母乳育児をしていると、授乳期間中は、なにかと制限が多いものです。特に、赤ちゃんの栄養源となる母乳に影響する食べ物や飲み物には気を付けなければいけません。
授乳期間中に控えた方がいいとされる飲み物として、コーヒーなどのカフェインを含む飲み物が挙げられます。では、どうしてカフェインを含んだ飲み物を摂取するとよくないのでしょうか。
授乳中にカフェインを摂取してはいけないといわれる理由と、授乳中にどうしてもカフェインを摂取したくなったときの対処法についてお伝えします。
授乳中のカフェイン摂取は少量でもダメ?赤ちゃんとママの影響は?
授乳期間中に摂取するとよくないもののひとつとして挙げられる「カフェイン」。では、授乳期間中には、カフェインを含む飲み物はまったく摂取してはいけないのでしょうか。それとも少しくらいなら摂取してもいいのでしょうか。
カフェインは少量なら摂取しても問題ありません
カフェインは、授乳期間中には摂取する量を控えた方がいい成分であることは間違いありません。しかし、まったく摂取してはいけないというわけではなく、少量であれば摂取しても問題ありません。
コーヒーや緑茶、紅茶など、カフェインを含む飲み物を愛飲している人は多くいます。それなのに、妊娠をしたとたんに、愛飲していた飲み物を控えるように言われ、うんざりしてしまっている人もいるのではないでしょうか。
授乳期間中は、ただでさえ、疲れが溜まりやすく、慣れない赤ちゃんのお世話でストレスを溜めてしまいがちです。そのうえ、愛飲している飲み物を禁止されてしまっては、イライラが募ってしまいますよね。
ストレスを溜めて、イライラした状態で育児をすることは、カフェインを摂取するより赤ちゃんに悪影響を及ぼします。多少のカフェインが含まれていても、大好きなコーヒーや緑茶、紅茶などを1~2杯飲むことで、イライラが落ち着くのであれば、好きな飲み物を飲んで、一息つく時間を設けましょう。
私も出産前まで、パソコンとにらめっこを続けるデスクワークだったこともあり、コーヒーが手放せない生活をしていました。その結果、妊娠中も授乳期間中も、コーヒーを飲む習慣を止められませんでした。
もちろん、カフェインを控えた方がいいという認識はあったので、インスタントコーヒーの粉の量を少量にしたり、1杯飲んだら次は違う飲み物を挟むようにしたりして、摂取量を減らす工夫はしていました。
飲み過ぎはよくないですが、ストレスが溜まらない程度に摂取するよう心がけましょう。
赤ちゃんへの影響は?
授乳期間中にカフェインを摂取することで、ママが最も気になるのは「赤ちゃんへの影響」です。
授乳期間中のママがカフェインを摂取すると、摂取したカフェインの約1%が母乳に移行するといわれています。ママの摂取量の1%ですので、コーヒーなどを1~2杯程度飲んでも、赤ちゃんにそれほど大きな影響を与えるわけではありません。
ただ、カフェインのもつ作用を考えてみてください。大人でも眠気を覚ますためにコーヒーを飲むことがありますよね。
カフェインには脳を刺激して、興奮させる作用があります。ママがカフェインを過剰摂取してしまうと、母乳に移行するのがその1%とはいえ、赤ちゃんにもカフェインの作用が強く働いてしまう恐れがあります。その結果、赤ちゃんの寝付きが悪かったり、機嫌が悪くなったりすることがあるので、摂取量には注意が必要です。
ママのストレスにつながることも
授乳期間中の赤ちゃんは、夜中に何度も目を覚ましたり、夜泣きをして寝付いてくれなかったりすることがしばしば。「どうして寝てくれないの?」と、イライラしてしまうこともあります。
そんなとき、日中、カフェインを含む飲み物を摂取しているママは、赤ちゃんが寝てくれない理由の選択肢のひとつに「ママがカフェインを摂取しているから」という理由が頭をよぎります。意識して摂取量を少なくしていても、摂取している以上、その選択肢を除外することはできません。
大好きなカフェインを含む飲み物を摂取しているときには、気持ちが落ち着くかもしれませんが、夜泣きの原因が自分にあるかもしれないと思うと、その罪悪感から自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
私も授乳中にコーヒーを摂取し続けていたので、眠りが浅く、夜泣きも頻繁だった第2子の子育て中は、常に自己嫌悪との戦いでした。赤ちゃんに影響するほどの濃さでは飲んでいなかったので、夜泣きの原因は別のところにあると、自分に言い聞かせていたのですが、それでもふと「やっぱりカフェイン?」と思い悩む夜がありました。
