子供が2歳を迎えたということは、一般的にペラペラ喋るイメージがあるかもしれません。

でも、意思表示はしてくれるものの言葉が出てこないと心配になっている場合には、聴力検査を実施して難聴の有無と確認するべきです。

ここでは、言葉の発達が早い子と遅い子の違いや、家庭で実践できる言葉の育み方をピックアップ。

表現を真似することの大切さがわかるだけでも、保護者の言葉かけを変えられることを言語聴覚士が解説します。

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2歳児が喋らない・言葉が出ない!なかなか話さない原因として難聴を疑うワケ

2歳を迎えたのに喋らないという状況は、保護者にとっては心配が募ります。

一般的には「ワンワン、いたー」「パパ、バイバイ」といった、複数の言葉を繋げるまでに成長する子供が大多数。それがいつまでも意味のある言葉を発せずに成長するのは「何かおかしいのでは?」という気持ちになってしまいます。


喋らない原因は色々な要素が存在しますが、まずは難聴が無いかを確認するべき。

聞こえているということがわかるだけでも、原因を一つ解消することができます。生まれてすぐに聞こえにくさを調べる新生児聴覚スクリーニングを受けていたとしても、その後に難聴が生じることもあります。

言葉を覚えるために大切な「聞いて学ぶ」という力が備わっているかを見極めるには、2歳で聞こえの精密検査を実施することは、決して早すぎるわけではありません。

聞こえにくさが言葉の学習を低下させる

聞こえにくいという難聴が子供にあると、言葉に触れる一つの経路が弱くなってしまいます。

言葉が早い子だと、2歳では2語文を話すまでに成長します。誰もが「聞いて学ぶ」ことを繰り返し、日本語を話すまでに成長します。

小さいころから難聴があるとなれば、当然ながら言葉に触れる機会が少なかったり、もしくは不完全な形で学習する状況が生まれます。

難聴を改善するか、補聴器や人工内耳といった聞こえを補助する方法で聞かせてあげるなど、言葉を聞いて理解するという環境が作れなければ、話すことも難しくなってしまうのです。


難聴の程度は「音が聞こえたらボタンを押す」という純音聴力検査によって調べるのが一般的。

でも、2歳の子供には実施が難しいため、本人の反応を必要としない検査で聴力を推定したり、音に対する反射や探索する反応を見て調べる検査によって調べます。

それによって正常聴力20dB未満の聴力ではない場合には、難聴という診断が下ります。難聴といっても聴力によって程度が異なります。「dB(デシベル)」は音圧を指し、数字が小さいほどよく聞こえるという判断ができます。

・軽度難聴

保護者の言葉は聞こえるのですが、正常な聴力よりは聞こえにくさがある状態。

2歳で全く喋らないということは考えにくいのですが、言葉を誤って覚えたり、音に対する反応が鈍いと感じられることもあるでしょう。聴力は25dB以上40dB未満のことを指します。

・中等度難聴

保護者の言葉は全く聞こえないわけではありませんが、ささやき声などの小さなボリュームの声は届きません。

話し声が部分的に聞こえることで、不完全な言葉でしか触れることができないため、言葉の遅れが認められる可能性が高まります。聴力は40dB以上70dB未満のことを指します。

・高度難聴

保護者の話し声はなかなか聞こえず、大きな声で話してあげることで音に気付くことがある程度。

言葉を聞いて学ぶ機会が極めて少なくなってしまうため、2歳になっても全く話さないということが起こるケースも少なくありません。物音にも反応してくれないというエピソードも多く、聴力は70dB以上90dB未満のことを指します。

・重度難聴

聞こえにくさを改善しなければ、保護者の言葉を耳に届けることは難しくなります。

言葉を話すどころか、喃語が出ていないなどの準備段階の表現も2歳までに出ていないこともあるでしょう。泣いた時に声は出ますが、コミュニケーションに話し言葉を用いるのは難しい状況です。聴力は90dB以上のことを指します。


このように、難聴があることで言葉を話す前に、「聞いて学ぶ」という経路を使った経験が少なくなるため、2歳になっても喋らない時には、難聴を疑うことをおすすめしているのです。

調べてみて難聴ではなかったということがわかるだけでも、耳から聞いて学ぶ経路は大丈夫という安心が与えられるでしょう。

成長に伴って難聴が起こることもある

子供が難聴という状態は、生まれながらに生じているケースが考えられます。でも、成長に伴って難聴が起こることもあります。

おたふくかぜにかかってしまい、難聴が生じるという可能性もありますし、高熱が出る髄膜炎を患った後に聞こえなくなるということもあります。

慢性的に中耳炎を起こしていたり、常に鼻水が詰まった状態で生活しているという子供も、調べてみると難聴が起こっている場合があります。


生まれてすぐのときは大丈夫でも、音の反応に鈍いという印象があるようであれば、耳鼻科を受診する時期だと判断しましょう。

保護者の思い過ごしであればホッとするでしょうし、難聴があれば然るべき対応を取らなければなりません。聞こえにくさを改善することで、喋らない状態を変えることもできるはずです。

