赤ちゃんが言葉を話す時期には個人差があります。でも、1歳前後に意味のある言葉を発するのが一般的。

初めは大人の言葉を真似する時期があり、それが自分の表現として獲得されるため、周囲の関わりによって言葉を育むことを丁寧に行うことで、言葉の発達を促すことができます。

ここでは、言葉の発達が早い子と遅い子の違いや、家庭で実践できる言葉の育み方を言語聴覚士が紹介します。表現を真似することの大切さがわかるだけでも、保護者の言葉かけを変えられます。

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赤ちゃんはいつから意味のある言葉を話す?言葉を覚え話すまでの発達プロセス

赤ちゃんが日本語を話し始めるには、いくつかのプロセスを歩む必要があります。いきなり大人が喋るような言葉を使うようになることはありません。

生まれてから初語と言われる「初めて意味の分かる言葉」を話し始めるまでは、幼いながらに準備をしています。


周囲が赤ちゃんの成長をきちんと見極めることができるようになると、言葉を発するための成長が見えてきたと感じられます。

特に言葉の出が遅いと心配になっている場合には、話すためのプロセスをどこまで進んでいるかを確認しましょう。すると、もう少しで出てきそうという見立てを考えられるようになり、赤ちゃんの成長を暖かく見守れるでしょう。

喃語から話し言葉に変化を遂げる

赤ちゃんは言葉を話すために、喃語といって「アウアウ」「マンマ」「バブバブ」といった複数の音を組み合わせて発する段階が存在します。初めは「アイウエオ」といった母音で構成されることが多いのですが、徐々に複雑な音を出すようになります。

一般的には首が座る4ヶ月くらいから喃語の出現が始まり、その頻度がアップしたり、出せる音のレパートリーを増やしていきます。この成長が無ければ、言いたい言葉がそれらしく表現できません。


話し言葉は色々な音で日本語として成り立っています。それを日々の鍛錬で出せるようになる赤ちゃんのスキルは、大人になってから新たな語学に触れたときの難しさを感じた経験がある人ほど、凄いことだということに気づくはずです。

喃語が全く出ていないようであれば、声を出すことでの喜びを感じさせてあげられるやり取りを行ってみましょう。

赤ちゃんが声を出した時に注目してあげたり、要求を叶えてあげたりすることで、喃語を発してコミュニケーションを取ることのメリットを体験させてください。すると、意図的に発する頻度がアップします。

こうした積み重ねを丁寧に行うと、喃語から意味のある言葉を話す段階へと移行します。

言葉の発達が早い子と遅い子の違い

言葉の発達が早い子は、日常生活の中でどれくらい言葉を聞くやり取りができているかが関係します。

言葉を使うことでやり取りが楽しいと思える経験や、相手が自分の気持ちを汲み取ってくれたということが無ければ、言葉を使うことへのメリットが感じられません。


言葉を聞くチャンスが多い子は、学ぶ機会がアップします。

初めての子に比べて二番目・三番目の子供は言葉の発達が早いと感じるのは、大人からの言葉だけでなく、子供の間でもやり取りが行われ、そこで学習を繰り返しているからではないでしょうか。

場数がたくさん踏めるということは、言葉を使うことのメリットが実感しやすくなります。それが、発達を促す一因となります。

でも、兄弟・姉妹がいない一人っ子でも、言葉の発達が早い子は存在します。頻度ではなく質が早さに影響することもわかっています。

いずれにしても、言葉を使うことに何らかのメリットを感じなければ、ジェスチャーで十分と子供側が感じたり、話さなくても不自由しない状況が続き、結果として言葉の発達が遅いという印象へと繋がります。

言葉が遅いと思ったら「教える」「覚えさせる」ではなく「育む」意識の関わり方

赤ちゃんの言葉を発達させるには、日々の関わりが大きく影響します。

言葉の発達が遅いという悩みは、難聴や発達障害などが影響することもありますが、話し始めるまでの促しが家庭で行われていなければ、どんな赤ちゃんでも話し始めるタイミングが遅くなってしまいます。

保護者が育むコミュニケーション手段は、コツをつかんで接するだけでも質を高められます。

自然と学ぶコミュニケーションスタイルは、「教える」「覚えさせる」という意識で関わるのではなく、「育む」という意識が必要です。

どうすれば子供の心を動かし、そこに言葉を添えて大切さを触れさせていけるかが、話し始めるまでのスピードに繋がります。

言葉のシャワーは心に連動する

赤ちゃんは難聴が無ければ聞いて学ぶというスタイルを日常的に獲得します。

ですから、周囲の声を聞き、コミュニケーションの楽しさを親子で共有できるようになると、簡単に言葉を理解するという経験が豊かになります。

「これ、なあに?」といった質問攻めをするのではなく、あくまで子供が感じた驚きや発見に言葉を乗せてあげることが、良質な刺激のシャワーとなります。

関わりのスタンスで考えると、「教える」「覚えさせる」のではなく、「育む」というニュアンスで接すると、赤ちゃんなりに言葉のシャワーが心地よく感じられるようになるでしょう。


