お腹の中にいる赤ちゃんの栄養も賄っていた妊娠中に引き続き、母乳育児をするママは、赤ちゃんが飲む母乳を生成するために、食べ物や飲み物に制限があります。

慣れない赤ちゃんのお世話に家事にと忙しい日々を送っていると、好きなものをたくさん食べて、ストレスを解消したいところですが、授乳中のママはそうもいきません。

ママが摂取した食べ物や飲み物が、そのまま赤ちゃんが飲む母乳に影響します。赤ちゃんに栄養たっぷりのおいしい母乳を飲ませてあげるために、授乳中のママは、摂取するものに気を付けなければいけません。

では、授乳中のママが食べてはいけないものは、具体的にどのようなものなのでしょうか。また、食べ物を食べるときには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。詳しくみていきましょう。

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授乳中のママが食べてはいけないもの!母乳に影響する禁止・NGの食べ物

赤ちゃんが飲む母乳を、より質のいいものにしたいというのは、母乳育児をするママの共通の願いです。母乳は、ママの食生活がそのまま反映されます。いい母乳を生成するためには、ママがきちんと栄養価の高い食べ物を摂取する必要があります。

栄養価の高い食べ物を摂取した方がいい反面、母乳を飲む赤ちゃんへの影響を考え、ママが摂取してはいけない食べ物もあります。授乳中のママが食べてはいけないものにはどのようなものがあるのでしょうか。

授乳中のママが食べてはいけないものは2つだけ

食べ物への制限が多いように感じる授乳中のママですが、本当に食べてはいけないものは、実は、それほどありません。

授乳中のママが絶対に口にしてはいけないとされるものは次の2つです。

  • アルコールを含む食べ物
  • 授乳中に服用してはいけない薬

授乳中のママが食べてはいけないのは、実は、この2つだけなんです。たったこれだけしかないのに、なぜ食べ物を制限されているように感じるのでしょうか。

多いのは食べるのを控えた方がいいもの

授乳中のママが食べ物を制限されているように感じるのは、「食べてはいけないもの」が多いからではありません。多いのは「食べるのを控えた方がいいもの」「食べ過ぎには注意が必要なもの」です。

大半の食べ物は、食べていけないわけではありません。しかし、食べ過ぎるとママの体や母乳に悪影響を及ぼす可能性があったり、場合によっては、少量の摂取でも母乳を飲んだ赤ちゃんに影響してしまうことがある食べ物はたくさんあります。

ママの体や母乳への悪影響が考えられる食べ物は、食べてはいけないわけではありませんが、できれば授乳中は摂取しない方がいいと言われています。そのため、授乳中のママは好きなものを好きなだけ食べることができず、制限されているように感じるのです。

「食べるのを控えた方がいいもの」や「食べ過ぎに注意が必要なもの」には次のようなものがあります。

  • カフェインを含む食べ物
  • 脂っこいもの
  • 甘いもの
  • 体を冷やす食べ物
  • 刺激物
  • 乳製品
  • お餅/もち米

ご覧のとおり、授乳中のママが控えた方がいい食べ物は、たくさんあります。こんなにたくさんのものを控えなければいけないと思うと、もう食べられるものがないのではないかと感じてしまいますよね。

これらの食べ物は、摂取量を制限する必要があるだけなので、食べることを禁じられているわけではありません。それぞれの食べ物を授乳中のママが摂取したときに、ママの体や母乳にどのような影響がでるかは、後半で詳しくお伝えします。自分の体調と授乳後の赤ちゃんの様子を見ながら、摂取量を調整していきましょう。

授乳中に食べてはいけない2つ、禁止・NGとされているその理由

授乳中のママが食べてはいけないとされている食べ物は「アルコールを含む食べ物」と「授乳中に摂取してはいけない薬」の2つだけです。

では、この2つの食べ物を食べてはいけない理由はどこにあるのでしょうか。ママの体や母乳、赤ちゃんへの影響について、詳しくみていきましょう。

アルコールを含む食べ物

アルコールというと、飲み物をイメージする人が多いと思いますが、食べ物にも含まれていることがあります。アルコールは、母乳に移行する割合が高いので、飲み物だけでなく食べ物からの摂取にも注意が必要です。

授乳中のママがアルコールを摂取すると、ママの血中のアルコール濃度とほぼ同じアルコール濃度の母乳が生成されます。アルコールを含んだ母乳を飲んだ赤ちゃんの体内にも当然、アルコールが取り込まれてしまいます。

肝機能がまだ発達していない赤ちゃんは、アルコールを分解することができません。アルコールが分解されないまま体内に残ってしまうと、赤ちゃんの発育や脳神経に影響を及ぼす可能性があります。また、アルコールの摂取量が多いと、急性アルコール中毒を引き起こし、命の危険にもつながることがあるので、十分に注意してください。

