母乳育児をしていると、授乳期間中は食べ物や飲み物が制限されることが多くあります。

甘いケーキも、授乳中に控えた方がいいといわれる食べ物のひとつです。糖分が多いケーキが母乳によくなさそうなことは、うすうす感づいている人がほとんどです。ただ、それを分かったうえでも、どうしてもケーキが食べたくなることもありますよね。特に甘党の人に、ケーキを授乳期間中ずっと我慢しろというのは、酷な話です。

そもそも授乳中は、本当にケーキを食べてはいけないのでしょうか。それでもどうしても食べたいときには、その食べたい気持ちとどう向き合ったらいいのでしょうか。大の甘党な私が、2人の子どもの母乳育児をしていたときの経験も交えて、授乳期間中のケーキとの向き合い方をお伝えします。

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授乳中はケーキを絶対に食べてはいけない?

授乳中のママはケーキを食べてはいけないといわれることがよくあります。糖分が多いから、控えた方がよさそうなことはなんとなく理解できますが、少量の摂取でも何かに影響が出てしまうのでしょうか。それとも、少しなら食べても問題ないのでしょうか。

食べてはいけないわけではありません

結論から言うと、授乳期間中に摂取してはいけないアルコール飲料などと違い、ケーキを食べてはいけないというわけではありません。

甘党の人にとって、甘いものを我慢し続けるのは、ストレスの元となります。慣れない育児で、ただでさえストレスのたまりやすい時期です。ケーキ1つで、少しでもストレスを緩和できるのであれば、我慢せずに食べ、ストレスレスな生活を送ることをおすすめします。

ただ、「食べても問題ありません」ではなく、「食べてはいけないというわけではありません」という回りくどい表現をしたのにはきちんと訳があります。

ケーキの種類にもよりますが、ケーキには大量の糖分が含まれていることがほとんどです。さらに、クリームが使われているケーキになると、そこに脂肪分も多く加わります。

糖分や脂肪分は、赤ちゃんが飲む母乳だけでなく、ママの体にも影響することがあります。影響の度合いについては、個人差があり、まったく影響が出ない人もいれば、少量の摂取で影響が出てしまう人もいます。

どんな影響があるかについて、詳しくは後述しますが、こういった影響を考慮すると、食べても問題がないとは言い切れないのが現状です。食べてみて、ママの体や赤ちゃんに影響が出ていると感じた場合には、摂取を控えた方がいいでしょう。

授乳中にケーキが食べたくなる理由

ケーキなどの甘いものを控えた方がいいといわれる一方で、授乳中のママは、ケーキを食べたいという衝動にかられることがあります。それにはこんな理由があります。

授乳中のママは、慣れない育児や家事で忙しいうえに母乳でカロリーを消費するので、常に体が疲れています。また、次のようなことで強い育児ストレスを抱えがちです。

  • 赤ちゃんの要求していることが分からないことへの苛立ち
  • 夜泣きや授乳の対応による睡眠不足
  • 自分の自由時間を確保できないことへの不満
  • 外出を制限されることへの閉塞感
  • 産後のホルモンバランスの変化

特に甘党の人は、甘いものを食べることで、こういったストレスを解消したり、体力を回復しようとしたりしているので、甘いものを制限されることで、さらにストレスが増大してしまいます。

こういったストレスを慢性的に感じ続けていると、自律神経のバランスが乱れ、血糖値が下がってしまったり、食欲をコントロールする食欲中枢が機能しなくなったりします。

血糖値が下がった体は、甘いものを欲するようになります。その欲望に従って、ケーキを食べて、ストレスが解消すればいいのですが、食欲中枢もうまく機能しなくなっていると、やっと甘いものを食べられたという反動から、食欲が止まらなくなり、ついつい甘い物を食べ過ぎてしまうことにつながります。

授乳中のママがケーキなどの甘いものを欲するのは、ストレスが溜まり始めている合図でもあります。甘いものを食べること以外で、ストレスを解消できるものをみつけることをおすすめします。

授乳中のケーキが赤ちゃんの体に及ぼす影響

糖分や脂肪分が多いケーキを食べると、赤ちゃんの母乳やママの体に影響があると前述しましたが、授乳中のママがケーキを食べると、赤ちゃんにはどのような影響を及ぼすのでしょうか。

具体的には、次のような影響が考えられます。

  • 母乳がおいしくない
  • 母乳が飲みにくい
  • 便秘になりやすくなる

具体的にはどんなことが起こるのか、ひとつずつ紹介していきます。

母乳がおいしくない

母乳はママの血液から作られます。ママの血液は、ママが食べたり飲んだりしたものから作られるので、ママが摂取したものが、そのまま反映されます。そのため、ママが食べたものによって、母乳の成分も変わり、もちろん味にも変化をもたらします。

