子供が食べ物をうまく飲み込めないという状態は、症状によって取るべき行動が異なります。

肉などの固形物でも噛み切ることが難しいものは、咀嚼の力が十分に育っていないことも考えられます。急な飲み込み不良は嚥下障害との判別を行うことも大切です。

ストレスから影響が出る場合もあるので、子供の状態を観察しながら何科の病院に受診するべきかを言語聴覚士が解説します。

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子供が食べ物を上手く飲み込めない!口に入れたまま・口にためる原因

子供が食べ物をうまく飲み込めない原因はいくつか存在します。

成長と共に問題が小さくなることもあれば、日常生活の環境調整を行わなければならないケースもあるため、状況を確認しながら適切な対処を知っておくべきです。

食べ物を噛む力が成長するのは、普段の食生活が大きく影響します。

咀嚼することが苦手であれば、肉などの固形物でも「噛み切る」ということができなければの飲み込みが難しくなります。もちろん、ストレスなどの環境的な要因から飲み込めないという悩みを抱えることもあります。

あまりにも摂食という行為がうまくいかない場合、「嚥下障害」という飲み込めない状況を詳しく評価することが必要になることもあります。

でも、子供の場合にはすぐに病院を受診するのではなく、改善の要素が考えられることがほとんどです。

子供がどうして食べ物を飲み込めないかを見つめられると、病院受診の有無を判断するにも困らなくなるでしょう。その見極めのポイントを紹介します。

咀嚼の力が未熟であれば生じることが多い

子供は日々の食生活から咀嚼のスキルを向上させます。毎日の「食べる」という行為が鍛錬の機会です。

でも、大人のように上手に噛み切ることが難しい子供にとって、肉や繊維質の多い野菜といった固形物でも口の中ですんなりと小さくすることができないものは、時として飲み込みができずに口から出してしまうということが少なくありません。

飲み込みのタイミングがずれてしまうと、子供ながらに焦りが出てしまいます。水やお茶で流し込むという場合もあると、食べ物に対する苦手意識も強くなってしまいます。

それは、咀嚼をして飲み込むという一連の作業が、大人のように器用ではないからなのです。

噛む力が弱かったり、食べ物を奥へと送り込む舌の運動が悪ければ、飲み込みにくいという状況が誰にでも生じます。特別な病気があるから飲み込めないというのではなく、食べるという課程のどこかでうまく繋がっていないからこそ、摂食に問題が出てしまうのです。


子供は年齢と共に色々な食べ物に触れ、触感や味の違うものを経験します。その中で固形物でも食べるコツが必要なものに出会ったり、肉のような「噛み切る」という行為を繰り返すものに出会うことになるはずです。

初めから何でも食べられるのではなく、誰でも経験を重ねることで食事摂取のスキルが上達するもの。咀嚼するという意識を高めていくことができると、やがては超えられる壁であることが保護者にも感じられるのではないでしょうか。

そんなときには、子供の成長に合わせた食事の提供を行い、無理に負荷をかけるのではなく、楽しみながら食事のスキルアップを図りましょう。

環境的な要因から飲み込みに影響することも

子供は繊細な一面を持っており、心理的な負荷がかかるだけで食べる意欲が低下することがあります。

嫌いな食材が料理に入っているだけでも敏感に察知し、食べることを拒否するという行動に出ることもあるでしょう。

大人にとってはたった一度の失敗に思うかもしれませんが、食事のときにうまく飲み込めない体験をした子供は、同じような料理を目にしただけで記憶がフラッシュバックすることがあります。

噛む力は大丈夫でも、気持ちの面で「ダメかもしれない」という後ろ向きになってしまうと、食事に対する不安が大きくなってしまいます。


食事の失敗談がない子供でも、ストレスから飲み込めないということが起こることもあります。

食事の作法で叱られることが多かったり、日常的に食べたくないという気持ちに陥るような人間関係を経験すると摂食障害のような状態になり、飲み込めないという悩みに至ることもあるため、保護者は我が子のコンディションを確認しながら、いつもと違ったところがないかを把握しなければならないのです。

