妊娠すると、これまで知らなかった言葉を耳にしたり、存在すら知らなかったイベントに出くわしたりします。「戌の日の安産祈願」もそのひとつです。
お腹の赤ちゃんが健康で無事産まれてくるようお祈りする「安産祈願」は、どんなことが行われる儀式で、いつからいつまでの間に行くといいのでしょうか。
安産祈願にいいとされている日と合わせて、安産祈願の「お礼参り」や、安産祈願のときに巻くとされる「腹帯」を巻く時期についてもご紹介します。
安産祈願はいつからいつまでに行くもの?
妊娠して、お腹に赤ちゃんの命を宿したら、最初に行われるイベントが「安産祈願」です。
神社やお寺などで、お腹の赤ちゃんが、無事に安産で生まれてくるようにお祈りする「安産祈願」はいつ頃行くものなのでしょうか。
安産祈願にいいとされる日は妊娠5ヵ月目の戌の日
安産祈願は、「戌の日の安産祈願」とも呼ばれており、妊娠5ヵ月目に入った最初の戌の日に行くとよいとされています。
妊娠5ヶ月目といえば、ちょうど安定期に入り、妊娠初期より流産する可能性が低くなるとともに、つわりが落ち着いてくる人も多い時期です。妊婦さんによっては、胎動を感じ始めることもあるでしょう。
妊婦さんの体調が整い始め、落ち着いた気持ちで赤ちゃんと向き合うことができるようになった頃、赤ちゃんが無事に産まれてきてくれるように、お祈りをしに行くと考えるといいでしょう。
戌の日に安産祈願をする理由
安産祈願は、なぜ戌の日にするといいとされているのでしょうか。
その理由は「犬の出産」にあります。犬は子だくさんで、お産が軽いと言われています。そんな多胎で安産の犬にあやかり、健康な赤ちゃんを軽いお産で産むことができるよう、戌の日にお参りをするようになりました。
ここで、戌の日(いぬのひ)とは何かを補足しておきます。
毎年「今年は○年です」と言われるように、年には12の干支があります。あまり知られていませんが、実は、日にも12の干支が割り当てられています。
「土用の丑の日」はご存知の人の多いのではないでしょうか。「丑の日」があるのと同様に、12日に1回「戌の日」があるのです。
安産祈願によいとされる日は、妊娠5ヶ月目に入った最初の戌の日なので、妊娠5ヵ月目の12日目までにその日が訪れます。12日に1回なので、休日に当たるとは限りません。
また、六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)の縁起がいい日にならないこともあるということは、頭に入れておきましょう。
その日でなくても問題ありません
安産祈願は、妊娠5ヵ月目に入った最初の戌の日にいくといいとされていますが、必ずその日にお参りしなければいけないというものではありません。
その日に近い、都合がいい日でもかまいませんし、つわりで体調が悪い場合には、先延ばしにしても問題ありません。
目的は、お腹の赤ちゃんが元気に産まれてくるようにお祈りすることです。その気持ちがあれば、妊娠5ヵ月目でなくても、また戌の日でなくてもかまいません。
また、代理の人がお参りする制度もあります。妊婦さんの体調が思わしくない場合には、旦那さんや両親、義理の両親などに代わりにお参りしてもらってもよいでしょう。
安産祈願をする日を決める際のポイントには、次のようなものがあります。
- 妊娠5ヵ月目の安定期に入ってから
- 戌の日
- 大安
- 休日(妊婦さんや付き添いの方がお休みの日)
妊娠の時期によっては、幸運なことに、すべての条件がそろうことがあります。ぜひ、その日に参拝したいと思うところではありますが、考えることはどの妊婦さんも同じです。
戌の日が大安で、かつ休日の場合、安産祈願で有名な神社やお寺はどこも大混雑です。安定期に入ったとはいえ、参拝のために長時間並ぶのは、妊婦さんの体にいいことではありません。
私は2人の子どもを出産していますが、1人目の時も2人目の時も、妊娠5ヶ月目の最初の戌の日は、大安の休日(土日)でした。
混雑すると分かっていても、これだけ条件がそろっていると、その日に安産祈願をしたくなってしまうものです。というわけで、私は2回とも、混雑している大安で休日の戌の日に参拝しました。
ただ、さすがに長時間並ぶ体力は持ち合わせていなかったので、旦那さんに神社に先回りして並んでもらい、途中から列に加わりました。
安産祈願は、体力勝負な一面もあります。あえて日にちをずらすことで、混雑を避けて参拝するのもひとつの手です。
どのポイントを優先するかは、人それぞれですので、家族の予定や自分の体調と相談して、安産を祈願するのにふさわしい日にちを決めましょう。
安産祈願ではどんなことするの?持ち物や準備は
「安産祈願」は、お腹の赤ちゃんが無事に産まれてくることをお祈りする行事です。
では、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。お参りに行く前に、事前に確認しておきましょう。
初穂料を納める
安産祈願では、神社やお寺でお祓いとご祈祷をしてもらうため、祈祷料として初穂料を納めます。初穂料は、のし袋にお金を包み、事前に用意してから参拝しましょう。
安産祈願の際の初穂料の金額の相場は5,000~10,000円と言われていますが、祈祷料が定められているところもあります。祈祷料がきまっている場合には、指定の金額を納めるようにしてください。
