赤ちゃんが産まれると、母乳育児をする場合には、授乳が始まります。授乳は、赤ちゃんが栄養と水分を吸収する唯一の手段です。始めは、ママのおっぱいから出る母乳量も少なく、また、赤ちゃんも吸う力が弱いため、何回も授乳が必要になり、労力がかかります。

どんな体勢で授乳したら、赤ちゃんが飲みやすいかを試行錯誤するママも多いでしょう。

赤ちゃんが産まれてすぐは、「横抱き」で授乳を始めることが多いですが、横抱き授乳がうまくいかない場合には、「縦抱き」での授乳することも検討してみましょう。難しいイメージがあるかもしれませんが、コツをつかむと比較的容易に授乳ができるだけでなく、メリットも多くあります。

授乳がうまくいかずに悩んでいるママは、縦抱き授乳のやり方とそのコツを覚えて、試してみてください。様々な授乳方法を試して、ママと赤ちゃんに合った授乳方法を見つけましょう。

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縦抱き授乳はいつから?新生児の縦抱き授乳してはいけないって本当?

新生児は、首がすわっていないこともあり、縦抱きをすることは危険なイメージがあります。そのため、新生児に授乳するときは、横抱きの姿勢でなければいけないと思い込んでいるママも多いでしょう。

しかし、本当に新生児に縦抱き授乳をしてはいけないのでしょうか。縦抱き授乳の特徴を知ったうえで、いつ頃からできる授乳方法なのかを確認しましょう。

縦抱き授乳とは

「縦抱き授乳」は、その名のとおり、赤ちゃんを縦抱きの姿勢で授乳する方法です。赤ちゃんが、座ったママと向かい合わせになるようにして、母乳を飲ませたい側の太ももを跨がせる形で授乳します。

縦抱き授乳は、ママの体と赤ちゃんの体が平行になるので、赤ちゃんがまっすぐ前を向いた状態でママの乳首を咥えることができます。赤ちゃんの顔や口の向きを無理に変えなくていいので、赤ちゃんが母乳を吸いやすくなります。

体が平行になっていない状態で、授乳をすると、赤ちゃんがママの乳首を引っ張ったり、ねじったりしてしまい、乳首が傷つくことがあります。

横抱き授乳をしている人で、授乳によって乳首に傷ができてしまいがちな人は、ママの赤ちゃんの体が平行になっておらず、赤ちゃんが飲みにくく感じているのかもしれません。縦抱き授乳で、体を平行にした授乳を試してみることをおすすめします。


縦抱き授乳は、赤ちゃんだけでなく、ママにもメリットになることがあります。

横抱き授乳は、赤ちゃんがうまく飲めているかを確認するために、ママの姿勢が前屈みになりやすく、腰や肩に負担がかかりますが、縦抱きの場合は、椅子やソファーの背もたれにもたれた状態でも授乳が可能です。

出産で疲労がたまっているママの体にやさしい授乳方法であるとともに、赤ちゃんを縦抱きすることで、ママの背筋が伸び、猫背による血行不良なども招かずにすむので、ママの体の代謝をアップすることにもつながります。

縦抱き授乳は首すわり前でも可能です

ママにも赤ちゃんにも嬉しい縦抱き授乳ですが、一番の疑問は、「首のすわっていない新生児に縦抱き授乳をしていいか」という点です。

首がすわる前の生後0~2ヵ月頃こそ、授乳に不慣れなママと、母乳の飲み方がまだうまくつかめない生後間もない赤ちゃんで、母乳をうまく飲める姿勢を探して試行錯誤する時期です。できることなら、首すわり前にも縦抱き授乳を試したいと思うのも当然です。

首がすわっていなくて、まだ頭がぐらついている赤ちゃんを縦抱きすることに躊躇するママもいるかもしれませんが、首さえきちんと支えてあげれば、新生児でも縦抱き授乳は可能です。

首のすわっていない新生児を長時間縦抱きにしていると、赤ちゃんの首に負担がかかるので、縦抱きは控えた方がいいと言われていますが、控えた方がいいのは、「長時間の縦抱き」です。

授乳後にゲップをさせるとき、ママの肩に赤ちゃんの顔をのせることはありませんか?その姿勢も縦抱きです。授乳後のゲップは生まれた直後の赤ちゃんから行います。このことからも分かるように、長時間に及ばなければ、縦抱きをしても問題ありません。

ただし、相手はまだ首のすわっていない赤ちゃんです。首をきちんと支えてあげることだけは、忘れないようにしましょう。

縦抱き授乳のやり方

横抱き授乳に慣れていると、縦抱き授乳が難しく感じるかもしれませんが、コツをつかめば、ママも赤ちゃんも楽な姿勢でできる授乳方法です。

特に首がすわる前の赤ちゃんに試すときには、最初は戸惑うかもしれません。しかし、やり慣れてくると、ママの姿勢が楽なので、縦抱き授乳をメインにしたいと感じる人もでてくることでしょう。