見た目にはわからない繊細な部分を持ち合わせている子供も多く、ほんのわずかな気持ちの変化が食べる意欲に波及することがあります。

急な飲み込み不良はまず病院へ!症状別に何科を受診するべきか

子供が食べ物を飲み込めない悩みを抱え始めたのであれば、まずは医療機関を受診して機能的な面での不具合が起こっていないかを確認してもらうべき。

「食べる」という行為は複雑な運動が連続して起こっているので、どの部分で問題が生じているかを確認してもらうべきです。

動きには問題が無いというだけでも重要な情報となり、これから何をしなければならないかが明確にできます。

飲み込みができない状況は、いくつもの原因が考えられます。

  • 舌の動きが悪くて飲み込みにくさが起こっている
  • 咀嚼する力が弱い
  • 送り込んで飲み込むといった協調運動がズレている

というように、摂食に関わる部分のどこが原因かを探ってもらうためには、医療機関の受診が最適です。

保護者が考えている見立てとは違う部分が問題を起こしていることもあるので、急な飲み込み不良は原因を探るサインといっても良いでしょう。

その際に、どのような病院へ相談するのが良いかを知るべきです。

嚥下障害の判断は耳鼻咽喉科の病院が良い

飲み込みにくいという状況が嚥下障害に該当するものであるかを判断してもらうのであれば、耳鼻咽喉科を受診して評価してもらうのが良いでしょう。

子供の「食」に関するフォローを行っているところを探し、現状を報告することで診てもらえます。

心理的な負荷がかかって飲み込みに影響しているかもしれないというときには、耳鼻咽喉科よりも心理的なケアに長けたところに相談するのもお勧めです。小児科に相談し、耳鼻咽喉科受診の必要性を相談してから行動するのも良いでしょう。

口腔外科でも咀嚼の評価を行ってくれるところがあるので、摂食に関わる専門家を一通り受診して、子供の困り感をきちんと把握することも保護者の安心へと繋がります。

毎日の栄養を摂取する食事が苦痛にならないようにするためにも、子供が飲み込みに対する不安を抱いている場合には、様子を見る時間を少なくして現状把握へと進んでください。

言語聴覚士による評価が行えるところを探すべき

摂食・嚥下に関わるスペシャリストでもある言語聴覚士という専門職は、耳鼻咽喉科をはじめ脳神経外科などにも配属されています。

脳機能が原因で飲み込みが悪いという状態が出現することもあるので、画像診断と食べ物を飲み込む様子を映像で取り込む嚥下造影というものを用いて評価することも可能です。

舌の運動機能や可動域といった、食べるために必要な力がきちんと備わっているかも把握してくれるため、飲み込めない原因を探るためには必要不可欠な存在とも言えます。

言語聴覚士は言葉のリハビリを行ったり、聴力検査を行ったりと、資格の名の通り様々な分野で活躍しています。その中でも摂食に関する専門性を近年高めている職種としても知られています。

栄養指導なども併せて受けたいというニーズを持っている場合には、保健センターに食の相談をするのもおすすめです。管理栄養士に繋いでくれて、毎日の食生活から子供の育ちを支えてくれるアイデアを与えてくれるでしょう。

食べ物を噛んで飲み込みやすくする「咀嚼」を育てる口腔周辺のスキルアップ方法!