数多く浴びせるのが言葉のシャワーではありません。欲しいときにあげられるようなものでこそ「言葉が必要」だという体験が生まれます。心の動いていないタイミングで保護者がいくら豊富な知識を披露しても、赤ちゃんにとっては雑音と変わりないのです。

心が動いた瞬間をとらえて言葉かけを行わなければ、コミュニケーションを深める道具という認識を持つのはもっと後になってしまいます。ここが、言葉が出るまでのスピードに影響します。


闇雲に「教える」というスタンスで関わっている以上は、子供の心を満たすことはできません。逆に、「どうして伝わらないのだろう」というイライラを、赤ちゃんが持ってしまうリスクが高まります。

赤ちゃんの気持ちを察する洞察力が必要

赤ちゃんにどういった言葉かけをしてあげればよいかがわからないという保護者にとって、気持ちを汲み取るのは難しく感じられるはず。

でも、子供の目線の先に何が映っているかを考えることができると、目にしたものを知識として経験することができます。

赤ちゃんなりにも気持ちが動くタイミングが存在します。それを汲み取るのはコツが必要ですが、「何か感じ取った」というときは、保護者であればイメージできるはずです。


何かを見つけて行動がピタッと止まる瞬間があります。その時には赤ちゃんの頭の中はどのようになっているかというと、視覚的に情報を入れた後、「自分ではわからないものだった」という結論に至ることが少なくありません。

むしろ、言葉を獲得していく年代にある子供たちは、毎日が新たな言葉の刺激に出会うチャンスが満載です。そこでの経験を言葉に結びつけるためには、赤ちゃんの気持ちを察する洞察力が必要です。


気持ちに寄り添った言葉かけが行えると、赤ちゃんも保護者の声を聞いて納得します。そうではなく意に反するような言葉かけに感じられた時には、さらに癇癪が強くなるといった反応へと波及します。

こうした動きが頭の中で巡っているため、気持ちに寄り添った言葉かけが成長を支えているのでしょう。

赤ちゃんの言葉を早く出したいなら言葉かけを学ぼう

赤ちゃんの言葉を早く出したいというときには、日々の関わりや言葉かけのコツを学びましょう。

療育のプロでもある言語聴覚士と地域で出会う機会があれば、現状に合わせた関わり指導が行われます。その積み重ねによって話す時期を近づけることは可能です。むしろ、思った以上に言葉がこぼれてきたという瞬間に感動を覚えるでしょう。

保護者の言葉かけを意識的にするだけで、赤ちゃんは良質な言葉のシャワーを受けられます。大人の言っていることがわかるようになってくると、今度は自分からも表現をしたいという気持ちが備わります。この好奇心があるからこそ、子供はどんどん言葉を習得していくのでしょう。


言葉かけは赤ちゃんが聞き取りやすい長さを考えなければなりません。

「パパ」「ママ」「ワンワン」などは、どれも単調な言葉の繰り返しです。はじめはこのようなルールが簡単に学べて、舌を複雑に動かさなくても上手に出る発音から表出を促すべきです。

ただし、言葉の習得は個人差が大きいため、我が子の発達状態をきちんと把握してくれるところに、継続してフォローをお願いするように気を付けましょう。言語聴覚士の視点から指導される関わりのテクニックは、どんな家庭でもお試しで実践する価値を感じられるでしょう。

プロから学ぶ関わりのテクニック

子供の発達に詳しい専門職が近くで育児相談を受けている場合には、言葉の相談をしてみましょう。そこには、目からウロコの関わり方が待っています。

初めての子育てはもちろん、何人も育ててきたという保護者でも、現在の赤ちゃんの成長に合わせたスモールステップを設定するのは大変です。そこは、プロの視点から評価を行い、そこから「何をすればよいか」という疑問を明確にした関わり方を見つけましょう。


自宅で日々の関わりから提示されたものを実践し、どんどん取り組みにテコ入れを行うのが療育の魅力です。子供の発達に応じた関わりの指導を具体的に行われているので、言葉が遅いという心配を解決するには必要不可欠な存在ではないでしょうか。