では、縦抱き授乳のやり方と、そのコツについてみていきましょう。

縦抱き授乳の手順

縦抱きの手順は次のとおりです。

  1. 赤ちゃんを授乳したいおっぱい側の太ももの上に、ママと向かい合わせになるように座らせる。
  2. 赤ちゃんの足でママの太ももを挟む形にする。
  3. 赤ちゃんの口とママの乳首の高さを合わせる。
  4. 【赤ちゃんがまだ小さくて、赤ちゃんの口がママの乳首より低い場合】
    赤ちゃんのお尻の下にバスタオルやクッションを挟んで、高さを調整する。
    【赤ちゃんが大きくなって、赤ちゃんの口がママの乳首より上にきてしまう場合】
    太ももの上に座らせず、ママの膝の間に赤ちゃんのお尻を落とすことで高さを合わせる。

  5. 授乳するおっぱい側の手で赤ちゃんの首から後頭部をそっと支える。
  6. もう一方の手で、授乳するおっぱいを下から支えて、赤ちゃんの口に咥えさせる。
  7. 赤ちゃんが母乳を吸い始めたら、おっぱいを支えていた方の手で、赤ちゃんのお尻がズレ落ちないように支える。
  8. 片方のおっぱいが終わったら、もう一方のおっぱいに移動する。

初めて縦抱き授乳に挑戦するときには、赤ちゃんの口とママの乳首の高さを合わせるのに手間取るかもしれませんが、高さの調整方法がつかめれば、それほど難しい手順はないので、心配しないでください。

縦抱き授乳をするときのコツ

縦抱き授乳がうまくいくためにポイントとなる点を紹介します。

赤ちゃんの口がママの乳首より少し下になるよう高さを調整する

赤ちゃんが少し上を見上げるような姿勢がベストです。

頭が後ろに倒れてくる分には、ママの手で支えることができます。頭が前方に倒れると、支えがないうえに、息ができずに窒息してしまう可能性があります。赤ちゃんが前のめりになってしまう姿勢にしないよう注意してください。

乳首を深く咥えさせる

授乳がうまくいかない原因のひとつに、ママの乳首が赤ちゃんの口にうまく入りきっていないことが考えられます。

縦抱き授乳の場合、赤ちゃんの口がママの乳首の目の前にあるので、深く咥えさせやすい姿勢といえます。新生児のころは、まだ自分の力だけでは乳首を深く咥えることはできません。赤ちゃんがおっぱいを吸う意欲を見せたタイミングを見計らい、ママの手で誘導してあげましょう。

お尻がズレ落ちないように手で支える

まだ首がすわっていない赤ちゃんの授乳となると、どうしても首を支えることだけに意識が集中しがちですが、新生児が不安定なのは、首だけではありません。

赤ちゃんもおっぱいを飲むことに集中しているので、お尻がママの太ももからずり落ちても自分で位置を直すことができません。そのまま授乳を続けると、赤ちゃんは苦しい姿勢のまま、おっぱいを飲むことになります。乳首をうまく咥えさせることができたら、空いた手でお尻を優しく支えてあげましょう。

赤ちゃんが縦抱き授乳を嫌がる場合

赤ちゃんにも個人差があるので、すべての赤ちゃんに縦抱き授乳が効果的というわけではありません。赤ちゃんが縦抱き授乳を嫌がる場合には、どのような原因があるのでしょうか。

赤ちゃんが嫌がる原因とその対策についてご紹介します。

横抱き授乳が好き

慣れていない姿勢でおっぱいを飲むことに抵抗する赤ちゃんもいます。特に初めて縦抱き授乳をしたときには、おっぱいを咥えようとしない赤ちゃんもいるでしょう。

横抱き授乳でなら飲んでくれている場合には、縦抱きを無理強いせず、横抱き授乳をしてあげてください。何度か縦抱き授乳を試しているうちに吸い始めてくれるかもしれません。

口の高さがしっくりこない

ママが、赤ちゃんが咥えやすいであろうと判断した高さでも、赤ちゃんからしてみると、飲みづらい高さになってしまっている可能性があります。

一度は咥えようとするけど、その後抵抗する場合には、赤ちゃんが思っている位置におっぱいがないのかもしれません。クッションやタオルを増やしたり減らしたりして、赤ちゃんが納得する高さを探ってみましょう。