ママが脂っこいものや甘いものを多く摂取していると、母乳はしょっぱくなったり、あまったるくなったりします。赤ちゃんは味覚が敏感です。少しの味の変化でも嫌がって泣き出す赤ちゃんもいます。

空腹のはずなのに、授乳を拒否する場合には、母乳の味が変わって、赤ちゃんがおいしくないと感じている可能性があります。そのときは、授乳の前に摂取した食べ物を振り返ってみましょう。

糖分や脂肪分が多いものを摂取していませんでしたか?赤ちゃんによって、苦手とする味は違います。甘いケーキを食べたあとに、授乳を拒否する場合には、糖分が多い母乳を嫌がっている証拠です。この場合には、甘いケーキを食べるのは控えた方がいいでしょう。

母乳が飲みにくい

授乳中のママが甘いものを食べ過ぎると、血液がドロドロになるのと同様に、母乳もドロドロすることがあります。液状の母乳を飲みなれている赤ちゃんにとって、シェイクのようにドロドロした母乳は、飲みにくく感じてしまいます。

吸う力がまだまだ弱い赤ちゃんは、ドロドロした母乳を吸うことに疲れ、お腹が満たされないうちに、母乳を飲むことを止めてしまいます。飲みたいのに飲めない歯がゆさから、機嫌が悪い状態が続きかねないので、甘いものの食べ過ぎには充分注意しましょう。

便秘になりやすくなる

ママが甘いものを食べ過ぎて、ドロドロした母乳になった結果、母乳をうまく飲めなかった赤ちゃんは、水分不足に陥ってしまいます。

母乳育児をしている赤ちゃんは、栄養も水分もママの母乳で摂取しています。母乳から摂取するはずだった水分が不足することで、便秘になったり、お腹にガスがたまってしまったりします。

甘いものを食べたい気持ちは充分すぎるほど分かりますが、母乳をうまく飲めない赤ちゃんが泣き続けることは、ママの育児ストレスにもつながります。赤ちゃんが飲みやすい母乳を供給することが、赤ちゃんの健康につながるということを忘れないでください。

授乳中のケーキがママの体に及ぼす悪影響

次に、授乳中のママがケーキを食べたとき、ママ自身に及ぼす悪影響についてみていきましょう。ママ自身の体には次のような影響が考えられます。

  • 乳腺炎になりやすくなる
  • ビタミンB1欠乏症になる可能性がある
  • 虫歯になりやすくなる
  • 生活習慣病の元となる

具体的には、どのような状態に陥るのか、詳しく紹介していきます。

乳腺炎になりやすくなる

授乳中のママが、糖分や脂分を採り過ぎると、母乳がドロドロした状態になります。ドロドロした母乳は、乳腺に詰まりやすく、乳腺炎などのトラブルの引き起こす可能性があります。

乳腺炎は、乳腺が詰まって炎症を起こし、痛みを強く感じたり、発熱したりする病気です。母乳はどんどん作られるのに、乳腺が詰まっているので作られた母乳が外に出ることができず、乳房が腫れたり、しこりのようなものができたりします。症状が重い場合には発熱を伴い、日常生活が困難な状態になります。

母乳育児をしているママの2~3割が乳腺炎を経験すると言われていますが、できればかかりたくない病気です。未然に防ぐためにも、糖分や脂分の多いケーキの食べ過ぎには注意が必要です。

ビタミンB1欠乏症になる可能性がある

甘いものを食べたあと、体内で糖質を分解するためには、ビタミンB1が必要となります。ケーキなどを摂取して、糖分を採り過ぎると、分解しなければならない糖質に対して、ビタミンB1が不足した状態となり、これが、ビタミンB1欠乏症を引き起こす原因となります。

ビタミンB1欠乏症は、その名のとおり、ビタミンB1が足りない状態のことを指します。ビタミンB1欠乏症には「脚気」「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」の2種類があります。

■脚気
抹消神経に影響がでます。具体的な症状としては、全身の倦怠感や手足のむくみ、しびれ、動悸、食欲不振などがあげられます。重篤化すると、筋力低下や心不全を引き起こすことがあります。
■ウェルニッケ・コルサコフ症候群
中枢神経に影響がでます。具体的には、歩行困難や眼球運動の麻痺といった症状があります。病気が進行して、慢性化した場合には、記憶力の低下や健忘症、作話といった精神疾患が現れることもあります。