肝機能が未発達な赤ちゃんや子供にアルコールが悪影響を及ぼすことは、法律上、未成年がアルコールを摂取することを禁じられていることからも分かると思います。授乳中のママが成人であれば、法律上はアルコールを摂取しても問題はありませんが、赤ちゃんが摂取することにつながるということを意識しましょう。

授乳中に摂取してはいけない薬

食べ物とは少しニュアンスが異なりますが、授乳中のママが摂取してはいけないという点でいくと、授乳中に摂取してはいけないとされる薬も、注意が必要です。

授乳中のママが薬を服用すると、大半の薬が母乳へと移行すると言われています。ただし、その量が少量のことが多く、実際には、授乳中に服用しても問題ない薬も多くあります。

「母乳育児中のママは薬を飲んではいけない」ことが定説のようになっていますが、授乳中のママが必ずしも薬を飲むことができないわけではありませんので、どの薬を服用したらいいかは、お医者さんと相談して決めましょう。

授乳中のママの治療に適さないとされる薬には、次のものが挙げられます。

成分名 代表的な商品名 代表的な薬効分類
アミオダロン アンカロン 抗不整脈薬
コカイン コカイン 麻薬
ヨウ化ナトリウム(123I) ヨードカプセル-123 放射性ヨウ素
ヨウ化ナトリウム(131I) ヨウ化ナトリウムカプセル 放射性ヨウ素

授乳中に服用を避けるべきとされる薬は、表のとおりですが、これ以外の薬なら、授乳中でも服用できると言い切れるものではありません。授乳中は、自己判断での薬の服用は避け、お医者さんに授乳中である旨を伝えて、薬を処方してもらいましょう。

授乳中に「食べ過ぎには注意が必要な食べ物」とその理由

授乳中のママにはつらいところですが、授乳中には食べ過ぎに注意が必要な食べ物がたくさんあります。しかし、食べる量にさえ注意すれば、食べてはいけないわけではありません。

慣れない赤ちゃんのお世話と家事で忙しくしていると、ストレスもたまりやすくなります。ストレスや疲れがたまっているときに、好きな食べ物を我慢するのは、さらなるストレスの原因につながります。無理に我慢せず、好きな食べ物を少しずつ摂取することで、気分転換を図りましょう。

カフェインを含む食べ物

大人でも眠気覚ましとして飲むことがあるコーヒーや栄養ドリンクなどに多く含まれる「カフェイン」を含む食べ物は、摂取することを控えた方がいいでしょう。

授乳中のママがカフェインを摂取すると、摂取量の約1%が母乳に移行します。1%なので、量としてはそれほど多くありませんが、それでも、その母乳を飲んだ赤ちゃんの体内にカフェインが取り込まれてしまいます。

眠気覚ましとして使われることからも分かるとおり、カフェインには脳を興奮状態にする「覚醒作用」があります。カフェインが体内に取り込まれた赤ちゃんにも、カフェインの覚醒作用が働き、摂取量が多い場合には、不眠やぐずり、情緒が不安定になるなどの影響がでることがあります。

カフェインに敏感な赤ちゃんの場合、少量でも反応が出る可能性があるので、カフェイン摂取後の授乳のとき、赤ちゃんの様子がいつもと違うようであれば、カフェインの摂取量を減らすよう心がけてください。

カフェインを含む食べ物には次のようなものがあります。

  • チョコレート(チョコレートを使用したもの全般)
  • 眠気覚まし作用のあるガム
  • お菓子類(コーヒー味、ココア味、抹茶味など)
  • アイスクリーム(コーヒー味、抹茶味など)

カフェインは飲み物で摂取することが多い成分でもあります。コーヒーなどで、カフェインを摂取している場合には、食べ物での摂取は控えることをおすすめします。

脂っこいもの

脂肪分が多い食べ物を食べ過ぎると、血液がドロドロになってしまいます。母乳は、ママの血液から作られています。授乳中のママが脂っこいものを食べ過ぎると、ママの血液がドロドロになるのと同時に、母乳もドロドロした状態になってしまいます。

母乳がドロドロした状態になると、乳腺の詰まりを引き起こし、乳腺炎になる可能性があります。また、母乳の味にも影響するので、赤ちゃんが母乳を飲むことに抵抗を示すことがあります。

乳腺が詰まりやすい人や、赤ちゃんが母乳を飲むことを嫌がっている場合には、コロッケや天ぷら、フライなどの揚げ物のように脂っこい食事を避けた方がいいでしょう。

甘いもの

甘いものに含まれる糖分も、血液をドロドロにする作用があります。脂っこいものと同様に、ママの血液や母乳をドロドロした状態に導いてしまうので、注意が必要です。

特に菓子パンや洋菓子は、糖分だけでなく、バターや油などの脂肪分も多く使用されています。血液をドロドロにする要素が多く盛り込まれているので、摂取は控えることをおすすめします。

