「口の中が変な味がするような気がして、妊娠に気付いた」という妊婦さん、けっこういますよね。
「苦い」「酸っぱい」「甘い」「変な味がする」「ねばねばする」「渇く」「血の味」など、いろいろな症状がありますが、私が経験したのは「苦い」と「乾く」でした。
それに伴い、味の好みが変化して濃い味を好むようになっていくのを感じましたが、みなさんの口の中は、どのような変化がありますか?
このような口の中の変化は、どうして起きるのでしょうか?そして、どんな対策方法があるのでしょうか?
妊娠中の口の中の変化で奪われる!楽しみの共通点「食べる」
食事や嗜好品を通して「食べる」ことは、人の共通の楽しみのひとつです。
- 「苦い」
- 「酸っぱい」
- 「甘い」
- 「しょっぱい」
- 「血の味」
- 「ねばねばする」
- 「渇く」
- 「味がしない」
- 「ねばねば」
- 「変な味がする」「まずい」「違和感」「不快」
などの口の中の変化によって、食べる楽しみを奪われると、人は、ストレスを感じるようになります。
そして、ストレスの増加によって、どんどん食べ物がおいしく感じなくなり、健康を害してしまう危険性を伴うことも少なくありません。
口の中の変化は、妊娠したことのある人であれば、1度は経験しているでしょう。
つわりの症状が出始める妊娠初期に、特になりやすい傾向にありますが、つわりが原因ではなく、妊娠後期になって現れることもあります。
では、どうして口の中が変な味がしたり、味がわからなくなったりするのでしょうか?
妊娠してから「口の中が変な味・気持ち悪い・味覚が変化する」原因・症状・理由
残念ながら、味覚の変化や口の中の異変の原因は研究段階にあり、未だ解明されていないのが現状です。
しかし、可能性が高いと考えられているいくつかの原因があります。
原因 | 症状 | 理由 | |
---|---|---|---|
初期 | 唾液量の変化 | ・ねばねばする ・よだれが出る ・乾く ・いがいがする |
・女性ホルモンの変化 ・水分不足のため |
唾液成分の変化 | 酸っぱい | 酸が強くなっているため | |
胃液や胆汁の逆流 | 苦い | つわりなどによって逆流するため | |
後期 | 味覚障害 | ・味がしない ・薄味や特定の味がわからない |
・女性ホルモンバランスの変化 ・病的症状 |
唾液量の変化
唾液量が多くなる場合
「口がねばねばする」「よだれが出る」と感じるのは、よだれつわり(唾液過多)と呼ばれる状態です。
まだ、理由は解明されていませんが、妊娠するのと同時に分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)という女性ホルモンや、妊娠を維持するために大切な黄体ホルモン(プロゲステロン)の増加に伴い、脳の嘔吐中枢が刺激を受けたり、胃腸の機能が低下することが原因の可能性があります。
唾液量が少なくなる場合
「口が乾く」「口がいがいがする」と感じるのは、唾液を作るための水分が不足することで、唾液が不足して、乾燥している状態です。
妊娠すると、赤ちゃんの成長に伴い、血液量の増加、汗の増加、羊水のために、たくさんの水分を必要とし、非妊娠時で1日1~1.5ℓでも妊娠時には1日に2ℓ以上も飲むことが推奨されるくらい、水分の必要量は増加します。
水分が不足がちのお母さんであれば、赤ちゃんを守るために、お母さんの命に影響のない場所から、水分を補おうとします。こうして唾液量が少なくなるんです。
唾液成分の変化
「口の中が酸っぱい」「口臭がする」と感じるのは、口の中の酸が強い状態です。
本来、唾液は、口の中の健康を守り、虫歯や歯周病などの酸性の菌から守るために弱アルカリ性、あるいはアルカリ性に近い中性です。
ところが、妊娠することによって、唾液に変化が生じて、酸が強くなる傾向があります。虫歯や歯周病になりやすくなり、口の中に異変を感じるようになります。