縦抱きかどうかではなく、授乳が嫌

縦抱き授乳をすることに抵抗したわけではなく、授乳自体に抵抗していることもあります。

私の娘は、生後2ヵ月頃まで、直母(直接おっぱいから母乳を飲む)に抵抗を示す赤ちゃんだったので、授乳の姿勢が縦抱きかどうかは関係なく、どんな姿勢で授乳しようとしても嫌がられたつらい過去があります。

縦抱き授乳を嫌がっているかどうかを知るためには、他の姿勢での授乳を試してみるのが一番です。他の姿勢にしても飲まない場合は、授乳をしてほしいタイミングではなかったということでしょう。

首がすわり前の縦抱き授乳のメリット

まだ首がすわっていない新生児からすることのできる縦抱き授乳には、どんなメリットがあるのでしょうか。少しずつ紹介してきていますが、まとめるとこのようなメリットがあります。

  • 赤ちゃんが乳首を咥えやすい
  • 吐き戻しが少ない
  • 母乳の飲み残しが少ない
  • ママの姿勢が楽

それぞれのメリットについて、詳しく説明していきます。

赤ちゃんが乳首を咥えやすい

縦抱き授乳の場合、赤ちゃんの口の正面にママの乳首を持っていくことができるので、赤ちゃんが乳首を咥えやすくなります。

小柄な赤ちゃんは、特に乳首を深く咥えることがうまくできず、なかなかおっぱいを吸うことができないことがあります。横抱きの姿勢などで、乳首を咥えることに苦戦する赤ちゃんでも、縦抱きにするとうまく咥えられることがあります。

私の娘は、小さく産まれてきたため、おっぱいを吸う力が弱く、なかなかおっぱいから母乳を飲むことができませんでした。そのため、搾乳した母乳を哺乳瓶で飲ませていたら、今度は哺乳瓶で飲むことに慣れてしまい、吸う力がついてきてからも、おっぱいから直接母乳を飲んでくれませんでした。

授乳のたびに、おっぱいを吸ってくれないかを試し、結局は哺乳瓶で飲ませることを繰り返すことおよそ2ヵ月。ようやく母乳はおっぱいから飲むものだということを理解してくれ、縦抱き授乳でならおっぱいを咥えてくれるようになりました。

縦抱き授乳で飲めるようになってからは、おっぱいの咥え方を自分なりに習得したのか、どの授乳方法でも直接おっぱいから母乳を飲んでくれるようになりました。

母乳の飲み残しをなくす

いつも同じ姿勢や同じ角度で授乳していると、赤ちゃんが母乳を飲み残してしまう場所がでてきます。母乳の飲み残すと、母乳の出が悪くなるだけでなく、乳腺が詰まりやすくなり、乳腺炎を引き起こすことがあります。

普段、横抱き授乳をしている人も、ときには縦抱き授乳などの違う姿勢での授乳を織り交ぜることを意識してみましょう。様々な角度から吸われることで、母乳の飲み残しがなくなり、母乳が出やすくなります。乳腺もつまらなくなるので、乳腺炎を未然に防ぐことにつながります。

吐き戻しが少ない

授乳のあと、必ず赤ちゃんにゲップをさせるよう指導を受けますよね。

このゲップは、この母乳と一緒に吸い込んだ空気を排出するためです。ゲップをさせないと、空気と一緒に母乳を吐き出してしまったり、吐いたものが逆流して気道に詰まったりしてしまう恐れがあります。

横抱き授乳の場合、乳首の咥え方によって、母乳と一緒に空気を吸い込んでしまうことが多くありますが、縦抱き授乳の場合、赤ちゃんが乳首を正面から咥えられるので、母乳と一緒に空気を吸い込むことが少なくてすみます。そのため、吐き戻しをする可能性もぐっと少なくなります。

ママの姿勢が楽

生まれたばかりの赤ちゃんに授乳するときは、赤ちゃんもうまく乳首を咥えることができなかったりして、どの姿勢で授乳するべきか、試行錯誤する日々が続きます。

始めは、赤ちゃんがおっぱいを吸える体勢を優先せざるをえないので、ママは普段使わない筋肉を使ったりして、筋肉痛になることもしばしばです。また、肩こり、腰痛との戦いも続きます。

そんななか、縦抱き授乳は、ママが楽な姿勢で授乳できる数少ない授乳方法でもあります。縦抱き授乳は、ママが前のめりの姿勢をとる必要がないので、背もたれにもたれることも可能です。

赤ちゃんの頭から首にかけて、後ろから手で支えるだけでいいので、赤ちゃんがうまくおっぱいを吸い始めたら、ママはリラックスした姿勢で飲み終わるのを待つことができます。

母乳育児の場合、授乳は1年以上続きます。苦痛な姿勢を続けていると、ママの体にもよくありません。縦抱き授乳でなくてもかまいません。赤ちゃんが少しずつ授乳に慣れてきたら、次はママが楽な姿勢でできる授乳方法を模索してみましょう。

