無事に出産を終えたのも束の間、育児に家事に追われて、睡眠をとる時間が取れずに、さまざまな体調不良で、頭痛がしたり、イライラしたり・・・
体重が増えて「産後って痩せるんじゃないの?!」なんてお母さんもいるのでは?使命感のようなものにとりつかれて、無理し過ぎていませんか?
まずは、睡眠不足を解消して、お母さん自身の健康を保つことが大切ですよ。
産後の睡眠不足による影響は心にも身体にも表れる
寝る時間をけずって、赤ちゃんのために頑張ることは素晴らしいことです。しかし、睡眠不足は、お母さん自身の体にさまざまな影響をもたらします。
- 母乳の出が悪くなる
- 頭痛
- 腹痛
- めまい
- イライラして家族にあたってしまう
- 湿疹
- 体重の増加
- 産後うつの症状
- 眠たいのに眠ることができない
- 物忘れが多くなる
などのような症状が現れているのであれば、それは、頑張り過ぎている証拠。それでも、お母さんになると赤ちゃんのために、家族のために頑張らないとと思ってしまうから、不思議ですよね。
しかし、お母さん自身の心と体に悪影響がある状態での育児は、赤ちゃんのためになりません。赤ちゃんにとってお母さんは、あなただけなのですから。
まずは、どうして上記のような症状が現れるのか、原因を知ることから始めてみましょう。このような症状は、産前産後の女性ホルモンの変化と深く関係しているといわれています。
どうしてお母さんは赤ちゃんのために頑張れるの?深く関係する3つのホルモン
女性の身体は、とてもすごい適応能力を持っていて、出産に近づくにつれ、睡眠のリズムさえも変化させます。産後、赤ちゃんの育児をするために、まとまった睡眠を取らないで短時間寝るだけでも、細胞を修復して疲労を回復させることができるようにするためです。
そんなお母さんの適応能力と深く関係しているのが、メラトニン、セロトニン、プロラクチンという3つのホルモンです。
プロラクチン
(分泌される時と働き)
細胞を修復して疲労を回復する働きをしていて、睡眠不足やさまざまなストレスを緩和させてくれる働きをしているホルモンです。
プロラクチンが、お母さんの身体を短時間のこまぎれ睡眠に対応できるように、身体の疲れを癒してくれていたんです。分泌量が増える産後、赤ちゃんのために頑張る力を与えてくれているホルモンのひとつともいえます。
(分泌量低下による影響)
後述するメラトニンによって分泌されるホルモンで、分泌量のほとんどが睡眠中に分泌されているため、睡眠が不足すると分泌量が減り、心身の疲れがたまりやすくなります。
また、プロラクチンは、母乳を作って腺房にためる働きをしているので、このホルモンの分泌量が減ると、母乳の生産量が減ってしまいます。
睡眠不足になると母乳の出が悪くなるのは、プロラクチンが減少しているからなんです。
メラトニン
(分泌される時と働き)
体内時計の役割をしていて、朝起きてから14~16時間たった頃から分泌され始め、夜になって暗くなると、どんどん分泌量が増え、自然に眠りにつけるように導いてくれるホルモンです。
後述するセロトニンが原材料で、産後は、このメラトニンの分泌に変化があり、まとまった睡眠をとらなくても、トータルで睡眠時間を確保できていれば、大丈夫なように睡眠リズムを変化させています。
そのため、夜間授乳をして、終わったらまた、すぐに熟睡することができるんです。
(分泌量低下による影響)
問題なのは、私達の生活に欠かせないLED、パソコンやスマホなどの液晶から出るブルーライトの刺激に弱いホルモンで、ブルーライトの光にあたることによって、分泌量が減ってしまうことです。
メラトニンの分泌量が減るということは、体内時計を狂わせ、質の良い睡眠を取ることができなくなります。そのため、睡眠時間は十分足りていても、睡眠不足を感じるようになったり、寝つきが悪くなって、授乳が終わってすぐに眠ることができずに、本当に睡眠不足になったり・・・
睡眠不足やそれを感じている状態は、ストレスを感じてイライラしたり、頭痛、めまい、物忘れなどの原因になります。
また、責任感の強いお母さんほど、そんな症状が現れていながら頑張り続け、産後うつになってしまったり、身体のいたるところに症状が現れてしまうこともあります。
セロトニン
(分泌される時と働き)
朝目覚めをよくしてくれるホルモンで、朝、陽が昇る少し前から分泌され始めます。
朝の太陽の光を浴びることでたくさん分泌されますが、赤ちゃんや家族とのスキンシップや、信頼できる人との会話など、幸せを感じる時にもたくさん分泌されるホルモンで、「幸せホルモン」とも言われています。
ストレスを和らげ、心の安定感を与えてくれるホルモンです。
(分泌低下による影響)
妊娠中にたくさん分泌されていた女性ホルモンが、産後に急激に減ることで、セロトニンも影響を受け、分泌量が減ってしまうことがあります。
産後は、ストレスの影響を受けやすいホルモンで、慣れない育児に対する戸惑いなどによって受けるストレスが重なり、生産が間に合わなくなってしまい、不足しがちになります。
太陽の光でたくさん分泌することができても、ストレスの影響によって減少してしまい、夜、メラトニンが分泌される頃には、必要なだけのセロトニンが残っていない状態になり、短時間の睡眠に対応できなくなったり、質の良い睡眠がとれなくなったりします。
また、セロトニンが不足している状態は、ストレスを受けやすい状態になり、イライラしたり、自責の念に駆られたりなど、産後うつの症状が出やすい状態です。
腹痛、湿疹やアトピー性皮膚炎、などの症状が出る場合もあります。ストレスから甘い物や脂っこいものを食べ過ぎて、太ってしまう原因にもなります。
お母さんの身体は、上記の3つのホルモンのおかげで、短時間の睡眠を繰り返し、1日トータルで必要な睡眠時間がとれていれば、睡眠は足りているはずなんです。
しかし、精神的に夜まとまって寝れないと、なんとなく睡眠不足を感じてしまうものですよね。眠たくて、眠たくて、頭がボーっとして上の子達の参観日を忘れてしまったり、母乳を飲ませながら寝てしまって、赤ちゃんを落としそうになったり・・・
実は「夜しっかりと寝ることが健康の秘訣」に固執して逆にストレスになっていることと、セロトニンが不足しがちになることで、メラトニンの分泌量が減って、短時間の睡眠に適応できなくなってしまっているんです。
まずは、セロトニンの分泌を増やすことが先決です。
セロトニンを増やして産後の睡眠不足とストレスを解消しよう!
