妊娠中はへその緒を介して栄養や水分を補給していた赤ちゃんが、産まれてきた後は、母乳を介して栄養や水分を補給するようになります。
完全母乳で育児をする場合には、ママの母乳が赤ちゃんの栄養源のすべてです。そのため、授乳中のママは妊娠中から引き続きになりますが、食事や飲み物に気を遣わなければいけません。
また、赤ちゃんの母乳を生成するママは、ママの分の水分だけでなく、赤ちゃんの分の水分も補給する必要があります。出産前より多くの水分を補給しなくてはいけないので、どんな飲み物をどのくらい摂取するのかが重要になってきます。
少しでもいい母乳を赤ちゃんに届けるために、授乳中のママはどのような飲み物を摂取したらいいでしょうか。
母乳育児中の水分補給はどれくらい?!授乳中に水分不足にならない方法
前述したとおり、母乳育児中のママは、自分の水分だけでなく、母乳で水分補給をする赤ちゃんの分も水分を補給する必要があります。
授乳中のママは、具体的にはどのくらいの水分量を摂取すればいいのでしょうか。
1日に必要な水分量
季節や体調によって異なりますが、成人の場合、1日で約2~2.5ℓが、尿や便、汗、呼吸を通して体外へ排出されます。そのため、最低でも1日2ℓは水分を補給する必要があるとされています。
授乳中のママの場合、これにプラスして赤ちゃんが飲む母乳分の水分が必要となります。
赤ちゃんは、月齢などで個人差はありますが、生後4ヵ月頃から1日1ℓ程度の母乳を飲みます。成人に必要な2ℓに母乳の1ℓを加えると、単純計算で3ℓの水分が必要ということになります。
1日に3ℓの水を飲まなければいけないと考えると、想像するだけでおなかがタプタプになってしまいそうですが、この水分は、すべてを飲み物で摂取する必要はありません。
ごはんや味噌汁など、食事から摂取する分も含まれます。意識的な水分補給が必要なことには変わりありませんが、深刻に考え過ぎないようにしましょう。
飲む回数を増やす
水分補給は必要ですが、一度にがぶ飲みしたのでは、せっかくの水分も補給した意味がありません。
人間の体は、尿量や尿の濃度を調節することで、全身の体液の濃度を一定に保とうとします。一度に大量の水を摂取すると、急に増えた水分は、そのまま尿として体外に排出されます。そのため、体内に吸収されることがないので、効果的な水分補給にはならないのです。
では、摂取した水分を体のなかで有効活用するにはどうしたらいいでしょうか。
それは一度に飲む量を減らし、飲む回数を増やすことで解決できます。一度に摂取する量はコップ1杯程度に抑えて、1日10回程度摂取すれば、目標の水分量は達成できます。
水分補給が苦にならない人は問題ありませんが、もし水分補給することを苦に感じる場合には、飲むタイミングを決めておくことをおすすめします。
1度に摂取する量はそれほど多くないので、水分をとることを義務化した生活を送ることで、水分を多くとることに慣れていくことができるでしょう。
【水を飲むのにおすすめのタイミング】
- 朝起きたとき
- 朝昼晩の食事の前と後
- おやつの時間(おやつを食べなくても食事と食事の中間の時間を目安に)
- お風呂に入る前と後
- 就寝前
冷たい飲み物より温かい飲み物
冷たい飲み物は、胃腸を冷やしてしまいます。胃腸が冷えると、代謝が悪くなり、水分の排出機能がうまく働きません。その結果、むくみや体の冷えを招きます。
母乳はママの血液で作られています。代謝が悪くなり、体が冷えることで、ママの血行が悪くなると、母乳の生成にも影響します。
代謝をあげ、いい母乳を作るためにも、冷たい飲み物での水分摂取は控え、常温または温かい飲み物を摂取するよう心がけましょう。
とはいえ、暑い夏などには、冷たい飲み物を飲みたくなるときもあります。
ただでさえ、授乳中のママには制限事項がたくさんあります。冷たいものまで無理に我慢すると、ストレスが溜まる原因になります。
冷たいものが飲みたいときは、がぶ飲みにはならないように、コップ1杯程度の水分を補給しましょう。常に冷たいものばかりを摂取することを避けるよう意識していれば、問題ありません。
注意
ただし、もともと冷え性の人は、さらに代謝が悪くなってしまうので、冷たい飲み物の摂取は控えた方がいいでしょう。
母乳にいい飲み物!授乳中にオススメの水分補給はこれ
水分補給が大切な母乳育児中のママにおすすめの飲み物として、次のような飲み物があげられます。
- ルイボスティー
- 麦茶
- 青汁
- ローズヒップティー
それぞれの飲み物が母乳育児中におすすめの理由を詳しくみていきましょう。