産後は情緒不安定になりやすい時期でもあります。思い悩むくらいなら、カフェインの摂取は控えた方がいいでしょう。赤ちゃんの寝付きが悪い理由の如何を問わず、授乳育児中は、ママの心身の状態を落ち着けることが重要です。不安材料をなくし、リラックスした状態を作ることを意識しましょう。
カフェインのもつ作用と授乳中には控えたほうが良い理由
授乳中に摂取を控えた方がいいとされるカフェインには、どんな作用があるのでしょうか。カフェインのもつ作用から、授乳中に控えた方がいい理由をさらに詳しく探ってみましょう。
覚醒作用
カフェインがもつ作用のなかで、一番よく知られているのが、「覚醒作用」です。
人の脳には、脳内ホルモンを受け取ることで、脳や体に様々な働きをもたらす受容体が存在します。そのなかのひとつであるアデノシン受容体は、アデノシンと結合することで、脳をリラックスさせ、眠気を誘う働きをします。
本来ならアデノシンと結合するはずのアデノシン受容体は、カフェインとも結合することができます。そのため、カフェインを摂取すると、アデノシンと結合して、脳をリラックスさせるはずだったアデノシン受容体がカフェインと結合してしまうので、脳はリラックス状態になることができず、興奮状態を保つことになります。
カフェインの入ったコーヒーなどを眠気覚ましとして飲むのは、このためです。
眠気を覚ましたいときに摂取すると、その効果を発揮しますが、摂取しすぎると不眠などの副作用を招くことがあります。また、眠気覚ましの効果を求めて、頻繁に摂取し続けることによって、その効果が薄れ、摂取する量が過剰になっていくといった中毒症状をもたらす恐れがあります。
授乳中のママが、カフェインを過剰摂取することで、母乳からカフェインを受け取った赤ちゃんに覚醒作用が働くと、寝つきが悪くなったり、夜泣きをしたりする原因となります。赤ちゃんの様子がおかしい場合や、カフェインを摂取しすぎているという自覚症状がある場合には、摂取量を制限しましょう。
利尿作用
コーヒーを飲むとトイレに行きたくなるといった経験はありませんか?これは、カフェインの「利尿作用」によってもたらされる症状です。
カフェインには、身体の余分な水分を体外に排出することを助ける作用があります。これによって、尿量が増えるため、体のむくみをとったり、血圧を下げたりする効果があります。こう聞くと、体にいい効果のようにも思えますが、水分補給には適さないという欠点があります。
授乳期間中のママは、赤ちゃんの水分補給にもつながる母乳を生成しているので、2人分の水分を補給することを意識しなくてはいけません。特に夏場は、赤ちゃんもママも汗をかいて、水分が奪われていきます。「気付いたらまったくトイレに行っていない」といった時には、間違いなく体内の水分が不足しています。
水分不足になると、母乳の出が悪くなったり、母乳がドロドロになり、赤ちゃんが飲みにくくて授乳を拒否することにつながってしまうので、授乳期間中は意識的な水分補給が必要となります。
そんな状態で、利尿作用のあるカフェインを含む飲み物ばかりを飲んでいるとどうなるでしょう。意識して水分を多くとっているつもりでも、どんどん尿として排出され、母乳に使われるための水分は枯渇してしまいます。
水分補給が重要な授乳期間中は、カフェインを含まない飲み物での水分補給に心がけましょう。
解熱鎮痛作用
聞き慣れない言葉ですが、カフェインには「解熱鎮痛作用」と言われるものがあり、総合感冒薬や鎮痛剤にカフェインが配合されているのはこの効果を期待するためです。
カフェインには、血管を収縮させる働きがあり、この働きが脳の中の血管が拡張することで起きる頭痛を和らげてくれます。一方で、頭痛を抑えるために長時間カフェインを摂取し続けると、収縮している血管が、その反動で拡張してしまうことがあります。その結果、副作用として元凶とは別の強い頭痛に悩まされることがあるので、過剰摂取には注意が必要です。
授乳期間中は、食べ物や飲み物だけでなく、医薬品の摂取についても制限があります。カフェイン以外にも摂取を控えた方がいい成分が配合されていることがあるので、授乳期間中に薬を摂取する場合には、病院で相談してからにしましょう。
授乳期間中に注意すべきカフェインを多く含む飲み物
カフェインを多く含む飲み物には次のようなものがあります。授乳期間中であるにも関わらず、これらの飲み物を愛飲している場合には注意が必要です。
コーヒー
愛飲している人も多いコーヒーはカフェインを多く含んでいますが、含有量はコーヒーの種類によって異なります。
エスプレッソコーヒー | 300mg |
