小さな子供がカタコトで一生懸命話している姿はとても微笑ましいものです。
しかし、1歳を過ぎ公園などで遊ぶようになって、他の子と比べた時に自分の子の言葉が遅いと気になりますよね。
「あの子はあんなにしゃべるのにうちの子は・・・」「どうしてうちの子だけいつまでも言葉が遅いのかしら」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子供が言葉を習得するスピードは個性や環境によって変わります。
多少言葉が遅くても心配いらない場合も多いですが、中には早期に対策が必要なこともあります。
言葉の習得には段階がある!
生まれたばかりの赤ちゃんは泣くことしかできませんね。それが1歳くらいになると「ワンワン」「マンマ」など簡単な単語を発するようになります。
いったい子供はどんな風に言葉を習得していくのでしょうか?
コップの中の水」理論
言葉を習得する段階を説明する際によく例えられるのが「コップの中の水」です。コップに水が溜まっていくように、子供は日々のコミュニケーションの中で膨大な量の言葉を頭の中に蓄積していきます。
コップが水でいっぱいになると次第にあふれ出しますね。それが、子供が言葉を発するタイミングです。
言葉が早い、遅いというのはつまり、コップの形や水の量が子供によって違うことが原因で起こるということです。
一見言葉が遅くても、実は人よりも多くの言葉を蓄積しているのかもしれません。
うちの子、言葉が遅い?と思ったら
1歳ごろ
この頃はまだ個人差や男女差が大きいので言葉が出てこないからといって大きな原因がない場合も多いです。1歳半なると乳幼児健康診査が行われ、発育状況や栄養状態、病気や障害の可能性を診察します。
言語能力についてもチェックしますが、その際に重視されるのは「言葉が出てくるか」ではなく「周りの人とコミュニケーションが取れるか」ということです。
言葉が出てこなくても身振り手振りで意思表示できていたり、「ボールちょうだい」などという文の意味を理解できていれば「しばらく様子を見ましょう」と言われることがほとんどです。
まったく反応する様子を見せない場合は聴力などの問題が心配されることもあります。
お母さんの方に不安がある場合は1歳半健診の時に保健師や医師に相談してみましょう。
2歳から3歳
2歳から3歳を過ぎても言葉が出てこない、一語くらいしか発しないという場合にはさまざまな原因が隠れていることがあります。
3歳半健診で指摘される場合もあり、この段階になると病気や障害の可能性も視野に入れつつ専門家と一緒に原因を考える必要があります。
言葉が遅れる5つの原因と対策やトレーニング
1.子供の個性
周りが話す言葉の意味を理解しているにもかかわらず自分からは言葉を発しないと言う場合は単純に「話したくない」「話す必要がないと思っている」など、個性であることもあります。
大人でもおしゃべりな人もいれば無口な人もいます。
言葉は知っていても自分の気持ちを伝える適切な言葉が見つからないこともありますし、「言わなくてもお母さんは分かってくれている」とあえて発話しない子もいます。
対策
この場合はある時突然話し始めることも多く、幼稚園で友達と関わり始めたら言葉が出るようになった、という子もいます。
話を聞いて理解しているようならもう少し様子を見てもいいかもしれません。
2.言葉のインプット量が少ない
言葉を話すためには、まずたくさんの言葉を聞き、理解し、脳に蓄積しておく必要があります。
そのためインプットしている言葉の量が少なければ当然アウトプットも少なくなってしまいます。
先述の例で言えば、コップに注ぐ水の量が少なければなかなか溢れないのと同じことです。
お母さんや周囲の人が忙しくあまり子供に声掛けをしていなかったり、公園などで遊ぶことが少なく他人とのコミュニケーションが少なかったりするとインプットされる言葉が減ってしまいます。
対策
話したいのにうまく話せない、言葉が出てこない、という場合には言葉の環境を見直してみましょう。
まずはたくさんの言葉を理解する必要がありますから、たくさん話しかけたり、大好きな絵本を一緒に見たりして刺激を与えてあげてください。
ご飯を食べる時に「おいもおいしいね」と一緒にもぐもぐ口を動かしてみたり、「○○ちゃんはお人形で遊んでいるんだね」と実況中継してあげるのもいいですね。
また、子供が大好きな遊びを一緒にやってあげるのもとても効果的です。声をかけながらふれあい遊びを楽しむ、公園で思い切り遊ぶなどもいいでしょう。
興味の対象が増え、「楽しい!もっとやりたい!」と感じるとそれを伝えたいという思いが自然と発話につながるようになります。
3.コミュニケーションの一方通行が多い
現代は昔に比べて言葉が遅い子供が増えてきていると言われています。その要因としてテレビやDVD、スマホやインターネットが挙げられます。
乳幼児期の子供はちょろちょろ動き回りいたずらもしますから、お母さんは目が離せません。家事も手につかず、疲れてしまいます。
そんな時に子供心を引き付けてくれるテレビやネットは強い味方です。
しかし楽だからと言ってついついアニメや幼児番組を見せすぎていませんか?
