赤ちゃんが意味のある言葉を話しはじめ、会話が成立するのは保護者にとっても楽しみなはず。

でも、いつから会話ができるようになるかを心配に思っている方も少なくありません。

赤ちゃんによって個人差があるのですが、早い・遅いを分ける要因についてなど言語聴覚士が説明します。コツがわかれば言葉を促す関わりができるようになるでしょう。

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赤ちゃんといつから会話できる?理解して意味のある言葉を話すのはいつ?

赤ちゃんとのやり取りは生後すぐから行われています。でも、会話を楽しむようになるのはもっと先のことです。

あやすと「ニヤリ」と笑うのは、生後2ヶ月くらいで見られますが、あくまで気持ちが嬉しくて笑っているのではなく、反射的に笑った表情になるのが一般的。

実際に感情が伴って「笑う」というやり取りを楽しむには、生後3~4ヶ月と考えるのが良いでしょう。もちろん、子供の発達には個人差があるので、もっと早くから話しかけると笑ってくれるという反応が見られることもあります。


言葉を使って親子がやり取りを行うのはもっと後になりますが、気持ちが繋がる瞬間はもっと早くから育ちます。その気になれば、わずか数ヶ月で豊かに通い合う、まるで会話のようなキャッチボールに見えるやり取りが行えます。

だからこそ、「いつから会話ができるのだろうか?」という疑問は、「心を動かすコツさえ知っていれば、生後数カ月でやり取りが上達する」という説明ができます。

保護者の話しかけが大きく影響する

赤ちゃんが会話を楽しむのは、保護者をはじめとした周囲の働きかけが関係しています。よく話しかけている家庭ほど、言葉の素晴らしさを赤ちゃんが実感しています。

母乳やミルクを飲んでいるときに自然と話しかけている声は、生後間もなくの赤ちゃんでもぼんやりと聞こえてきます。いつしかその声を聞くことで安心するといった愛着の基礎が築かれるようになります。

母親だけが話しかけをするわけではなく、父親や祖父母、兄や姉といった家族が色々な言葉を聞かせてあげるのが一般的な育児環境のはず。その中でも頻度の多い保護者の声かけは、何気ないものでも構わないので、聞いて学ぶための準備を担っています。


無言のまま生活を送っている家庭よりも、赤ちゃんが喋れなくても会話をしているように声かけを行う方が、自然と聞いて学ぶ機会を作っているはずです。

大人も言葉を学ぶために耳で聞いて覚えるというスタンスを教育商材で見かけるでしょうが、赤ちゃんが日本語を学ぶプロセスも、基本は聞いて学ぶことになるでしょう。

見て学ぶことも併せて行われますが、音の特徴を聞きわける場数を踏むうちにコツをつかみます。それを自分でも真似するようになるので、赤ちゃんが会話を楽しむときに、話し言葉を使うようになるのです。

「赤ちゃんは喋らないから何を話せば良いかわからない」という保護者ほど、話しかけが苦手で子供の学習チャンスを少なくしています。

意識的に関わることがどれだけ大切なのかは、すでに生後数ヶ月でも感じられるのではないでしょうか。いつから始めるかを考えるのではなく、常に赤ちゃんへの注意を向けながら話しかけることを気を付けましょう。

無意識な発声から意図的なやり取りへの成長

赤ちゃんの会話は生後2ヶ月くらいから、「クーイング」という発声を始めるようになります。まだ母音の表出ばかりですが、「アーアー」「ウーウー」といった声を出します。

それを保護者が推測しながら、「うん、美味しいねぇ」などの言葉かけを行い、感情が共有できたかのようなやり取りを行います。このさりげない関わり方こそ、言葉の基礎を作るために必要な原動力となります。