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ドリップコーヒー | 90mg |
インスタントコーヒー | 40mg |
濃く抽出したコーヒーほど、カフェインの含有量が多いことが分かります。濃いコーヒーを好む方もいると思いますが、授乳中にコーヒーを摂取するときには、カフェイン含有量の少ないインスタントコーヒーを薄めに入れて飲むことをおすすめします。
お茶
水分補給として飲むことの多いお茶類ですが、緑茶やウーロン茶、抹茶などにもカフェインを含むものが多くあります。お茶も種類によってカフェイン含有量がまったく異なります。
玉露 | 120mg |
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抹茶 | 30mg |
緑茶 | 20mg |
ほうじ茶 | 20mg |
ウーロン茶 | 20mg |
麦茶 | 0mg |
ご覧のとおり、玉露は緑茶の6倍もカフェインを含んでいます。授乳中に摂取することは控えた方がいいでしょう。同じお茶でも、麦茶はカフェインを含んでいません。お茶類の摂取は麦茶で代用できそうなら、麦茶を飲むのがおすすめです。
紅茶
紅茶も抽出する濃さによって、カフェイン含有量に差がでますが、緑茶などと同等量のカフェインを含んでいます。
紅茶 | 20ml |
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コーヒーよりカフェイン含有量は低いですが、紅茶は500ml入りのペットボトルでも豊富な種類が販売されているため、一回に飲む量が多い傾向にあります。カフェイン含有量が少ない飲み物でも、摂取量が多ければ、カフェインの摂取量も比例して増えます。飲み過ぎには注意が必要です。
コーラ
見逃しがちですが、コーラなどのジュース類もカフェインを含んでいる飲み物のひとつです。
コーラ | 10㎎ |
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コーラは、糖分も多く含む飲み物なので、授乳期間中におすすめできません。500ml入りのペットボトルで販売されていることも多いですが、がぶ飲みには注意しましょう。
また、糖分が控えられるという理由でダイエットコーラを飲んでいる人もいると思いますが、ダイエットコーラも同等量のカフェインを含んでいます。
私の友人は、妊娠中から授乳期間中にかけて、カフェインの摂取を控えるために、大好きなコーヒーを我慢し、ダイエットコーラで水分補給をしていました。後になって、ダイエットコーラにもカフェインが含まれていることを知った彼女は、衝撃を受け、落ち込んでいました。
コーヒーほどではありませんが、コーラにもカフェインが含まれていることを認識しておきましょう。
授乳期間中にカフェインを摂取する際の注意点
控えた方がいいと分かっていても、我慢できないこともあります。どうしてもカフェインを含む飲み物を摂取したい場合には、次のことに注意して飲むようにしましょう。
1日2~3杯まで
インスタントコーヒーや緑茶であれば、1日2~3杯の範囲に留めておきましょう。それ以上は、授乳中でなくても、カフェインの過剰摂取につながってきます。
また、同じコーヒーやお茶でも、できるだけカフェインが少ないものを選ぶことを心がけましょう。カフェイン量の多いエスプレッソコーヒーや玉露は避けてください。少しでもカフェインが少ないインスタントコーヒーや緑茶にすることをおすすめします。
飲むタイミング
授乳期間中の人は、少しでも母乳への影響を減らしたいところです。カフェインを摂取するタイミングは、授乳直後がおすすめです。
カフェインは摂取して15~30分で母乳に移行するといわれています。そのため、授乳の前にカフェインを摂取してしまうと、たとえ少量であったとしても、母乳に入り込んでしまいます。
母乳に移行する量を少しでも少なくするためには、カフェインを摂取してから時間をおくことが有効です。授乳直後であれば、次の授乳までの間に、ママの体外に排出されている可能性が高まるので、母乳への影響は軽減されます。
授乳すると眠りについてくれる赤ちゃんであれば、授乳後にほっと一息つくタイミングで摂取すると、リラックス効果も高まります。心を落ち着けて、ゆったりとした気持ちで大好きな飲み物を楽しむ時間を作り、育児ストレスを溜めないようにしましょう。
赤ちゃんの様子を見る