情報量の多いテレビや動画は子供の言語能力発達に役立つように見えますが、実はそうではありません。画面から一方的に発せられる言葉に対して子供は受け身の姿勢になるのでコミュニケーションする力は育ちません。
一日に何時間もテレビなどを見ていると、その分だけ他の遊びができず、むしろ言葉の発達の妨げになります。
対策
まずは画面を視聴する時間は多くても1時間までと決めましょう。
前項でも紹介したとおり、子供の言語発達に最も効果的なのは周りの人とリアルなコミュニケーションをとることです。
お母さんが「おいしい?」「これなーんだ」などと話す口の動きを見て、興味を持つからこそ言葉を覚えるのです。
一方通行にならない相互的なコミュニケーションを多くとるように生活を見直していきましょう。
4.耳の病気
他のことは良くできるし、親子でコミュニケーションもとっているのに言葉だけが遅いと言う場合には耳の病気を疑いましょう。
耳の聞こえが悪ければどれだけ周りに音があっても言語学習はできません。
この年齢の子に多いのが滲出性中耳炎です。急性中耳炎では耳が痛くなるので早期に気づけるのですが滲出性の場合はあまり痛みがないので周りが気づかないことが多いのです。
軽い難聴のような状態になっているので名前を呼んでも返事をしなかったり、情報が入ってこないため言葉が出てこなくなるのです。
対策
中耳炎は早期に治療開始すれば治りますが、放っておくと悪化して本当に難聴になってしまうこともあります。
風邪をひいた時の中耳炎が治っていないという場合もあるので「あれ?」と思ったら子供の様子をよく観察しましょう。
聴覚に異常があれば何らかの兆候が見えるはずです。心配なことがあったら早めに耳鼻科の診察を受けましょう。
5.発達障害
3歳を過ぎても言葉が出て来ず、上記の原因にも当てはまらない場合は発達障害が疑われることがあります。
また、健康診断等で指摘されることもあります。通常の言葉遅れと発達障害にはどんな違いがあるのでしょうか。
発達障害の特徴
例えば、耳がちゃんと聞こえているにも関わらず「ボールちょうだい」と声をかけても不思議な顔をして、知らんぷりしているということがしばしば見られます。
また言葉は発しているけれど、ただ単にこちらがかけた言葉をオウム返しにしているだけということも特徴的です。
他にも目を合わせられない、偏食がひどく同じものしか食べない、極度に落ち着きがない、などいくつかチェック項目がありますが素人では判断できません。
心当たりがある場合や健診等で指摘された場合はきちんと医師の診察を受けることが必要です。
対策~専門家による療育~
医師などから発達障害の可能性を指摘されたら専門家のサポートを受けましょう。地方自治体や病院などで行っている「療育」を薦められることもあるでしょう。
「療育」は「治療教育」の略で言葉などの発達に問題や不安がある子供と親をサポートしてくれるものです。医師や看護師、保健師や心理士など多岐にわたるプロが総合的に子供の発達を手助けしてくれます。
言葉などの対人コミュニケーション能力だけでなく運動や体力面、また食事指導などのトレーニングを行います。
中には発達障害の可能性を受け入れることができないお母さんもいますし、幼稚園などに行く際に療育経験が不利にはたらくのでは、と考え療育を拒否する方もいます。
しかし療育に通ったことが悪影響を及ぼすとは考えられませんし、早期に療育を行った結果「発達障害ではなかった」とわかることもあります。
また、仮に発達障害だったとしても早めに対処することで施設や自宅でトレーニングを行い、子供の成長を促すことができます。また、同様の悩みを抱える親子に出会うことで情報共有し、思いを吐露し合うことができるようになります。
まとめ
子供の成長は親にとって嬉しいものですが、その反面心配なことがあると不安を抱え、辛い思いをしてしまいます。
言葉が遅い子のお母さんはとても深刻に悩んでしまいがちです。確かに子供には個人差がありますが、その子なりにちゃんと毎日成長しています。
小さいころ無口だった子が、その後ウソのようにおしゃべりになることもよくあります。子供の得意なことを見つけて育ててあげましょう。
また、好きなことを一緒に楽しんであげてください。そして不安な時は一人で抱え込まず、周囲の人や専門家に相談しましょう。
親子がしっかりコミュニケーションをとり、笑顔でいられることが何よりも大切なことなのです。