喋らない・言葉が遅い・言葉が少ない場合、2歳でも聴力を確認することが大切

普段の生活でテレビを見ていたり、こちらの指示はそれなりに通っているという感触があったとしても、2歳で言葉が出ていないのであれば、一度は聴力の確認をするべきです。

子供も見て学ぶという力が備わっているので、その場の雰囲気を察して上手に立ち振る舞うことは少なくありません。

難聴は目に見えない障害なので、周囲が気付きにくいということが起こります。

喋らないという問題を放置せず、ある程度の絞り込みを行っていくことで、どのような関わりをすると子供にプラスになるかがわかります。

少なくとも難聴が無かったという結論が出るだけでも、ほかの方法で言葉を入れてあげられるという考えに至ります。まずは子供の様子を確認しながら、聴力をチェックするべきかを判断しましょう。

1歳半健診で言葉の成長を漏れなくチェック

子供の成長を地方自治体がチェックする乳幼児健康診査。

中でも、1歳半健診と3歳児健診は、国で定められた乳幼児健康診査です。全ての子供が受けるよう、事前に自宅へお手紙や健診のための資料が届くでしょう。

2歳で喋らないという子供は、保護者が1歳半健診の段階で何らかの相談をしているケースが非常に多いです。つまり、前々から言葉の成長は気になっていたという状況で過ごしている家庭が多いことが伺えます。


1歳半健診では言葉の成長をチェックする項目がアンケートに含まれているはずです。

子供の様子を確認して回答するのであれば、その時点で専門的支援を受けるべきという判断に至ることが多いため、2歳になるまでに聴力のチェックを行う流れに向かう家庭が多いのが一般的。

でも、中には「男の子だからゆっくり成長しているため、2歳まで様子を見てみましょう」という指導を受けたり、「もう少し待てば出てきそうだから、あと半年くらい経過を追いましょう」ということも言われる可能性があります。

決して間違いではないのですが、難聴が根底にある場合にはこのような対応では不十分です。

「おかしい」と思った時は耳鼻科を受診する

難聴による言葉の遅れがある場合には、保護者が何らかのタイミングで「おかしい」と思うエピソードがあるはずです。

でも、乳幼児健康診査でも「様子を見ましょう」と言われていたり、周囲から「気のせいじゃない?」と言われると、保護者はその意見に流されてしまうことがあります。

ただし、難聴が見つかった後に保護者に「おかしいと思ったことはないか?」と伺うと、大抵は音への反応が悪いと感じた経験があります。


保護者は自分の子供を「健康である」という気持ちで育てています。乳幼児健康診査でも、「健康である」「良く育っている」という太鼓判を押してもらうために行っているはずです。

誰もそこで「難聴です」という判断を受けるために伺うわけではありません。でも、保護者が「おかしい」と思った感情は、本当に大丈夫なのか確認する時期とみなし、耳鼻科で聴力のチェックを行うのが良いでしょう。

2歳児は耳から聞いて理解することが言葉を学ぶ主軸

日本語だけでなく、どんな言葉も耳から聞いて学ぶのが基本です。バイリンガルに育てるという環境も、誰かが日本語と外国語を話していなければ、子供は習得に至りません。

でも、聞こえに問題が生じていると、聞いて学ぶ精度が落ちてしまったり、情報が抜けてしまうことが起こります。

言葉を学ぶためには「聞く」という経路をきちんと活用し、言葉の基礎を学ぶのが基本です。聴覚を使わず「見て学ぶ」ことも有効ですが、私たちが生まれてから言葉を話すようになるまでには、ほとんどが「聞いて理解する」という感覚を使っています。

視覚的なサインなども子供が言葉を覚えるスピードを育ててくれますが、喋らないという状況の改善には、話し言葉を育てなければいけません。そこが遅れてしまうと、どうしても言語発達のスピードが緩やかになるリスクが大きくなってしまいます。

耳で聞くことが言葉の発達のスピードに大きく影響する

言葉を習得するのは、理解から始まって話すことで実用性を高めます。でも、理解をするには耳で聞いて言葉に触れることが重要です。

産まれてから日本語を習得するには、特別なトレーニングを受けることなく、自然に獲得しているのはどうしてでしょうか?