縦抱き以外の授乳方法

母乳の飲み残しや乳腺の詰まりを防ぐためには、様々な角度で授乳することがおすすめです。

ここまで紹介してきた縦抱き授乳以外には、どんな授乳方法があるのでしょうか。いろんな授乳方法を知り、ママと赤ちゃんの双方に合った授乳方法を探してみましょう。

横抱き授乳

首がすわる前の新生児は、横抱きをして過ごすことが多いため、授乳の姿勢でも主流となっているのは「横抱き授乳」です。

赤ちゃんを横抱きした状態で、授乳する側の手を赤ちゃんの頭の下に差し込んで、その腕で赤ちゃんの頭を支えます。腕で、ママのおっぱいの高さまで頭を引き寄せて授乳します。

赤ちゃんがまだ小さい場合には、授乳クッションなどを利用して、高さを調整すると、ママの姿勢が少し楽になります。赤ちゃんの表情を見ながら授乳ができるので、きちんとおっぱいを飲めているか確認しやすく、授乳に慣れる前の新生児にはおすすめの授乳方法です。

ただし、赤ちゃんの表情を確認することを意識するあまり、ママの体勢が前のめりになり過ぎることがあります。猫背が進行してしまい、肩が凝りやすくなるので、授乳中は特に背筋を伸ばすことを意識することが重要です。

フットボール抱き授乳

赤ちゃんをラグビーボールのように小脇に抱えて授乳する「フットボール抱き授乳」は、「ラグビー抱き授乳」と呼ばれることもあります。

授乳する側の脇の下に赤ちゃんの体がくるようにして、頭だけをおっぱいの方に出します。赤ちゃんの足はママの後ろ側に向いています。

授乳する側の腕で、赤ちゃんの背中から頭にかけて支えますが、授乳クッションや布団で赤ちゃんの頭と背中の高さを調整することで、ママの姿勢も楽になります。

横抱きよりは、乳首を正面にとらえられるので、横抱き授乳ではうまく乳首が咥えられない赤ちゃんや、首がすわる前の赤ちゃんに縦抱き授乳をすることに不安を感じているママにはおすすめの授乳方法です。

1ヵ月検診や新生児過程訪問の際に、おっぱいをうまく吸うことができなかった娘の相談をした際に試すことを勧められたのが縦抱き授乳とフットボール抱き授乳でした。赤ちゃんが少しでも正面から乳首を吸える体勢にしてあげることが重要なようです。

交差横抱き授乳

横抱き授乳に似ているのですが、授乳する側とは反対の腕で赤ちゃんの首から頭にかけてを支えながら、ママの体に引き寄せて授乳する方法を「交差横抱き授乳」といいます。

横抱き授乳とは、赤ちゃんの体を引き寄せる腕が反対になるだけの違いです。こう記述すると、横抱きと変わらないように感じるかもしれませんが、赤ちゃんの顔の向きが変わるので、横抱きとは違う部分の母乳を吸ってくれます。

横抱きのまま、ママの手を入れ替えるだけなので、縦抱き授乳やフットボール抱き授乳はハードルが高いと感じているママにはおすすめです。

まとめ

母乳育児をする場合、授乳とは長いお付き合いになります。まだ母乳を飲むことに慣れない赤ちゃんと、母乳を飲ますことに慣れていないママ。2人で試行錯誤する日々が続きますが、いろんな授乳方法を知り、どんどん試してみてください。

どの姿勢が赤ちゃんが飲みやすそうにしているか、また、どうやって授乳をすればママの姿勢に無理がないかを探りましょう。きっと双方がしっくりくる授乳方法があるはずです。

私の娘は生後2ヵ月までおっぱいを吸うことができなかったため、1日10回近くある授乳の時間が精神的苦痛でなりませんでした。

せっかく母乳を飲ませようとしているのに、おっぱいを見て泣かれるのは、ママとしては本当につらいものでした。ミルクに頼る日もありました。あえて、赤ちゃんにおっぱいを見せない日もありました。横抱き、縦抱き、フットボール抱きなど、あらゆる授乳方法を試し、試行錯誤を続けることで、ようやく2ヵ月後から直接授乳実現しました。

赤ちゃんとママに合う方法が見つかるまでは我慢の日々が続くかもしれません。ママが追い詰められた顔をしていると、赤ちゃんにもそれが伝わってしまいます。たまにはミルクを飲ませるなどして、ママの気持ちを落ち着けた状態で、赤ちゃんと向き合うようにしましょう。

ママが笑顔で迎え入れることで、赤ちゃんも落ち着いた気持ちで母乳を飲んでくれる日が近づいてきてくれることでしょう。