セロトニンを増やす方法は、大きく分けて5つです。
朝、8時前に太陽の光を浴びる
まずは、朝7時までには、カーテンを開けるようにしましょう。前述したように、セロトニンは朝の太陽の光を浴びることでたくさん分泌されます。
「早起きは三文の徳」という言葉がありますが、早起きをして、しっかりと太陽の光を浴びることで、セロトニンの分泌を促し、ストレスに耐えることができる精神力を補うことは、産後の育児には本当に大切です。
リズム運動
リズミカルな運動をすると、セロトニンの分泌をよくするといわれています。
本当は、朝ウォーキングをしたり、水泳などをするのがいいようですが、赤ちゃんがいる生活の中では、なかなか難しいですよね。
- 階段の昇り降りをする
- 首を左右前後に傾けたり、回したりする
- 午前中に1度、赤ちゃんと一緒に散歩に行く
このくらいであれば、赤ちゃんのいる生活の中でも、無理なくできるかと思います。
ストレスを減らす
これが、なかなか難しいんですよね。家族との団らんももちろんいいですが、泣きたい時には泣く、笑いたい時には笑う、話をしたい時には話す、甘えたい時には甘える、これが1番でしょう。
とはいっても、なかなかそうはいかない時もあると思います。そんな時は、とにかく深呼吸をして気分をリラックスさせてください。
「調和道丹田呼吸法」という呼吸法を知っていますか?自然治癒力を高めて、精神的に安定させてくれる呼吸法です。
出産の時の「ヒッ、ヒッ、フー」を、思い出してもらえれば、いいかと思います。最初の2度は短く、3度目は長く息を吐く形です。
正直にいうと、今回改めて調べているうちに、名前があることを初めて知りましたが、長く息を吐くと、身体の中のもやもやがなくなる感じがして、よく産後にしていました。
栄養バランスに気をつける
セロトニンの分泌に欠かせないのは、トリプトファンとビタミンB群です。
- 納豆、豆腐などの大豆食品
- チーズ、ヨーグルトなどの乳製品
- バナナ
などがありますが、さまざまな食材に含まれているので、できる限りバランスよく、いろいろな食材を摂り入れた食事を心がけていれば、大丈夫です。
ビタミンB群は熱に弱いので、摂れているようで摂れていない成分のひとつです。
- 豚肉
- レバー
- かつお
- さんま
- バナナ
- 納豆
- 落花生
などに多く含まれています。
トリプトファンとビタミンB群、どちらも含んでいる納豆やバナナなどが、セロトニンを増やすために効率がいいと思いがちになってしまいますが、それだけでは、栄養が偏ってしまうので、その他の食材もしっかりと食べて、健康維持に心掛けてくださいね。
腸内環境を整える
トリプトファンは腸内で作られていて、腸内でもセロトニンが分泌されています。
さまざまな要因から下痢や便秘をしている状態では、せっかく分泌されたセロトニンが体外に出てしまって、思うような力を発揮してくれません。水分補給をしっかりとして、栄養バランスに気をつけて、下痢や便秘にならないように、腸内環境を整えましょう。
産後は「ついうっかり寝ちゃう」その時間を大切にしよう
身体が悲鳴をあげてることに気づきながら、気づかないふりをして、頑張っているお母さん。睡眠不足が続くと、誰でも、ついうっかり眠ってしまうってこと、ありますよね。それは、危険信号のひとつです。身体が睡眠を欲しがっている証拠です。
睡眠不足を感じて、体調不良を感じている時は・・・
夜まとまった睡眠をとるのはあきらめて、昼でも夜でも「ついうっかり眠ってしまう」それを、大切にする。
これが1番でしょう。
身体が悲鳴をあげたままでは、お母さん自身の体にさまざまな悪影響を及ぼし、却って家事が思うように進まなくなってしまいます。ついうっかり眠ってしまうような時は、脳が「寝ようね」と言っている時です。
赤ちゃんが夜中も起きる時期は、お母さんも産後まもない時期なのですから、無理せずに、できる限り寝るようにしましょう。家事は、できる時にまとめてすれば大丈夫です。
昼でも夜でも、1時間、無理であれば30分でもいいです。少し寝る時間を作るだけで、メラトニンとプロラクチンの働きで、元気な自分を取り戻し、ストレスや疲れが取れて、逆に、家事の効率がUPしますよ。
まとめ
女性の身体は適応能力が優れていて、産前産後にホルモンの分泌の変化によって、短時間の睡眠に耐えることができるように、体は変化します。
とはいっても、頑張り過ぎてしまうと、質の良い睡眠がとれずに、心にも体にもさまざまな悪影響をもたらします。
昼夜にこだわらずに睡眠をとるようにして、身体を休める時間をとりながら、質の良い睡眠に欠かせないセロトニンを、たくさん分泌できるように心掛けてくださいね。
赤ちゃんにとって1番大切なのは、お母さんの笑顔ですよ。