1日2~3杯なら問題ないといいましたが、赤ちゃんによってはカフェインに対する感受性が高く、少量のカフェインにも反応してしまう場合があります。カフェインを摂取したあとの授乳後は、赤ちゃんの様子をよく観察しましょう。
ママがカフェインを摂取したあとの授乳後、寝つきが悪くなったり、ぐずることが多くなったりした場合には、母乳から移行したカフェインの影響が考えられます。赤ちゃんがうまく眠れなくなると、赤ちゃん自身もつらいですが、それに対応するママにも大きなストレスとなります。
寝つきが悪いことが続くようであれば、カフェインの摂取を止めましょう。飲み物に制限がでることで、ストレスを感じることもあるかもしれませんが、赤ちゃんにゆっくり寝てもらうことの方が、ストレスには有効です。好きな飲み物に似たノンカフェイン飲料で代行することで乗り切りましょう。
授乳期間中はカフェインを含まない飲み物で代用する
カフェインの摂取を控えるためには、カフェインを含まない飲み物で代用することがおすすめです。見た目や味が似ていることで、カフェインが入っていなくても、好きな飲み物を飲んでいる気分を味わうことができます。
授乳期間中は、水分補給が欠かせません。利尿効果のない飲み物をたくさん摂取して、赤ちゃんの分まで水分を摂取することを意識しましょう。
ノンカフェインコーヒー
コーヒー好きな人は、カフェインを含まないノンカフェインコーヒーを代用しましょう。
コーヒーを愛飲している人は、コーヒーを飲むことが習慣になっていることが多いです。習慣化していることを止めるのは難しいので、見た目も味もコーヒーを変わらないノンカフェインコーヒーであれば、代わりの飲み物として遜色ありません。
カフェインを含んでいないので、眠気覚ましの効果はありませんが、コーヒーを飲んでいるという満足感が上回るので、カフェインを控えていることをそれほど意識しなくてすみます。
ちなみに、ノンカフェインコーヒーと似た飲み物で、「カフェインレスコーヒー」や「デカフェ」がありますが、授乳期間中におすすめなのは、ノンカフェインコーヒーです。
カフェインレスコーヒーやデカフェは、少なからずカフェインが含まれています。カフェインを控えるといった意味では有効ですが、カフェインの含有量はゼロではないので注意しましょう。
麦茶
お茶類のなかでおすすめなのは麦茶です。麦茶というと、夏に飲む冷たい飲み物のイメージがあるかもしれませんが、麦茶は温かくしてもおいしく飲むことができます。
同じお茶でも種類が異なるので、味も見た目も異なりますが、似た雰囲気を出すことは可能です。食後に緑茶を飲む習慣がある人は、いつも緑茶を飲む湯飲みに温かい麦茶を入れてみてください。冷たい麦茶とは一味違った趣になり、緑茶代わりに飲むことにも違和感はなくなります。
赤ちゃんの離乳食が始まる頃になると、赤ちゃんも母乳以外の水分をとるようになります。カフェインを含まない麦茶は、赤ちゃんが飲むことができる水分の代表格です。麦茶を作って、ママと赤ちゃんで共有することができるといった意味でもおすすめの飲み物です。
ハーブティー
紅茶を好んで飲む人にはハーブティーがおすすめです。
ハーブティーは、カフェインを含まないだけでなく、血液循環をよくしたり、血液をキレイにしたりする作用があるので、母乳の出がよくなる効果があるものもあります。乳腺炎になりやすい人や、母乳が出にくくて悩んでいる方には、特におすすめの飲み物です。
母乳の出がよくなるとされているハーブティーには次のような種類があります。
- ラズベリーリーフティー
- ルイボスティー
- フェンネルティー
- ネトル
- ローズヒップティー
ハーブティーは、ハーブの種類によって、香りや味が異なります。自分の好みに合ったハーブティーを飲むことで、リラックス効果も得られます。まずは自分に合ったハーブティーを探すところから始めましょう。
また、授乳中のママ用に、母乳にいいハーブをブレンドしたハーブティーもあります。どのハーブティーを飲んだらいいか分からない場合には、ブレンドティーからスタートしてみてください。
まとめ
授乳期間中は、慣れない子育てに加えて、食事や飲み物など制限されることが多く、ストレスが溜まりやすい時期です。育児ストレスを緩和するためにも、無理に我慢し過ぎないようにししてください。
カフェインを摂取しすぎている自覚がある人は、授乳中のママにはカフェインがよくないとされる理由を意識するように心がけてください。そして、少しでもカフェインの少ない飲み物で代用する、飲むタイミングを授乳後にするなど、できることから少しずつ取り組んでいくことで、カフェインを控えた生活に体を慣らしていきましょう。