近年、病院によっては出産件数の約半分をしめていたりするほど一般的となった帝王切開分娩。
予定帝王切開での出産の場合は、事前に調べている方や産科医や助産師に質問相談している場合も多いですが、何らかの理由で緊急帝王切開になった場合、産後の身体はどうなるの?と不安に思う産婦さんも多いと思います。
今回は、帝王切開の産後の回復と帝王切開ならではの産後ケア方法について、助産師として勤務していた筆者の経験を交えてお伝えしていきます。
帝王切開で一番気になる傷の回復とケア方法は?
帝王切開と聞いて、一番気になるのは産後の傷の回復はどのくらいかかるのか、
- 痕はどれくらい残るの?
- 何か特別なケア方法はあるの?
ということではないでしょうか。
傷の回復経過とともに、傷のみのケア方法についてご紹介します。
傷の回復は産後1ヶ月程度はかかる
帝王切開の場合、退院は多くの病院の場合、1週間程度で退院となります。ということは、切開部分の傷は1週間程度でくっついてしまうということです。
ですが、完全に治っているかどうかは別のお話です。完全に傷が治るまでには個人差も大きいですが、おおよそ1ヶ月程度と言われています。
特に表面の傷は見えていて回復もわかりますが、お腹の中や子宮の傷は見えなく、回復具合もわかりづらいです。
経膣分娩の場合でも最低1ヶ月は無理をしないよう過ごすと言われているので、帝王切開の場合は、傷が痛む、疲れやすいなどあるようなら、1ヶ月とは言わず、すぐに横になれるような環境で長めに休むようにしましょう。
回復とともにかゆみがでてくることもある
多くの帝王切開後の褥婦さんから聞かれることですが、傷が痒いという症状を言われることがあります。
切り傷などもそうですが、回復の過程で、ある程度のかゆみがでてくることは自然の回復過程ではよくあることです。
ただし、帝王切開の傷というのは腹部にあり、汗をかきやすい場所・蒸れやすい部位であることに加え、産後は新陳代謝も活発になるだけでなく、赤ちゃんの授乳や抱っこで体温の高い赤ちゃんが胸部~腹部にくっついていることが多く、それも汗をかく要因となっています。
その汗や蒸れなどで、余計にかゆみを増強してしまうことがあります。
通気性のよい衣服にする、こまめに汗を拭き取るなどの対処方法でも改善しなく、痒みがひどい場合は、傷の状態にもよりますが、かゆみ止めの軟膏などを処方してもらえるので、1ヶ月健診などで産科医に相談しましょう。
傷痕は横切開の方がめだたない
どうしても切開創なので、帝王切開の傷は痕が残ります。また、体質によっては傷部分が盛り上がったようになりケロイド化してしまうこともあります。
お腹に対して縦の切開創より、横の切開創の場合の方が傷は目立たなくなりますが、横で切開する場合はほぼ予定帝王切開の場合です。緊急帝王切開の場合は、早く赤ちゃんを出してあげることを目的とすることから、縦の切開創となることが多いです。
選択出来る状況であれば、横でお願いしますと希望を伝えておくことも大事です。
ケロイド化予防はクリームやテープ保護を
傷痕をできるだけ目立たなくしたいというのは、女性なら誰もが思うことでしょう。
ケロイド化予防のために、クリームを傷に塗ったり、テープを貼るという方法があります。クリームは主に乾燥を防いで保湿をする目的で使われ、テープは傷口を引っ張られないようにぴったりと皮膚を合わせ、感想や紫外線から保護するという目的で使われます。
クリームは市販のボディクリームでよいですが、乾燥予防ということでマタニティ時の妊娠線予防に使っていたクリームなどがより、保湿力もあり効果的です。これは前述した傷の痒み予防にもなります。
テープは刺激の少ない、粘着力のある医療用のテープをつかいましょう。筆者が助産師として働いていたときによく傷の予防で使用されていたのは、マイクロポアという医療用テープでした。
他にも通気性がよいテープや、目立ちにくいテープなど医療用のテープは様々あります。選ぶ上で一番大事なことは自分の肌に合うものを選ぶということです。
そして正しい貼り方で貼りましょう。せっかくのテープ保護もやり方が間違っていたら効果はありません。貼り方をご紹介していきます。
- 切開創の両側の皮膚を引っ張り合わせる
- 引っ張り合わせた皮膚を、切開創と垂直になるようにテープで固定する
- 隙間を作らないように、①②を繰り返し傷全部がしっかりと隠れるまで保護する
どうしても気になる場合は皮膚科や美容形成へ
どんなに予防対策をしていても、体質的にケロイド化してしまう場合もあります。
どうしても気になる場合は、産婦人科ではなく皮膚科や美容形成科に相談してみるとよいでしょう。
帝王切開の場合、お腹のたるみ改善や産後ダイエットはいつから?
産後ケアで傷以外に気になることは、お腹のたるみやいつからダイエットしていいの?など体型についてのことではないでしょうか。
- お腹っていつから締めていいの?