赤ちゃんは4ヶ月を過ぎるようになると、喃語を話し始める時期へと移行します。

「アウアウ」「アムアム」など、複数の音が表現できるのが特徴です。意図して話したような表現が見えてくるため、周囲も言葉かけがしやすくなるのではないでしょうか。

キャッチボールができたかのような会話が成立するようになると、意図的に関わる機会が増加します。それが愛着を形成して、子供のための言葉育てが日常の中で行われます。



さらなるやり取りを続けていくと、意味のある言葉に波及するタイミングが訪れます。

それが、保護者をはじめ、周囲が心待ちにしていた「初語」というステップなのです。

不完全でも構わないので、それらしく意味のある言葉になっているものを初語と見なして構いません。大切なのは明瞭さではなく、コミュニケーションへの糸口です。その積み重ねが、心を通わせる育児を作ります。

気持ちが繋がる会話のテクニック

赤ちゃんと会話がしたいという保護者の思いは、いつからでも叶える準備が整えられます。

毎日の育児で意識的な会話を行うことで、気持ちを紡ぐ体験をすれば良いのです。特別なことをするのではなく、今よりも少しだけ赤ちゃんとお話を楽しむ時間を作ってみてください。すると、気持ちが通じ合う瞬間が経験できます。

赤ちゃんと目を合わせたり、何気ない言葉かけをして笑いあったり、そんなやり取りで構いません。会話の基礎は、ささいなやり取りから変化するものなのですから。

もしも赤ちゃんとのやり取りのコツがわからないというのであれば、大人が気持ちを代弁しながら会話をしてみてはいかがでしょうか。そこに赤ちゃんの返答は必要ないのです。

たとえば、

  • 「アムアム、お口動かしてるねぇ。そろそろご飯かなぁ?」
  • (赤ちゃんと視線を合わせる)
  • 「うーーん、お腹空いたねぇ、ご飯にしようか」

といった感じで、周囲が気持ちを汲み取るテクニックを持っていれば、そこに言葉は必要ないのです。

アイコンタクトで意思がわかるようであれば、あとはそこに言葉を乗せるだけ。その法則がわかっていると、赤ちゃんとの会話はいつからでも始められます。

赤ちゃんがしゃべる時期に早い・遅いが分かれる理由

赤ちゃんが話し始める時期が違うのは、個人差だけでは片付けられない何かが潜んでいるはずです。

「どうしてうちの子は言葉を使って会話するのが早い(遅い)のだろう?」という疑問を紐解くには、日常の関わりを分析する必要があります。

どのようなやり取りを日常生活で行っているかによって、赤ちゃんが言葉を学ぶスピードが変化します。つまり、周囲の言葉かけ一つで、赤ちゃんの発達の早さに違いが生じるのです。

周囲からの働きかけが促しになる

赤ちゃんとの会話を促すには、周囲の働きかけを意識させるべき。その変化が積み重なることによって、言葉を学ぶというサイクルが活性化します。

話す前には知ることが前提に無ければなりません。つまり、大人の言葉を聞くという機会を設けなければならないのです。

赤ちゃんとやり取りを行うときに口数が少ない家庭よりは、自然と話しかけてリアクションを態度や声から拾う家庭の方が、遥かに会話をするタイミングが早くなります。

言葉の成長が早いという印象は、周囲が有効な働きかけを行っている成果でもあるのです。

言葉が成長するためには音への反応や運動機能にも目を向けなければなりません。

  • 首が座っている
  • 寝返りをうつことがある
  • ハイハイをする
  • 座位を取って手を使うことができる
  • つかまり立ちをする
  • つたい歩きをする
  • 音に反応する(ビクッとしたり、音を探す)
  • 声に反応する(呼びかけるとそちらを向こうとする)

このような成長が日常の中で見られるようになっていくことも、言葉を学ぶための土台作りには必要です。言葉を話すということも運動の一つですから、全身的な発達が疎かでは、言葉が遅いという印象を変えることは難しいのです。

母子健康手帳を確認しながら赤ちゃんの発達を把握していくと、そろそろ言葉が出てきそうという予想も立てられるようになります。

保健師や言葉の発達の専門職である言語聴覚士の支援を受けることも大切かもしれませんが、家庭で保護者が子供を見守り、日々の生活から成長を感じ取るということも育児意欲のアップになるでしょう。

