が広がり、気になったものに手を伸ばしたりするようになります。
うつ伏せ練習をする際には、赤ちゃんの周りにタオルなどの布類や枕、おもちゃなどを置かないようにしましょう。顔の近くにあったり、手で掴んで顔の周りに持って行ってしまうと、窒息してしまう恐れがあります。
練習を始める前に、練習する環境を整えてから始めるよう意識しましょう。
嫌がったり泣いたりする場合は強要しないこと
赤ちゃんにも練習に適したタイミングがあります。
機嫌が悪いときには、練習も嫌がります。嫌がっているタイミングで練習を強要すると、機嫌とは関係なく、うつ伏せ自体を拒否するようになってしまう可能性があります。赤ちゃんの機嫌がいいタイミングで、練習をさせてみてください。
また私の第2子がそうだったように、なかには、うつ伏せの姿勢を嫌う赤ちゃんもいます。
嫌がる赤ちゃんに練習を強要してもなんの効果も得られません。寝返りをするようになったときに注意が必要ですが、うつ伏せの練習をしなかったからといって、首がすわらないわけでもないし、体の成長に特段の影響はありません。
嫌がる場合には、何日か練習を休んでみたり、抱き合った状態で横になってみたりして、様子をみてみましょう。
不安を感じさせないよう目線を合わせる
仰向けの姿勢から、うつ伏せの姿勢になると、一気に視界が変わります。上を向いているときには見えていた親の顔が急に見えなくなることで、不安を感じる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんをうつ伏せの姿勢にしたら、すぐに顔を覗き込み、そばについていることを実感させてあげてください。目線を合わせることで、赤ちゃんが苦しんでいないかも表情から読み取ることができます。少しでもつらそうな表情をしていたら、すぐに元の姿勢に戻してください。
特に練習の初期段階は、赤ちゃんと目と目を合わせて、赤ちゃんの表情をみながら、赤ちゃんの負担にならない範囲での練習を心がけましょう。
少しずつ首を持ち上げられるようになってきたら、向かい側で同じうつ伏せの姿勢をしてコミュニケーションをとってみましょう。
前を向いたら大好きなママがいると思うと、さらに顔をあげようと努力するきっかけになります。コミュニケーションの一環として練習することで、赤ちゃんも練習に嫌悪感を抱くことなく、楽しく習得していくことにつながっていくでしょう。
まとめ
赤ちゃんが自分の意思でうつ伏せの姿勢をとるようになり、うつ伏せの姿勢を好んで遊ぶようになるまでには時間がかかります。必然的にうつ伏せになってしまう寝返りをするようになる前に、うつ伏せの姿勢に慣れておくことが重要です。
ただし、赤ちゃんの成長のペースには個人差があります。私の子どもたちのように寝返りが早かったり、うつ伏せが極端に嫌いで練習させられないこともあります。
そんなときでも焦らないでください。赤ちゃんの呼吸を確保してあげることだけ注意して、あとは赤ちゃんの成長のペースを見守ってあげましょう。