ルイボスティー
温かくしても冷たくしてもおいしく飲むことができるルイボスティーは、ノンカロリーかつノンカフェインなので、母乳育児中のママだけでなく、妊娠中にもおすすめの飲み物です。
ルイボスティーは、原産地である南アフリカで、「不老長寿のお茶」と呼ばれるほど体にいい健康茶です。
授乳中に不足しがちなカルシウムやマグネシウム、体内でエネルギ―を発生させ、体温を上昇させる作用のある亜鉛といったミネラルが豊富に含まれています。貧血の予防に効果のある鉄分も含まれているので、貧血や冷え性などの症状でお悩みの方は特に、積極的に摂取することをおすすめします。
味は紅茶に似ています。渋みがなく、後味もスッキリと飲みやすいので、無理なく水分摂取ができます。コンビニやスーパーでティーパックがお手頃な価格で販売されているので、入手しやすいことも魅力のひとつです。
麦茶
ノンカフェイン飲料として、よく取り上げられる飲み物が麦茶です。
麦茶にもミネラルが豊富に含まれていて、摂取することで、血流を改善したり、血行をよくする効果があります。血行がよくなることで、乳腺が詰まりづらくなり、血液から作られる母乳の出もよくなります。
離乳食が始まるころになると、赤ちゃんも麦茶を飲むことができるようになります。ママの水分と赤ちゃんの水分を同時に準備できるので、忙しい育児の時間をわざわざ割く必要がなくなります。
注意
ただ、麦茶に含まれる大麦には、体を冷やす作用があります。冷やして飲むことが多い麦茶ですが、一気に大量に摂取することは控え、常温か温かいものを少しずつ摂取するように心がけましょう。
青汁
母乳育児中のママは、いつも以上に栄養をとる必要がありますが、慣れない育児に忙しく、ついつい自分の食事をおろそかにしてしまう傾向にあります。
そんなとき、強い味方となってくれるのが青汁です。
青汁には野菜に含まれているビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素が豊富に含まれていることはよく知られています。
しかし、青汁が母乳にいいとされる理由はこれだけではありません。
青汁の原材料として使われる明日葉やケール、大麦若葉には、授乳に必要とする葉酸、カルシウム、亜鉛、鉄分が豊富に含まれています。
栄養が偏りがちなママの食生活をサポートするだけでなく、赤ちゃんにも栄養価の高い母乳を提供することができる青汁は、まさに母乳にいい飲み物といえるでしょう。
ただし、注意する点もあります。
市販されている青汁のなかには、飲みやすくするために糖分を多く含んでいるものや、カフェインが含まれているものがあります。野菜嫌いの人にとって、甘味料で味を調整していない青汁は飲みにくく、積極的に摂取しづらい飲み物です。
私も野菜が好きではないので、純粋な青汁には、なかなか手を伸ばす勇気がでませんでした。でも、せっかくいい母乳を作ろうとしているときに、余分なものまで摂取してしまうと、その努力も水の泡です。
赤ちゃんのためと割り切り、糖分やカフェインを含まない無添加のものを選ぶようにしましょう。それでもやはり飲みにくいと感じる場合には、別の飲み物や食べ物で栄養を摂取することで対応できます。
青汁を飲まなきゃ、などと気負わないようにしましょう。
ローズヒップティー
ハーブティーの一種であるローズヒップティーには、ビタミンCが豊富に含まれています。その量は、ビタミンCが多く含まれているイメージのあるレモンの約20倍と言われています。
ビタミンCは、高い抗酸化作用があるので、ストレスが溜まると、過剰に生成される活性酸素の働きを抑制してくれます。
ストレスが溜まりやすい赤ちゃんの育児中には、ビタミンCが不足しがちです。ビタミンCは体内で生成することができない栄養素なので、飲み物や食べ物で積極的に摂取するようにしましょう。
ビタミンC以外にも、ローズヒップティーには、女性に不足しがちなカルシウムや鉄分、美肌効果のあるリコピンなど、女性に必要不可欠な栄養素が豊富に含まれています。
これらの栄養素を摂取することで、ホルモンバランスを整える効果を得ることができます。生活習慣が乱れがちな授乳期間中には、特におすすめの飲み物です。
母乳の出が悪いときに出やすくする飲み物!サラサラにしてよく出る水分補給
母乳育児中は、乳腺が詰まったり、母乳の出が悪くなったりすることがあります。こういった悩みを、食べ物や飲み物など、ママが摂取するもので改善できることもあります。