1歳でも言葉を話さないというのであれば、お試しでいくつかの演出を行ってみましょう。

・「あった」「ない」の演出

赤ちゃんが大好きなおもちゃをわざと紛失した状態にし、一緒に探すことをしてみましょう。

その際に、家庭内で探せる範囲で構わないので、「キッチンにパパいるかなぁ?」「あっ、いないねぇ」など、人探しや物探しを行ってみましょう。

設定としては物探しが簡単でしょうし、「あった(いた)」「ない(いない)」の習熟によって発展させられる展開を言語聴覚士と一緒に考えてみましょう。

・育児日記の習慣づけ

何気ない関わりから言葉の成長を感じることは大切ですが、落ち着いて振り返ってみて、子供に及んだ変化を考える時間も大切です。

育児日記を1日5~10分で良いのでつける習慣を作りましょう。そこから日常的に触れることが多い言葉のピックアップができます。あとは意識してその表現を使って赤ちゃんと分かり合うだけ。

コツコツ続けると成果が感じられるでしょうし、その時に感じた困り感を訴えるにも、情報を書き留めておくことは有効です。

・物の受け渡し

1歳の赤ちゃんでも他人との物の受け渡しは経験しているはずです。「どうぞ」「ありがとう」などのやり取りは、コミュニケーションの基礎を作ります。そのためにも、道具を介して他人とのやり取りを行うようにしてみましょう。

・助けを求める見本

何かを手伝ってほしいときにパパもしくはママを呼ぶというスタイルを、赤ちゃんの目の前で実演してみましょう。

すると、自分の欲望を叶えてくれるためには声をあげると相手が気付いてくれるという学習をします。そこからしてほしいことを表現すると、目的の達成が小さいながらに感じられるのです。

育児書とは違う赤ちゃんの言葉育て

赤ちゃんに対する言葉育ては、育児書を見ると果てしない提案が成されていることに気づきます。でも、それを全て実践するのは大変ですし、意識して関わる時間を一日中続けることはプロでも不可能です。

ただ、ふとしたときに育児の不安が軽減するような情報を目にしていると、自分らしく子供を育てる生活が手に入ります。


育児書は一般論をまとめているだけであって、個人差があるという表現は、ほんのわずかしか触れられていません。自分の子供がどれくらい発達しているかを見極めなければ、次にすべきことがまとまりません。

だからこそ、言葉が遅いと思っている時点で、育児書とは違った関わりから言葉育てを行わなければならないということが理解できるはずです。


育児書よりも役に立つのが母子健康手帳です。

生まれてから成長する課程を追い、月齢ごとに進捗をチェックすることができる内容が記されているはずです。育児が初めてという保護者にとって、自分の子供は一般的な発達を遂げているのだろうかという心配があるはずです。

それを払しょくするためにも、赤ちゃんの成長を分析しなければなりません。

言葉を育てる前に体の成長はきちんと進んでいるかを調べるのも大切です。歩いていなかったり首が座っていなかったりと、1歳を迎えるうえでは超えていなければならない運動機能が備わっていなければ、言葉を話すタイミングも遅れます。

話すというのは運動の一種です。ほかの部分がゆっくりなのに、言葉だけを早くすることはできません。いかにして自分の子供の成長を見つめることができるかが、その後の関わりに必要なエッセンスを絞り込む発想へと繋がります。


素人でもわかる育児書と目の前で繰り広げられるギャップ。そこに悩むのではなく、あくまで一般的な発達はこれくらいという意識で情報を見ておくと、焦ることなく赤ちゃんの成長に寄り添った言葉かけが行えるようになるでしょう。

その配慮をするためにも、情報に振り回されない芯の通った育児を家庭で行うべきなのです。

赤ちゃんの気持ちに寄り添うことが話す時期を決める

赤ちゃんとお話がしたいと思うのは、どんな保護者でも共通しているはずです。

でも、焦って言葉を引き出そうと思っても逆効果になることがほとんどです。着実に言葉育てを行うことこそ、話し言葉を使ったやり取りへと繋がります。

まずは赤ちゃんの気持ちを汲み取って、そこに寄り添って言葉をかけてあげるという丁寧なやり取りができなければ、話し始める時期は先延ばしになってしまうでしょう。


意味のある言葉を覚えるためには、赤ちゃんが示す気持ちを言葉の見本で表現し、それを真似してもらうことが「言葉を覚える」というサイクルを活発にしてくれます。

ただ、気持ちに寄り添うことを疎かにしていると、気持ちのすれ違いが生じるだけです。

関わりのメリットを感じさせてあげることができると、言葉という道具を習得する気持ちが赤ちゃんに芽生えます。それは、毎日の関わりの中で保護者をはじめとした人が意識的に行動することで、特別な教え方をすることなく自然と習得していくのです。

心の動きをとらえる努力を頑張れば、子供の可能性を伸ばすことは誰にでも可能です。