初穂料を渡すタイミングについては、参拝する場所によって異なるかもしれませんが、社務所で祈祷の受付をする際に、必要事項を記入した受付票と一緒に手渡すことが大半です。
受付票の設置がないところの場合は、社務所にて祈祷の受付方法を聞いてみるといいでしょう。
初穂料とは別に、お祓いとご祈祷をした状態のお守りや腹帯を購入することもできます。購入を検討している場合は、のし袋に包んだ初穂料とは別に現金を用意しておきましょう。
神社やお寺によっては、祈祷料として定められた金額に、お守りや腹帯の代金が含まれていることもあります。参拝場所での決まりがある場合は、それに従いましょう。
腹帯を巻く
安産祈願は、「岩田帯」と呼ばれるさらしタイプの腹帯を妊婦さんのお腹に巻いて、神社やお寺で安産を願ってお祓いとご祈祷をしてもらうことから、「帯祝い」とも呼ばれます。
妊婦さんがお腹に巻く腹帯には、次のような役割があります。
- だんだん大きくなるお腹を下から支える
- お腹を冷えから守る
- 人や物との接触などによるお腹への衝撃を緩和する
- 妊婦さんの腰の負担を軽減する
お腹が目立ち始める5ヵ月ごろから身に付ける妊婦さんが多く、妊娠5ヵ月目に行くことの多い安産祈願のタイミングから付け始める人が多くいます。
以前は、安産祈願に行く際に、腹帯を巻いた状態でお祓いやご祈祷を受けるのが主流でしたが、今は地域や参拝する神社やお寺の方針によって、祈願の方法が異なるようです。
腹帯を巻いた状態で、妊婦さんがお祓いやご祈祷を受ける以外にも、持参した腹帯にご祈祷してもらうケースや、ご祈祷された腹帯をその場で購入するケースもあります。
ちなみに私は、腹帯を持っていなかったので、安産祈願の参拝時に、神社で祈祷済みのものを購入しました。腹帯を巻いていくかどうかを悩んでいる場合には、参拝する予定の神社やお寺に事前に問い合わせておくとよいでしょう。
出産後のお礼参りはとは?いつまでに行くの
赤ちゃんが無事に産まれたら、安産祈願をした神社やお寺に、赤ちゃんが産まれた報告と、お礼をするために「お礼参り」に行きます。
お礼参りはどのタイミングで、何を持っていけばいいのでしょうか。お礼参りをする意味から考えてみましょう。
お礼参りをする意味
お礼参りとは、安産祈願だけに限らず、神社やお寺にした願い事が成就した際に、そのお礼をするために参拝することです。
必ずお礼参りをしなければいけないというものではありませんが、願い事の結果報告の意味も込めて、お礼参りをすることで、願い事は完結すると言われています。
安産の祈願をしたのに、実際は難産で苦しんだという人もいるかもしれませんが、赤ちゃんが無事産まれてきてくれたのであれば、その赤ちゃんの誕生という嬉しい事実を報告しに行くことをおすすめします。
お礼参りの時期はいつ頃?
お礼参りについては、特に決まった時期はありませんが、願いが成就してからなるべく早く行く方がいいと言われています。
出産後すぐは外出することが難しいので、新生児も外出ができるようになる生後1ヵ月を過ぎてからをおすすめします。
赤ちゃんが生後1ヵ月を迎える頃になると、「お宮参り」という赤ちゃんの誕生を祝い、健やかな成長を願う行事があります。お宮参りをする神社が、安産祈願したところと同じであれば、お宮参りとお礼参りを同時にするといいでしょう。
お宮参りする神社とは別のところで安産祈願をしている場合には、無理に生後1ヵ月でお礼参りをする必要はありません。ママと赤ちゃんの体調がいい日を見計らって、お礼参りに出かけましょう。
真夏の炎天下や、凍えるような寒さの日に、生後間もない新生児を外出させるのは避けたいところでもあります。赤ちゃんがお出かけしやすい季節になるのを待ってからでも遅くありません。
ママと赤ちゃんの元気な姿を見せられるタイミングで、出産の報告をしましょう。
お礼参りに持っていくといいもの
お礼参りに行く際は、次のものを持参しましょう。
- 安産祈願のときに受け取ったお札
- 安産のお守り
- 腹帯(安産祈願で祈祷をしてもらったもの)
- お炊き上げ料
安産祈願の際に受け取ったものは、無事出産を終えたことを報告すると同時に神社やお寺に返納しましょう。
返納したものは、返納した神社やお寺で「お炊き上げ」してもらいます。
「お炊き上げ」は、お札やお守りなどの思いを込めた品が役割を終えたとき、お礼の気持ちを捧げ、浄火することで天上に還すことです。
お炊き上げを依頼することになるため、お炊き上げ料としてお礼金を包むとよいでしょう。
まとめ
安産祈願は、妊娠5ヶ月目に入った最初の戌の日がいいとはされていますが、母子ともに健康な状態で出産を終えたいと願う気持ちさえあれば、別の日にお祈りしてもかまいません。
安定期に入ったとはいえ、まだつわりが続いていたり、妊娠による体の変化に対応しきれていなかったりして、万全な体調とはいえない人も多いでしょう。
まずは、妊婦さんの体調を優先させることを考えてください。自分の体調と相談し、家族の予定を調整して、一番都合がいいタイミングで参拝することをおすすめします。
出産を終えた後のお礼参りについても、出産後の体力が回復していない段階で無理をしないようにしてください。ママも赤ちゃんも元気な姿を見せることが一番のお礼となります。
母子ともに体調がいいタイミングで出産の報告をしに行きましょう。