赤ちゃんが言葉を理解する時期は、保護者が思っているよりも早いのが一般的。

生まれて数か月は理解していないように思うかもしれませんが、話し言葉以外の表現を理解する力は早くから備わっています。

ここでは、言葉の理解はいつからしているのだろうという疑問を解消し、日々の関わりで赤ちゃんへ言葉かけを行う大切さを言語聴覚士が説明します。

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赤ちゃんが言葉を理解する時期はいつから

赤ちゃんが言葉を理解する時期は個人差があっても1歳前には始まっています。

いつから大人の言葉を聞き、「わかる」という体験に繋がっているのかというと、生後8~9ヶ月くらいにはわかりかけている表現がいくつか出てくるのです。

ただし、産まれてから8ヶ月くらいまで、赤ちゃんは何も学習していないわけではありません。「言葉」というものは認識していなくても、保護者の声を聞いて落ち着いたり、自分の発する声に反応してくれることに喜びを感じるといった心の動きは始まっています。

「言葉の理解」という狭い表現にとらわれず、幼いながらにコミュニケーションを始める準備を日々の関わりから培っています。

言葉以外の表現は早くから理解する

赤ちゃんはいつから「理解する」という行動を起こしているのかは、保護者にとっても認識が難しいのではないでしょうか。話すのは1歳前後という大よその見立てはできたとしても、言葉を理解する時期というのははっきり答えられる人の方が少ないはずです。

実際には生後間もなくして親子のコミュニケーションは始まっています。赤ちゃんが泣いたら母乳やミルクをあげるというのはもちろん、眠い時にグズッて見たり、おむつが汚れたら泣いたりと、産まれて間もない赤ちゃんは「泣く」ことでコミュニケーションを取っています。

それを周囲が察して希望を叶えてあげることで、赤ちゃんの心が満たされます。このようなやり取りを行いながら、やがては行動と言葉が結びつくようになります。


「ウマウマ」といった喃語が出現する時期になると、赤ちゃんが発した言葉を保護者が拾って、それらしくやり取りを行います。笑顔で声に耳を傾けて、「ミルクかなぁ」といった声かけを自然に行っているはずです。それを赤ちゃんが聞いて学んでいるのです。

何かを発したら保護者が来てくれて、自分の希望を叶えてくれるというサイクルが活発になると、発する声の違いによって周囲が取る行動が違うことが経験として積み重ねられます。

それが、違いを理解するきっかけとなるのです。言葉を理解するというよりは、表情や雰囲気など、言葉以外の心で繋がる部分が育まれるのです。それが言葉の準備をするためには必要な経験です。

8~9ヶ月くらいが一般的

赤ちゃんが言葉というものを理解する時期は、いつからと断定するのは難しく、個人差を踏まえて認識しなければなりません。ただし、生後8~9ヶ月くらいから理解が進むという認識が一般的ではないでしょうか。

言葉を話し始める時期は早い・遅いがありますが、理解をし始める時期も同様に幅があります。ですから、あくまで一般論として生後8~9ヶ月くらいで日本語の理解を積み重ねていくということを押さえておきましょう。

早産や未熟児で産まれた赤ちゃんは時期がずれ込むことがありますから、修正月齢にして換算するのがおすすめです。


いつから周囲の言葉を聞き取っているかは、生後間もなくから始まっています。

先天的に聞こえに障害がない場合を除いては、耳から言葉を聞き、温もりで感じ取るということで愛着を形成します。あやすと落ち着くのは、耳から大好きな保護者の声を聞き、体全体で触れてもらうことで繋がりを感じているのでしょう。

それが1歳前の段階で認識できるのですから、赤ちゃんの持っている資質は計り知れません。

赤ちゃんの言葉が発達成長する順序

赤ちゃんが言葉を理解するというのは、成長の一部でしかありません。言葉の成長を紐解いていくと、どのような順序で大人の話す言葉に近くなるのかが理解できるでしょう。

順序を間違えて教え込んでも意味がないので、赤ちゃんとたくさんの時間を過ごしていても一向に変化が見られないという状況が生まれます。そうならないようにするためには、言葉の整理を行うべきです。


赤ちゃんが成長する際に接することがある保健センターや小児科では、どこまでの成長を果たしているかを客観的に評価してくれます。

いつから話し始めるのかという疑問や、言葉をわかっているのだろうかという疑問にも率直に返答してくれるはずです。もっと専門的に見てくれるところが身近にあれば、言葉の成長を一緒に考えてくれる言語聴覚士にも出会えるかもしれません。

理解から始まり表出へと繋がる

言葉の成長は氷山をイメージすると、理解と表出の関係がわかりやすくなります。

氷山は海面から顔を出している部分に比べて、海中にある大きさは何倍にもなります。あまり良い表現ではありませんが、「氷山の一角」という言葉を思い浮かべてください。実際に表に出ている部分はわずかで、見えていない部分がまだまだあるという意味で使われているのが語源です。

赤ちゃんの言葉の成長も、理解が大きく育っていかなければ表出する言葉は増えません。だからこそ、理解を育てることが重要なのです。どんな赤ちゃんでもこの順序が逆になることはありません。


赤ちゃんが認識できるものが増えてきたときには、何らかの表現が出現するはずです。

何かを要求するようなサインを周囲が丁寧に拾っていくと、はっきりとした表現に成長します。そのステップを踏ませてあげられるのが、保護者を中心とした家族なのです。

関わる人が多いほど、やり取りから認識するという経験を増やすことができます。ただ、小さいながらに理解できるような調整を行わなければいけません。

理解が伸びなければ表出は難しい

赤ちゃんの言葉の理解は、日々の生活からスキルを磨くことができます。

保護者が丁寧に関わることが言葉の成長に大切という解説は、どんな育児書を参考にしても同じような内容を目にするはずです。口をそろえて訴えかけるためには、それだけ重要であることが伺えます。