どちらのビタミンB1欠乏症も、神経に関わる重度の病気です。糖分の採り過ぎには充分注意するとともに、ビタミンB1を摂取することも意識することが重要です。ビタミンB1を多く含む食材には次のようなものがあります。

【ビタミンB1を多く含む食材】

  • 豚肉
  • うなぎ
  • ごま
  • 落花生

虫歯になりやすくなる

授乳中のママは、虫歯になりやすい傾向にあります。その理由としては次のようなものがあげられます。

■忙しくて歯磨きが後回し
授乳期間中のママは、まだ慣れない育児や家事に追われる日々を送っているので、自分の歯磨きが後回しになったり、おろそかになったりしがちです。きちんと歯磨きをしないことで、虫歯だけでなく、歯周炎などの口内トラブルを招くこともあります。
■唾液の量が減る
育児ストレスから、自律神経のバランスが乱れると、唾液が出にくくなります。唾液には、口内を清潔に保つ作用があり、初期虫歯を修復する働きもしてくれます。唾液の量が減ることで、口内環境が悪化する恐れがあります。こんなところにもストレスの影響がでてきます。
■食事の回数が増える(間食が増える)
食事中に赤ちゃんが泣き出したりすると、食べかけでも中断せざるをえなかったりすることがしばしばあります。食事の回数が小分けになってしまったりするうえに、授乳中はとにかくお腹が空きます。食事だけでなく、間食の回数も増えます。食事や間食の回数が増えることで、食べ物を口にしていない時間が減り、口内は虫歯のできやすい環境が整ってしまいます。

このように、授乳中のママの口内は、虫歯ができやすい条件がそろっています。その状態で、甘いケーキを食べたらどうなるかは、もう想像がつきますよね。甘いものを食べた後は特に、念入りな歯磨きに心がけましょう。

生活習慣病の元となる

これは、授乳中のママに特化したことではありませんが、甘いものを食べ過ぎると、糖尿病や高血圧といった生活習慣病にかかりやすくなります。また、生活習慣病にまでいたらなくても、妊娠中に増加した体重が元に戻らなかったり、産後太りにつながったりします。

赤ちゃんを母乳で育てるという重要な役割を担っているママが、病気で倒れるわけにはいきません。健康を損なうほど、糖分を採り過ぎないように気をつけましょう。

授乳中にケーキの代わりにおすすめのスイーツ

甘いもののなかでも、とりわけケーキが食べたい気分のときがあるのは分かります。

ただ、ケーキ以外のものでも気分を変えることができそうでしたら、次のような食べ物で代用することをおすすめします。授乳中のママにも母乳を飲む赤ちゃんにも、影響を最小限に食い止めることができます。

フルーツ

フルーツにはビタミンやミネラルといった栄養が豊富に含まれているので、授乳中のママにはおすすめの食べ物です。切ったり、皮を剥いたりするだけで、手軽に食べられることも育児や家事で忙しいママにおすすめする理由のひとつです。

ただし、ヘルシーなイメージのあるフルーツにも、糖質が多く含まれているものがあり、食べ過ぎると乳腺炎を引き起こす原因となります。食べ過ぎには注意が必要です。

【糖質を多く含むフルーツの例】

  • バナナ
  • ブドウ
  • さくらんぼ
  • リンゴ

これらのフルーツは食べ過ぎないように注意しましょう。

【糖質が少ないフルーツの例】

  • ラズベリー
  • イチゴ
  • あんず
  • パパイヤ

これらのフルーツは、授乳中でも安心して食べることができます。

和菓子

同じ甘味であれば、ケーキなどの洋菓子より和菓子がおすすめです。

和菓子は、洋菓子と比べて、バターや油脂が使われていることが少なく低カロリーです。また、洋菓子で使われることの多いカフェインを含むチョコレートやコーヒーといった材料を使用することが少ないことも、授乳中のママにとっては重要なポイントです。

和菓子のなかでも、「あんこ」が使われているものは、授乳中のママの強い味方となります。

あんこの原材料である「小豆」には含まれるサニポンという成分には、体の血行を良くし、血液をさらさらにしてくれる働きがあります。血液がサラサラになることで、母乳の分泌を促してくれるので、甘いものを食べる罪悪感を少し軽減してくれるでしょう。

ゼリー・寒天

ゼラチンや寒天でできたゼリーは、脂質が少ないので、母乳のトラブルが起こりにくい甘味です。

市販のものでもかまいませんが、簡単に手作りすることができるのも魅力です。手作りする際には、糖分を控えめに作りましょう。フルーツをいれたり、黒豆をいれたりすることで、様々なアレンジもできます。