妊娠してから「虫歯になった」「歯周病になった」という妊婦さんも多いのではないでしょうか。また、歯肉炎になって血の味がする妊婦さんも多いようです。
特に、妊娠中になる歯周病は「妊娠性歯周病」といわれ、女性ホルモンによって活性化するプレボテラ・インターメディア菌が原因だといわれています。
本来、保たれているはずの唾液成分の変化にも、女性ホルモンの変化が関係しているといえます。
胃液や胆汁の逆流
「口の中が苦い」と感じるのは、つわりなどによって、胃液や胆汁が逆流し、口の中が不衛生になってしまっている状態です。
つわりの原因は、まだ解明されていませんが、女性ホルモンの急激な増加などに体が追いついていかず、拒否反応を示しているために起きるのではないかと言われています。
この間、歯磨きをしようと思っても、気持ち悪くなって吐いてしまう妊婦さんも多く、口の中が不衛生になり、苦みを感じるようになる場合が多いようです。
唾液成分の変化と同じように、虫歯や歯周病になる場合も多くみられます。
味覚障害
「味がしない」「薄味や特定の味がわからない」と感じるのは、舌にある味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる細胞の機能が低下している状態です。
亜鉛不足などの栄養の偏りや、ストレスなどの影響を受けて味覚障害になることが多く、妊娠中には、女性ホルモンの変化も強く影響していると考えられています。出産後も症状が続くようであれば、病的要因も考えられるので、注意が必要です。
表にはありませんが「味の好みが変わる」「味が濃く感じる」と感じる妊婦さんもいます。
まだまだ研究段階ですが、添加物や減塩食に気を付けるようになるため、味覚が敏感になることや、唾液量や成分の変化が要因として考えられています。
逆に、黄体ホルモン(プロゲステロン)には知覚の機能を低下する作用があるため、味の感覚が鈍くなり、味の好みが変わるという説もあります。
口の中の変な味は、赤ちゃんを守るためのバロメーター!どんな対策がある?
口の中の変な味の原因と理由を調べていくと、まだまだ研究段階とはいえ、おなかの赤ちゃんの成長に欠かせない栄養や水分の維持と、お母さんの妊娠維持や出産準備のための女性ホルモンの変化と深く関係があることは間違いありません。
あんなに気持ちが悪い口の中の変化は、実は、赤ちゃんを守るために、妊娠を維持するために不足しているものを教えてくれるバロメーターだとすれば、納得もいきますよね。
では、どのような対策をとればいいのでしょうか?
口の中の変な味にはどんな対策があるの?
キシリトール配合の飴やガム、グミなどを食べる
口の中の状態によって、酸っぱいものがほしかったり、甘いものがほしかったりするかと思います。
妊婦さん本人が「この味なら食べられるかも」と思う味を選ぶのが1番です。
しいて言えば、つわりがある場合には、レモンなどの柑橘系や梅などの酸味のある味のものを選ぶと、割とさっぱりと食べられるかもしれません。
私は、飴やガムを常に口に入れていると、気持ち悪くなったので、口が気持ち悪くなってきた時にはグミを食べていました。
ここで大切なのは、砂糖不使用、キシリトール配合で、胎児に悪影響のあるアスパルテームという甘味料を使用していないものを選ぶことです。
キシリトールは、天然素材から作られた甘味料なので、妊娠中でも安心して食べることができます。また、虫歯予防や歯の再石灰化にも有効な成分です。
歯医者さんが作った歯科専売品のキシリトール100%の商品も販売されているので、より安心して食べることができます。
このキシリトール100%の商品のデメリットは少々、高価格だということです。
市販の商品であっても、シュガーレスで、キシリトール配合のアスパルテームが配合されていない商品であれば、安心して食べて大丈夫ですよ。
炭酸水を飲む