赤ちゃんは言葉を話すという表出が見えてくる前に、言うことがわかっているという理解が先に延びます。わかることが増えてくるというのが、表出を促すためのコツです。

言葉がコミュニケーションの道具であることは、1歳前の子供でも学習していることになります。意味のある言葉が出始める初語は1歳前後が一般的。その前に言葉がわかるタイミングが早ければ、初語に至るまでの時間も早くなるのです。

いかにして「わかってもらうか」に注意しながら関わることが大切か、言葉の成長する順序で理解できるはずです。

いつからでも始められる言葉の理解を促す関わり方

赤ちゃんの言葉の理解がいつから育つかは、産まれてからの関わりが大切であることは確実です。

言葉をわかってもらうというだけでなく、親子の絆を深めるために関わる時間を作るべき。赤ちゃんをあやし、「可愛い」と思える感情が、母性や父性を育てます。

いつからと言わず、子供を授かったときから意識的に関わるコツを学び、言葉育てを楽しむくらいが負担を減らします。


「いつになったら喋るのだろうか」と心配するよりも、理解を育てて言葉がこぼれてくるタイミングを楽しみにしてください。その方が、力の入り過ぎた育児のスタイルを崩し、自然に接することで心が通じ合う経験が積めるでしょう。

焦るほどに空回りするのは子供を愛している証拠です。でも、赤ちゃんにわかってもらえる関わりを知ると、いつしか心待ちにしていた瞬間に感動できる日がやってきます。

そのための準備を、小さいうちから積み重ねましょう。

目で見て学ぶ力をフル活用する

言葉の理解が早い赤ちゃんは、視覚的に理解する力を持っています。

意思疎通が言葉だけでなく、身振りや手ぶりなど、全身を使ってアピールする術も知っています。保護者も赤ちゃんに声かけをするときに、自然とジェスチャーを加えているものはありませんか?

「美味しいね」と表現するときに、頬を軽くポンポンを触るようなサインは、赤ちゃんにとっても理解しやすいものです。

それに保護者の笑顔が加わることで、「美味しいものを食べてほっぺを触ったら、ママが笑ってくれた」という認識が経験できます。それが毎日の食事で経験していくと、言葉の理解が進みます。

ベビーサインというものが育児書などでも紹介されていることがありますが、保護者が安定して同じような表現を見せてあげると、赤ちゃんは自然と学習します。

複雑な動きではなく、ワンアクションで表現できるようなものであれば、目で見て学ぶ力が働き、意味と表現を関連付けられるようになります。

シンプルな話し言葉を聞かせる

赤ちゃんへの話しかけは、長々と言葉を並べるのは無意味です。なぜなら、聞いて覚えていられる時間がまだ育っていないのです。

シンプルに一語ずつ話し言葉を聞かせてあげると、理解しているという体験が増えてきます。

・ご飯を食べているときの声かけ

「マンマ、美味しい!」くらいでも良いですし、「美味しいね~」「アムアム」「マンマだね」などを表現するのも良いでしょう。

「今日のご飯は炊き立てだから美味しいねぇ」と話しかけても、赤ちゃんは「何か言っている」という程度の反応しか残りません。

・夜寝る前のやり取り

眠そうな表情をしている赤ちゃんに対して、「ねんねだねぇ~」といった声かけを行う。「眠くなったの?もう寝るかい?」といっても、理解していないという印象が募るばかりです。

赤ちゃんは繰り返しの表現を意識してあげると記憶しやすく、理解が早いのも特徴的。

「車」「ブーブ」と言ったり、「犬」「ワンワン」と言うなど、何気なく使っているもので構いませんので、難しい表現を使わないように気を付けてみましょう。

赤ちゃん言葉というのは、話し始める準備段階の子にとっては大切な配慮なのです。

言葉の理解を促すのは丁寧な意思疎通

誰もが育児を一生懸命行っているでしょうが、丁寧な意思疎通のコツをつかむべき。

赤ちゃんは言葉の理解を8~9ヶ月くらいから始めますが、もっと早くから意思疎通の準備は始まっています。まずは視覚に訴えるやり取りを行うことから始めましょう。

目を合わせて赤ちゃんの気持ちを察することで、自然と言葉かけしたい表現が浮かんできます。それをシンプルに伝えてあげるだけで良いのです。


言葉はいつから使えば有効かという疑問は、産まれてすぐに使い始めるのがおすすめです。まだ言葉を理解をしていないとしても、赤ちゃんに対する声かけを行うことは、音への気づきを磨くことにも繋がるからです。

言葉が遅いという子供は、理解が繋がるまでのタイミングも遅い傾向が否めません。話し始めるにも理解が促されなければ言葉はこぼれてこないのです。

言葉が成長する順序を学び、赤ちゃんにとって経験させない表現をシンプルに日常で使うことができると、そのうち「わかった」という印象を周囲が持つはずです。

理解していると感じる表現をいくつもピックアップできるようになったとき、そろそろ話し始めるタイミングがくるでしょう。それが1歳前後になるのが一般的ですが、産まれた状況や生活環境によって、言葉の理解や表出のタイミングは大きく変化します。


言葉はどれだけ急いでもすぐに発達させることはできません。日々の関わりから地道に積み重ねることで理解が進み、やがては日本語での表現を道具として使うようになります。

いつからトレーニングを行うという設定ではなく、日常の会話の中で赤ちゃんがわかりやすい調整を行っていくと、期待していた初めて意味のある言葉を表現する「初語」が出てきます。

まずは初語が出るまで、腰を据えて言葉育てをしてみてはいかがでしょうか。いつしか理解が遅いという印象は薄れるはずです。