それは、耳で聞いて言葉を理解し、自分で使うことで結びつきを強くしているからなのです。


言葉の発達に大きく影響する聞こえのスキル。難聴があって聞こえにくいという状態がそのままであれば、当然ながら聞いて理解するというところが障害されます。

圧倒的に情報を積み重ねる聴覚を使わずして言葉を育てるのは、サインや手話を使って意識的に目で見て入れてあげることをしなければならないため、普通の育児では言葉の発達スピードが遅くなってしまいます。

2歳で喋らないのであれば難聴の有無を確認して、聞いて学ぶ力に影響を及ぼしていないかを把握しながら、今後の関わり方を考えましょう。言葉を学ぶための力を知ることは、子供の育て方にも影響するのです。

難聴のある・なしに関わらず言葉を伸ばす方法

難聴があると言葉が遅れるというのは一般的な考え方ですが、全く言葉を学ばないわけではありません。

赤ちゃんのときに何気なく使っていたサインは、目で見て真似をする力が育つことで子供でも表現できます。音が聞こえていない状態でも、目で見て行動し、保護者と楽しい時間が共有できていれば、サインでの言葉の習得は可能です。

もっと言葉らしさを高めるのであれば、手話を使って表現するのも良いでしょう。子供と分かり合うために、使えるものは何でも使って伝え合うということに意識がおけるようになると、難聴のある・なしに関わらず言葉を伸ばすことができます。

試しに毎日の生活の中で、子供がわかりやすいサインを導入してみましょう。

・食事やおやつで使える「美味しい」のサイン

何かを食べたり飲んだりするときに、保護者は子供の表情を何気なく見ているはず。その際に目が合うタイミングが必ずあるはずです。

もしも子供と目が合ったのであれば、頬に手を当てて「美味しいねぇ」と表現してあげましょう。表情はにっこりとして、いかにも美味しいものを口に入れたという表現をしてみてください。

子供に難聴があったとしても、目で見て楽しい雰囲気を共有する力が働き、やがてサインを真似してくれるようになります。

・ハプニングで使える「ない」のサイン

2歳になる子供は「ある」「ない」の状況判断が上手になります。

コップのお茶が無くなると、保護者の元にコップを持ってきて、お茶が入っていないことを教えてくれます。そこに言葉の表出が無かったとしても、状況を教えてくれることは上手になっているはずです。

空のコップを一緒に眺め、「ないねぇ」と掌を立てて横にクルクル回旋させると、手話でいう「ない」の表現になります。

それを色々な場面で「ない」と子供が感じたタイミングで使ってみると、本人が「ない」という状況に直面した際に使ってくれるようになるでしょう。

・ワクワクを誘う「どっち」のサイン

子供に何かを呈示するときに、2つのものから1つを選択してもらうような演出をしてみましょう。

一方を右手に、もう一方を左手に持って、「どっち?」と聞いてみましょう。その際に、持っている手を交互に上下させ、どちらか一方を選ぶように仕向けてみてください。

2歳になっているということは、指さしで意思を表現することも上手になっているのが一般的。欲しいものを自分で選び、それを保護者からもらえるという喜びは、「どっち?」というサインをするだけでワクワクした雰囲気が漂います。

おやつを選んでもらったり、入浴剤を選んでもらうのも良いでしょう。選ぶ楽しみにサインを付けてあげると、わかる言葉も増えるでしょうし、表現できるサインも膨らみます。


このように、難聴のある・なしに関わらず、言葉の基礎を入れてあげることは可能です。

喋るということにこだわらず、まずは意思疎通を図る方法を確立させてあげることで、「伝えられない」というストレスを軽減させてあげることができます。

2歳で喋らない・言葉がでない場合は、難聴というリスクの有無を確認することが大切

2歳で喋らないという状況が難聴に起因するものであれば、補聴器を装用したり、人工内耳といって手術によって聞こえの神経を刺激するものを装用するように安協を整えるなど、聞こえにくさを小さくするための配慮が必要になるかもしれません。

でも、まずは難聴というリスクが子供に及んでいるかを確認することが大切です。

日本耳鼻咽喉科学会指定の精密検査を実施している医療機関に相談すると、2歳でも大よその聴力を調べる検査が受けられます。難聴の有無を調べるだけでも、言葉が出ない原因が明らかになることも珍しくありません。

保護者が「聞こえていないかもしれない」と感じるエピソードがある場合には、聴力のチェックはしてもらうべき。そのまま待っていても言葉の成長はどんどん遅れていくだけになってしまいます。

難聴があっても言葉の習得はできますし、話し言葉を学ぶことも可能です。でも、どれくらい聞こえているかを正確に把握しなければ、子供にわかりやすい方法で言葉を伝えてあげることはできないのです。