ママの体質もありますし、赤ちゃんの母乳を飲む量もそれぞれ異なるので、摂取するもので改善できるとは、一概には言えません。それでも、なにか試してみたいという人のために、改善する見込みがある飲み物を紹介しますので、参考にしてください。
母乳の出がよくなる飲み物には次のような飲み物があげられます。
- ゴボウ茶
- たんぽぽコーヒー
- ラズベリーリーフティー
ゴボウ茶
ゴボウは、食物繊維が豊富な食材として有名です。水分不足になると便秘になりがちですが、水分を食物繊維と一緒に摂取できるゴボウ茶は、便秘になりやすいママには特におすすめです。
また、ゴボウには、血液をサラサラにする効果があるので、乳腺が詰まりにくくなり、乳腺炎を事前に予防してくれます。血液の循環がよくなると、体の代謝もあがるので、冷え性の解消にもつながります。
私の娘は、生後1~2ヵ月頃までほとんどおっぱいを吸ってくれませんでした。搾乳した母乳は飲んでいたので、哺乳瓶に慣れてしまい、おっぱいからだと飲みづらく感じていたようです。
そのことを助産師さんに相談したところ、一番に勧められたのがゴボウ茶でした。ゴボウ茶を飲むことで、母乳もサラサラした飲みやすい状態にすることで、少しでもおっぱいから直接母乳を飲んでもらえるようにしよう、というアドバイスを受けました。
おっぱいをうまく飲めない原因は娘が乳頭混乱(※後述します。)を起こしていることだったのですが、それを解決するためにも、母乳を飲みやすく、また出がよくしておくことが重要だとのことでした。
ゴボウ茶を飲んだり、食生活を改善したりすることで、血液循環をよくすることを意識したとこで、娘も少しずつ、おっぱいから母乳を飲んでくれるようになり、生後3ヵ月になって、ようやく哺乳瓶を卒業することができました。
ゴボウの風味が強いので、ゴボウ自体が苦手な人にとっては、少し飲みにくいかもしれません。まずは少量を購入して、薄めに入れたもので試してみましょう。
【※乳頭混乱とは】
母乳とミルクの混合栄養で育児をしていると、赤ちゃんが哺乳瓶の乳首に慣れてしまい、ママのおっぱいから母乳を飲むことを拒否することを「乳頭混乱」といいます。
特に、赤ちゃんが飲みやすい形状をしている哺乳瓶を使用している場合に、この現状が起きやすいです。
乳頭混乱を解消するには、次のような対処法があります。すべて私が実践していたものです。お悩みの方はぜひお試しください。
- いい母乳が出るよう血液の状態を整える意識をする
- ミルクをあげる前に、一度はおっぱいを咥えさせる
- 哺乳瓶の乳首をママの乳首に近いものに変える
- ママの乳頭にニップルフォーマーを装着して、乳頭を飲みやすい形に矯正する
これを繰り返すことで、少しずつ赤ちゃんがおっぱいから飲むことに慣れてくれます。
注意
ただし、これらのことを試しても改善が見られない場合には、哺乳瓶で育児する方針に切り替えることをおすすめします。
たんぽぽコーヒー
たんぽぽコーヒーは、たんぽぽの根っこからで作られた飲み物で、「たんぽぽ茶」と呼ばれることもあります。
風味がコーヒーに似ているため、たんぽぽコーヒーと呼ばれていますが、ノンカフェインで、コーヒーほど苦味がないので、飲みやすいのが特徴です。
たんぽぽには、ビタミンやミネラル、鉄分などが多く含まれているので、血液循環を促進させるので、血液がサラサラにしてくれます。
血液から作られる母乳がサラサラになることで、乳腺を詰まらせることがなくなり、乳腺炎を予防します。また、血行が良くなることで、冷えを改善してくれる効果もあります。
コーヒーを愛飲している人でしたら、たんぽぽ茶に置き換えることをおすすめします。カフェインを控えることもでき、母乳の出もよくなるという、母乳育児中のママには一石二鳥の飲み物です。
ラズベリーリーフティー
ノンカフェインのハーブティーは、妊娠中から授乳中まで、よくおすすめされる飲み物ですが、なかでもラズベリーリーフティーは、授乳期間中におすすめの飲み物です。
ラズベリーリーフは、ビタミンや鉄、ミネラルを多く含んでいるため、母乳の栄養価を高め、分泌を良くする効果があります。産後の回復を早める効果も期待できるので、産後疲れに悩むママにもおすすめできます。
また、ラズベリーリーフには、粘膜の炎症を抑える効果があります。
風邪をひいて喉に痛みを感じているときなどに、ラズベリーリーフティーでうがいをすることで、痛みが緩和されます。授乳中は市販の風邪薬を飲むことができないので、こういった方法で少しでも症状が和らげることができるのはうれしいですね。
授乳中は避けるべき、つまり・乳腺炎など母乳によくない・ダメな飲み物!