白湯を飲めるのであれば、それが1番、身体に優しいと思いますが、もともと変な味がする妊婦さんは、白湯を飲むと、ものすご~くマズいんですよね。
私もそうだったので、気持ちはよくわかります。
だからといって2ℓ以上、つわりで嘔吐してしまう場合は、それ以上の水分を飲まないといけないのですから、何か飲まなければいけません。
そこで、おすすめなのが炭酸水です。
「炭酸の入ったものを飲むなんて!」と思う妊婦さんもいるでしょう。その反面、無性に炭酸飲料がほしくなる妊婦さんがたくさんいるのも事実です。
ここでおすすめする炭酸水は、よくお酒などを割るために使用する、砂糖や甘味料の入っていない、水と二酸化炭素(炭酸)のみが成分の、本物の炭酸水です。
よく炭酸を飲むと骨が溶けるといいますが、これは、加糖炭酸ジュースに含まれるリンがカルシウムを身体の外に出してしまうためで、砂糖が入っていない炭酸水であれば、水を飲んでいるのと同じなので、飲んでも問題はありません。
しいて言うならば、炭酸でお腹が膨れてしまうので、飲み過ぎには注意しましょう。
炭酸水にも、硬水・軟水があるので、飲み比べて自分が1番気に入ったものを選ぶのが1番いいと思います。
・硬水の炭酸水
・軟水の炭酸水
とはいえ、私は炭酸水をそのまま飲むのは得意ではありません。
私の旦那が炭酸水をそのまま飲むのが大好きで、アサヒのウィルキンソンという炭酸水をよく飲んでいますが、1口もらって飲んだら逆に気持ち悪くなりました。
そんな妊婦さんは、お好みの果物を炭酸水に入れちゃいましょう。
自分が食べたいと思う果物の味がする炭酸水になって、飲みやすくなります。
ちなみに、私は、レモンやキウイをスライスした物を入れたり、梅を潰した物を入れたりして飲むのがお気に入りでした。甘みが少しほしい時には、オリゴ糖などを入れると、また違った味になっておいしいですよ。
バランスの摂れた食事をする
どの原因をみても、なんらかの形で女性ホルモンの変化が関係しています。
妊娠を維持するために、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体ホルモン(プロゲステロン)、ステロイドホルモン(エストロゲン)を始めとするさまざまな女性ホルモンが、急激に増加します。
妊娠を維持するために必要とされる女性ホルモンの影響を受け、さまざまな影響を受けてしまうのは、致し方ないことです。
葉酸、カルシウム、ビタミン、ミネラルなど、妊娠中に特に多く身体に摂りいれなければいけない成分はたくさんあります。妊娠後期には、亜鉛などのミネラルを含む牛、豚などの肉類や煮干し、海苔なども多めに取らなければいけません。
しかし、そればかり気にしていると、今度は、他がおろそかになってしまい、ストレスなどの違った症状が現れてしまう場合もあります。気にし過ぎは、逆に赤ちゃんのためにならないので、無理は禁物です。
普段の食事の中で、バランスよく全ての食材を食べるのは、とても難しいことです。
1度の食事で考えるのではなく、1週間単位で食事のバランスを考えると、気持ちが楽になり、意外と大切な成分の必要量も摂りやすくなりますよ。
どうしても不足しがちな成分があるのを自覚している妊婦さんは、産科医に確認の上、サプリメントなどを取り入れるのもいいかもしれませんね。
まとめ
妊娠中の口の中の変な味や、味がしないなどの変化は、よくあること。赤ちゃんを守るために、妊娠を維持するために不足しているもののバロメーターです。
キシリトール配合の飴やガムを食べて、口直しをしながら、無理のない程度にバランスの良い食事をしましょう。そして、食事に影響のない程度に、炭酸水など飲みやすい水分をたくさん取るようにすることが大切です。
出産しても、完全母乳であれば、口の中の変化が続く場合もありますが、たいていのお母さんは出産すると同時に、よくなるのが一般的です。
なかなか治らないようであれば、病的な可能性もあるので、耳鼻咽喉科や歯科に行って相談しましょう。