ただし、甘いもの好きな人に、甘い物を食べるな、というのは酷な話です。食べてはいけないわけではないので、自分の体の状態と、赤ちゃんの母乳の飲み具合を確認しながら、ストレスが溜まらない程度に摂取するとよいでしょう。

体を冷やす食べ物

サラダなどに使われる生野菜や、冷たく冷やした食べ物は、体を冷やしてしまいます。体が冷えると、血行が悪くなり、血液からできている母乳が出にくくなることがあります。

野菜はビタミンなど、授乳中に摂取した方がいい栄養素をたくさん含んでいる食材です。摂取はした方がいいので、生野菜ではなく加熱して温野菜として食べることをおすすめします。

また、夏野菜には、体を冷やす作用があります。夏野菜より冬野菜の摂取量を増やすとよいでしょう。

【体を冷やす作用のある夏野菜の例】

  • キュウリ
  • ナス
  • トマト
  • レタス
  • ほうれん草
【体を温める作用のある冬の野菜の例】

  • ニンジン
  • じゃがいも
  • 玉ねぎ
  • ゴボウ
  • 生姜
  • 長ネギ

刺激物

授乳中のママが、唐辛子や香辛料などが多く含まれる刺激物を食べると、母乳の味に影響すると言われています。

赤ちゃんの味覚にも個人差があるので、一概には言えませんが、刺激物を摂取したあとの授乳で、赤ちゃんが母乳を飲むのを嫌がる場合には、母乳の味に異変が起きている可能性があります。

また、赤ちゃんが嫌がるということは、その赤ちゃんはその刺激物の影響を受けた母乳の味が苦手ということになります。赤ちゃんが母乳を飲まないと、ママの乳腺は詰まりやすい状態になってしまいます。赤ちゃんが苦手な味の母乳にならない食生活をするよう心がけることが必要です。

食べるのに注意が必要な刺激物には、次のようなものがあります。

  • 香辛料が多く使われているカレー
  • 唐辛子が多く使われているキムチやマーボー豆腐
  • にんにくが多く使われている焼き肉や餃子

好きな人も多く、食卓に並ぶことの多いメニューですが、食べる頻度を減らすよう意識しましょう。

乳製品

「母乳」と同じ「乳」である「牛乳」は、栄養価も高く、母乳にもいいイメージがあるかもしれませんが、脂肪分も多いので、授乳中のママが摂取し過ぎると、乳腺が詰まりやすくなり、乳腺炎を引き起こすことがあるので、注意が必要です。

摂取し過ぎに注意が必要な乳製品には、次のようなものがあります。

  • チーズ
  • バター
  • 牛乳
  • 生クリーム
  • ヨーグルト

これらの食材を使用したものも、摂取のし過ぎに注意が必要です。ただし、乳製品は、栄養価も高く、授乳中に不足しがちなカルシウムも多く含まれています。摂取し過ぎない程度に食べることをおすすめします。

お餅/もち米

お餅やもち米を使った料理については、母乳にいいという説と、母乳に悪いという説の両方が存在します。それには次のような理由があります。

お餅やもち米は、白米よりも高カロリーな食べ物です。カロリーが高いので、少量でも高いエネルギーを摂取でき、母乳の分泌をよくする効果があります。

産後の疲れやストレスなどで食欲がなく、栄養不足に陥っているママは、母乳の出が悪くなる傾向にあります。そんなときは、手軽に食べることができるお餅を摂取することで、栄養を補完し、母乳も出るようになる可能性があります。

一方で、母乳の出が悪くない人や、食欲があり、通常の食事でカロリー摂取できている人にとって、お餅やもち米を使った料理は、カロリーの過剰摂取につながってしまいます。カロリーを摂取し過ぎることで、母乳が過剰に生成され、乳腺が詰まり、乳腺炎を引き起こしてしまうことがあります。

お餅やもち米については、ママ自身の体調と母乳の出具合によって、食べた方がいいケースと控えた方がいいケースに分かれます。乳腺が詰まりやすいと感じている人は、摂取することを控えた方がいいでしょう。

まとめ

母乳育児をしていると、授乳期間中は食べるものの制限が多いように感じます。しかし、実際には、授乳中に食べてはいけないものは、「アルコールが含まれている食べ物」と、「授乳中に摂取してはいけないとされる薬」だけです。

それ以外に食べ物については、摂取量さえ意識すれば、食べることが可能です。ただでさえ、慣れない育児でストレスを溜めやすい時期です。自分の好きな食べ物を我慢することで、ストレスを増加させると、ママにも赤ちゃんにも悪影響です。

ストレスが溜まらない食生活を送ることは、ママの体の状態をよくすることにつながります。我慢し過ぎず、食べ過ぎないことに注意することで、ママの体にも赤ちゃんの体にも優しい食生活を送りましょう。