特に、寒天は食物繊維を豊富に含んでいるので、腸内環境を整えたり、便通をよくしてくれたりする働きがあります。規則正しい生活を送ることが難しく、便秘などになりやすい授乳中のママにはおすすめです。産後のダイエットにも効果があります。

それでもどうしても!授乳中に思い切ってケーキを食べるときに気をつけたい注意点

授乳中のママがケーキを食べることの悪影響も、代用できる食べ物があることも理解したうえで、それでも、どうしてもケーキを食べたいと感じたときには、思い切ってケーキを食べましょう。そのときに注意する点を次にまとめています。

食べてみて分かることもある

思い切ってケーキを食べてみることで、初めて分かることがあるのも事実です。乳腺炎になるかどうかや、赤ちゃんが好む母乳の味は、ママや赤ちゃんの個人差があるので、一定の基準を示すことができません。

生クリームたっぷりのケーキを食べても乳腺炎にならないママもいれば、たった一口のケーキで乳腺が詰まってしまうママもいます。赤ちゃんも同様です。母乳の味に敏感で、少しでも味が違うと拒否反応を示す赤ちゃんもいれば、ママが何を食べようと意に介さない赤ちゃんもいます。

どんなケーキをどのくらい食べると乳腺炎になるのか、また、赤ちゃんが母乳を嫌がるようになるのかは、ケーキを食べて試してみないことには分からないのです。

ただ、この実験のためにわざわざ乳腺炎になるリスクを冒す必要はありません。乳腺炎にかからないに越したことはないので、我慢できるのであれば、甘いケーキは我慢して、他の甘味で代用しましょう。

ケーキを選ぶときの注意点

授乳中のママが、ケーキを食べる際には、次のような点に注意して選びましょう。

■アルコールを含んでいないものにする
授乳中のママがアルコールを摂取すると、ママの血液と同じ濃度のアルコールが母乳にも移行します。ケーキには、風味を出すために洋酒が使用されていることがあります。アルコールを含んだ母乳は、赤ちゃんの不眠やぐずりにつながることがあります。アルコールは含んでいないものを選びましょう。
■カフェインを含んでいないものにする
カフェインも、ママが摂取した量の1%ではありますが、母乳に移行します。カフェインもアルコールと同様、赤ちゃんの不眠やぐずりにつながる恐れがあります。チョコレートやココアにはカフェインが含まれています。甘いチョコレートケーキなどは控えた方がいいでしょう。
■クリームたっぷりのケーキは避ける
クリームなどの乳製品は、脂質が多く含まれています。クリームたっぷりのケーキは、脂質、糖質ともに過剰摂取となる恐れがあります。血液がドロドロになり、乳腺を詰まらせる原因となる可能性がありますので、避けることをおすすめします。

制限事項が多く、ケーキを選ぶ段階で億劫に感じてしまいそうですね。このような制限事項を理解したうえでも、ケーキを食べたい人におすすめなのが「手作りケーキ」です。

手作りであれば、糖質や脂質も自分で調整できるので、好みの味に仕上げることができます。また、自分で材料を測って加えることで、「こんなに砂糖が入っているのか…」「クリーム多すぎかな?」といった甘いものを食べる罪悪感と向き合うことができます。自分のなかでの妥協点をみつけ、お好みのケーキを作ってみましょう。

赤ちゃんが母乳を拒否したら要注意

ケーキを食べたあとの授乳の際に、赤ちゃんに異変があったら要注意です。母乳を受け付けなかったり、飲みが悪かったりした場合には、母乳の味に変化をもたらしている証拠です。また、その変化を赤ちゃんが受け入れていないことを示しています。

せっかく母乳育児をがんばっているのに、赤ちゃんが飲んでくれなくなっては、元も子もありません。赤ちゃんが好まないものの摂取は、授乳期間中だけでも控えましょう。

まとめ

授乳中のママは、慣れない育児や家事で、ただでさえストレスを感じやすいのに、食べ物や飲み物の制限も多く、さらに大きなストレスを感じてしまいがちです。

どうしても食べたいと感じたときには、一定の注意事項だけは厳守したうえで、少しずつ摂取してみましょう。摂取することで、ストレスを軽減できるのであれば、それも育児ストレスに対する有効な手段です。

ケーキを食べてみた結果、ママにも赤ちゃんにも影響がない場合もあります。一方で、どちらかも体調に異変があることもあります。ママと赤ちゃんの体質やケーキの種類にもよるので、一定の基準を示すことはできませんが、食べたことで影響が出た場合には、別の物で代用し、ケーキの摂取は控えるようにしましょう。