一方的な刺激は成長を遅らせる

保護者の声かけが赤ちゃんにとって刺激になることは、特別な知識が無くてもイメージできるはず。でも、コツをつかんで言葉かけを行わなければ、言葉を引き出すことには繋がりません。

「言葉のシャワーを浴びせるように言葉かけをする」というのは、育児書などでも目にしたことがあるかもしれませんが、きちんとした解釈でなければ意味がありません。

むしろ、ただ浴びせているような言葉かけは生活音と一緒で、赤ちゃんにとって有効に働いていないかもしれないのです。



言葉を使ったコミュニケーションを育てるのであれば、一方的では意味がなく、お互いに心を通わせ、そこに言葉を乗せていくことが必要です。そのためにも、赤ちゃんの行動に合わせた声かけを心掛けてみてはいかがでしょうか。

言葉のシャワーは気持ちに寄り添うことが大切です。赤ちゃんは自分から言葉にして気持ちを表現するのは未熟ですが、何らかの発信を行っているはずです。

泣いているだけでなくまどろんでいたり何かに集中していたりと、どこかに気持ちが動いている印象を持つでしょう。その場面で声をかけてあげることこそ、意思の疎通に繋がるのです。

赤ちゃんが話し始める時期が遅れるお耳の問題

赤ちゃんの会話が遅れるのは、周囲の関わりが原因というわけでなく、産まれもってハンディキャップを抱えている場合があります。

その一つが耳の問題です。聞こえにくい「難聴」という状態が赤ちゃんにある場合には、せっかく声をかけても刺激として入っていない場合があります。

産まれながらにして難聴がある可能性は1000人に1人か2人くらいとされていますが、決して少ない人数ではありません。


産婦人科では生後すぐにお耳の問題が無いかを調べる新生児聴覚スクリーニングが行われているところも多いので、そこで難聴の疑いを調べておくだけでも耳からくる言葉の遅れを排除できます。

ただ、全ての子供が検査を実施しているわけではなく、任意で検査が行われていたり、新生児聴覚スクリーニングのシステムを導入していない産婦人科も存在します。

言葉は耳から学ぶという経路を使って積み重ねていく割合が高いため、難聴があることで言葉が遅いという印象を持ってしまう可能性が高まります。

もしも子供の聞こえについて調べたことが無いというのであれば、言葉の問題を主訴にして相談してみましょう。

難聴があると会話の成長が遅れやすい

難聴にも程度がありますが、周囲の言葉がほとんど聞こえないくらいの難聴がある場合には、言葉の出始めが遅れる傾向が強くなります。

軽度もしくは中等度の難聴であれば言葉の成長に大きな遅れがなく、発音が悪いなどの悩みが成長と共に出現し、そこで難聴が見つかるということもあります。

ただ、生活するうえでほとんどの音が耳に届かない難聴があると、言葉を学ぶ機会が縮小されてしまいます。

自分の声だけでなく周囲の声を聞きながらコミュニケーションを取るのは大人も子供も変わりありません。赤ちゃんの言葉の成長には耳の環境も大きく影響します。

もしも言葉が遅いという印象がある場合には、「聞こえはどうか?」という視点を持つことも必要になるでしょう。

赤ちゃんとの会話をいつから始めるかは保護者次第

赤ちゃんとの会話は産まれてからすぐに基礎を貯めるべき。でも、無造作に声をかけるのではなく、赤ちゃんとやり取りを楽しみながら声を発することが必要です。

そのコツを上手につかんで会話ができる家庭ほど、言葉の成長が早いという印象を持つはずです。

言葉が遅い原因は声かけだけでなく、発達の緩やかさが影響することもあります。全身的な発達や音への反応を確認しつつ、子供の成長を見守ってください。

いつからでも赤ちゃんへの成長を促す働きかけが行えるため、育児不安を一人で抱えるのではなく、地域保健師や言葉の成長に詳しい言語聴覚士に相談するのも良いでしょう。

保護者次第で言葉の育ちが変わるとわかったのであれば、自分たちで成長を促すエッセンスを注ぐべき。そのスタートは今からでもすぐに行えるはずです。