- 骨盤って帝王切開でも歪むの?
- ダイエットってしてもいいの?
など帝王切開後の体型改善について回復過程とともに紹介します。
帝王切開もお腹の膨らみ、骨盤の歪みは変わらない
出産後、お腹の膨らみはすぐにぺたんこになると思っていませんか?それは大きな間違いです。
出産後、確かに赤ちゃんと羊水や胎盤が出た分はお腹がへこみますが、そもそも赤ちゃんがいた子宮はある程度しかすぐには縮まりません。だいたい6~8週間程度かけて妊娠前の大きさに戻るのです。
つまり、出産後もお腹の膨らみは多少あり、まだお腹に赤ちゃんがいるみたい!と表現される褥婦さんは多くいます。
そして、それは経膣分娩でも帝王切開でも差はないです。
同様に骨盤の歪みも見た目ではわからないですが、出産方法に関わらず妊娠によってかなり歪みが生じています。
産後の浮腫み対策には弾性ストッキングを
産後はホルモンの影響や授乳などで夜間も起きていることが多いので、特に下半身と指先に浮腫がでてくる人が多いですが、この症状に関しては、帝王切開の場合の方が点滴などもしている影響で、より著明に浮腫みが出てくることが少し多いです。
浮腫みは徐々に良くなっていくので、歩けないほど下肢に浮腫みが出てくるなどのひどい場合以外は、それほど気にしなくても大丈夫です。
より早く改善する、ひどくならないように予防するには、弾性ストッキングを履いていると効果的です。妊娠中より使っていたものがあるのであれば、それを産後も使いましょう。
ご主人などに下肢の指先の方からリンパを流すようなイメージでマッサージしてもらうことも良いです。また、足浴や手浴といったように手足を温めることもいい方法です。
あまりにもひどい場合は、浮腫み対策の漢方などの処方もあるので、産科医に相談しましょう。
骨盤ベルトはすぐに締めても大丈夫
骨盤の歪みに対しては、切開部分に当たらず負担とならないのであれば、産後の入院中から締めても大丈夫です。
骨盤の歪みは、動けば動くほど歪みがひどくなっていくので、早くから矯正して行くことが大事ですが、まずは傷の回復を優先させましょう。
傷がしっかりとくっついていて、当たっても痛みを生じないのであれば使用し始めて大丈夫です。
骨盤ベルトはずっと締めていても良いものですが、しっかりと矯正したいのであれば3~6ヶ月程度は締め続けた方がよいでしょう。骨盤を矯正することで、内臓の位置が調節されて産後ダイエットにもつながります。
お腹のたるみ改善は最低でも1ヶ月健診後くらいから
出産後の下腹部のたるみは、経膣分娩でも帝王切開分娩でも気になるのは一緒だと思います。
お腹のたるみ改善のためのダイエットや腹帯で矯正を考えている場合は、産後すぐの腹帯で締め付けるのは、血流も悪くなるので控えましょう。
同じ腹帯でも、きつく締め付けず傷全体を保護するように弱い圧で締める程度ならば、傷を保護していることで産後の離床を促し、動きやすくしているので良いですが、その場合、腹帯はダイエットやたるみの引き締めが目的ではないので注意して下さい。
1ヶ月健診で回復も良好と診断を受けてから、必ず身体の調子を見つつ、腹帯での腹部矯正や産後ダイエットを開始することがよいでしょう。
ダイエットは母乳ダイエットがおすすめ
産後ダイエットは、1ヶ月健診後に体調に異常がなければ始めても大丈夫ですが、帝王切開の場合は無理をしないということが大事な約束です。
そもそも、産後の体型戻しは、半年をかけて妊娠前に戻るようにすることで、身体への負担がなくできます。よく芸能人などで、産後3ヶ月で戻しましたなどとテレビに出ていることもありますが、産後の身体への負担は大きく、オススメしません。
無理ない範囲でのダイエットは大丈夫ですが、何もしなくてもダイエットになることもあります。
それは母乳ダイエットです。
母乳を上げられない状況でないのなら、母乳育児をすることで児への栄養が優先され、個人差はありますが、みるみる痩せていくことができます。母乳育児をしているだけで、妊娠前よりマイナス体重になる人も多いです。
実は筆者もその一人で、母乳育児をしていただけで他は何もダイエットらしきものをしていませんでしたが、5ヶ月程度で妊娠前よりマイナス3kgになり、トータルでは13kg痩せました。
無理ない範囲で産後ケアを
帝王切開での出産の場合の産後ケアについてお話してきました。
女性なら傷や体型維持は気になるところではあると思いますが、産後は経膣分娩でもかなりの体への負担であり、帝王切開であれば尚更です。産後はもう自分だけの身体ではありません。自分が体調を崩せば困るのは赤ちゃんです。
無理のない範囲で、自分の身体を大事にしながら産後ケアをしていきましょう。