授乳期間中は、妊娠中と同様、摂取することを避けた方がいい飲み物があります。授乳中のママが摂取を避けた方がいい飲み物には次のようなものがあげられます。
- アルコール飲料
- カフェインを含む飲料
- 清涼飲料水
- 牛乳などの乳製品
摂取を避けた方がいい理由はそれぞれ異なるので、確認していきましょう。
アルコール飲料
授乳中のママがアルコールを摂取すると、ママの血中のアルコール濃度と同じ濃度の母乳が生成されます。
アルコールを含んだ母乳を飲んだ赤ちゃんの体内には、当然アルコールが取り込まれてしまいます。
赤ちゃんは肝臓機能がまだ未発達のため、アルコールを分解することができません。分解されないままのアルコールが体内に残ってしまうと、赤ちゃんの発育に影響がでることがあります。
摂取するのを避けた方がいいというよりは、赤ちゃんのためにも摂取しないようにしましょう。
注意
アルコール飲料に似たノンアルコール飲料なら問題ないように感じるかもしれませんが、ノンアルコール飲料には1%未満のアルコールが含まれていることがほとんどです。
少量の摂取でも、アルコールは母乳には取り込まれてしまうので、どうしても摂取したい場合は「アルコール0%」のものを探しましょう。
カフェインを含む飲料
カフェインには、脳を刺激して興奮される覚醒作用があります。よく眠気覚ましとして飲むコーヒーなどの飲み物に入っているのは、この覚醒作用を求めるためです。
カフェインは、授乳中のママが摂取すると、その約1%が母乳に取り込まれるといわれています。アルコールよりは、母乳に取り込まれる量が少ないですが、まだ体が未熟な赤ちゃんに、カフェインの覚醒作用が働くことで、不眠やぐずりなどを引き起こすことがあります。
カフェインには、ストレスを抑える効果もあるので、1日1~2杯程度のコーヒーや緑茶であれば、摂取しても問題ありませんが、過剰摂取には気をつけたいところです。
可能であれば、カフェインが含まれていないノンカフェインコーヒーや麦茶などの飲み物で代用しましょう。
【カフェインを含む飲料】
- コーヒー
- 緑茶
- 紅茶
- ウーロン茶
- 栄養ドリンク
- コーラ
- ココア
清涼飲料水
運動のあとなどに飲まれることが多く、水分補給に適しているイメージのある清涼飲料水ですが、糖分が多く含まれているので、授乳中の水分補給には向いていません。
糖分を摂取しすぎると、血液がドロドロになり、血行も悪くなります。体の代謝が悪くなり、乳腺も詰まりやすくなります。母乳の出が悪くなったり、赤ちゃんが飲みにくい状態になることがあるので注意が必要です。
清涼飲料水は、冷たくして飲みたい飲み物であることも、授乳中のママにおすすめできない理由のひとつです。
前述したとおり、冷たい飲み物を摂取すると、体を冷やしてしまいます。冷えた清涼飲料水は、ついついぐびぐびと飲んでしまいがちですが、体の代謝をあげて、母乳がでやすい状態にするには温かい飲み物がおすすめです。温めては飲みにくい清涼飲料水は控えた方がいいでしょう。
注意
また、清涼飲料水のなかには、1%未満ではありますが、アルコールが含まれていることがあります。どうしても飲みたい場合には、成分表示をチェックして、アルコールが含まれていないことを確認してから摂取しましょう。
牛乳
牛乳はカルシウムも摂取でき、健康にいいイメージから授乳中も積極的に摂取しがちな飲み物ですが、飲みすぎには注意が必要です。
牛乳には、脂分が多く含まれており、脂分の摂取しすぎは、乳腺の詰まりの原因となります。適度な摂取には問題ありませんが、乳腺が詰まりやすい人は避けた方がいいでしょう。
脂分の少ない低脂肪乳や、豆乳であれば、乳腺の詰まりには影響しません。日常的に牛乳をよく飲んでいる人は、低脂肪乳や豆乳で代用することを検討してみてください。
まとめ
母乳育児中には食事や飲み物も制限が多く、ストレスを感じてしまうかもしれません。水分補給しなければいけないことを負担に感じてしまう人もいるでしょう。
合わないものを長く続けるのは、限界があります。少しでもストレスを溜めないようにするためにも、自分に合った飲み物をみつけて、おいしく水分哺乳することを意識してみてください。
また、母乳の状態に合わせて、様々な飲み物を試してください。きっとあなたに合う飲み物がみつかるはずです。
今回、紹介した飲み物は、母乳にいいだけでなく、ママの体を健康にすることにもつながるものばかりです。授乳期間が終わっても継続的に摂取することをおすすめします。