食べ物を取り込んで噛み砕き、飲み込みやすくするという一連の動作を咀嚼と言いますが、その過程のどこかに弱い部分があるだけでも、飲み込みに大きな影響を与えます。

特に口腔周辺の運動強化を図る必要がある子供が多く、それまでの食生活が「噛まなくても食べられる」という誤った認識を子供に与えてしまっていることに気づかされるでしょう。

きちんと食べ物を口の中に保持する周辺の筋力アップは、よだれが垂れやすいという悩みを解消するうえでも役立ちます。口の締まりが悪くて食べこぼしをするという悩みを抱えている場合においても、口腔周辺の円滑さを高めることは必要です。


取り込んだ後の処理を上達させることも飲み込みに関係します。

食べ物を奥歯のある方へ移動させるためには、舌の動きが必要不可欠です。同じ場所を噛んでも食べ物は小さくなりません。細かく動かしながら噛まなければ、飲み込みやすい大きさにすることはできないのです。

子供の意識を変えるだけで日々の生活からスキルアップが実現するため、噛むことと舌の円滑さを出すことには力を注ぐべきです。

よく噛むことを子供に認識させる

食べ物を小さくするスキルが磨かれなければ、うまく飲み込めずにムセてしまったり、途中で食べ物が詰まって苦しいといった失敗が刻まれます。

その繰り返しによって苦手意識が強くなってしまうと、食べることへの意欲にも大きく影響します。

嚥下障害まではいかずとも、子供が食べたくないというものを無理して摂取させることはやめるべき。食べやすいものとそうでないものとの線引きを行うことができると、よく噛むことに難渋しているものが見つけられます。


子供はよく噛まずに丸のみをするという場合もあります。そんなときには指定した回数だけ噛み続けるような促しを行いましょう。

理想は30回くらい噛んで飲み込むという状態ですが、はじめは10回からスタートでも構いません。意識して噛むことを維持するのが大切なのです。

食事の時間は取り組みが難しいのであれば、おやつの時間を活用しましょう。

ルールを決めて頑張って噛むという意識を付けるには、お腹ペコペコで食べ進める3食よりも、それ以外の時間に行う方が効果を発揮する子供も多いでしょう。

舌の運動も飲み込みに影響する

舌の動きが円滑でなければ、飲み込み以前に問題を呈することがあります。

食べ物を飲み込もうとする動作に移行するためには、舌で口の中の食べ物を奥へと送り込まなければなりません。飲み込みだけでなく送り込みの問題があると、うまく食べられないという意識が子供に定着します。

ですから、舌を起用に動かすスキルを養うことは、食事摂取の底上げにも繋がります。

舌を意識して動かすのは歯磨きと一緒に行うのも良いでしょうし、にらめっこなどで遊ぶことも大切です。特に、舌先の動きが自分の意思でコントロールできることは、食べ物を取り込む上で必要不可欠なスキルとなります。

子供の食を支える保護者がすべきこと

食べ物が飲み込めないという状況は、本来であれば楽しい時間となるはずの食事が苦痛に変わってしまいます。

そうならないように保護者が働きかけを行うことで、子供の心理的負担を軽減し、食べる意欲をアップさせることができます。

嚥下障害の有無を確認してもらい、子供の困り感に寄り添って日々の生活を支えていくことができれば、いつかは食事が憩いの時間として過ごせる日が来るでしょう。


奥歯が生えそろうことで強化される咀嚼機能は、3歳過ぎから色々な形状や触感のものにチャレンジする意欲を高めます。

ただし、機能的には未熟な部分も多いので、ゆっくりと子供のスキルアップを図るべき。美味しいと思えるところから始め、徐々に食べられるものが増えてくるくらいで考えることが、保護者の不安を軽減させるでしょう。

食べられる経験を積み重ね、子供の自己肯定感といって、「自分って凄い」という気持ちを十分高めてから新たなスタートを切るように心がけると、チャレンジに対する不安も小さくなります。


誰でも成長していく段階で「食べる」ことに意識を向けるタイミングがあります。

無理なく子供のヤル気を高めて飲み込めないものへの抵抗を下げていくことができると、大人の食の嗜好に繋がるような変化を日常的に欲するようになるでしょう。

保護者は子供に無理をさせない線引きをするために、食事を一緒に楽しみつつ、以前よりも上手に食べられるようになったことを褒めながら、子供の食への意識付けを行ってください。

その支えがあれば、きっと食べられるものが増えるタイミングが訪れるはずです。