妊娠中、女性はお腹の赤ちゃんの成長とともに身体の変化だけでなく、出産や育児の準備などを通して徐々に母親としての意識を高めていきます。

ですが、男性は仕事もあり、休日に一緒に育児用品の買い物などをしてはいても、どうにも父親になる実感が漠然としているのが実際のところです。

そして、いざ出産となると陣痛の痛みで苦しむ妻を前に慌ててしまったり、何をどうしたらいいのかわからないということも。

今回の記事では、夫にしてほしい出産準備とは?夫だからこそしてほしい出産準備とは何かについて、助産師をしていた経験と、妻の本音をもとに説明していきたいと思います。

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妻がいなくても生活できるように

日本で出産の場合、経膣分娩でも4~5日程度、帝王切開であれば1週間程度の産後の入院があります。

つまり、出産するということは、産後の入院中に夫は一人で生活するということです。里帰り出産であれば、その期間は1~2ヶ月ともっと長くなるでしょう。

第2子の出産で手伝いが誰もいない場合は、上のお子さんのお世話もでてきます。

妊娠中の家事のお手伝いもして欲しいのですが、産後の入院中は仕事だけでなく、夫一人で家庭のことをしなくてはいけなくなる、一人で生活できるということが夫にしてほしい出産準備の一つになります。

物の場所を確認して覚えましょう

意外と普段は頼りっきりで、「あれどこ~?」なんて声をかけるだけで準備してもらえる生活に甘えてはいませんか?

まずは物の場所を確認しておきましょう。

郵便物の保管場所や印鑑の場所、上の子どもがいる場合は上の子どもの通園通学グッズの準備の仕方や置き場など、確認しておくべきことはたくさんあります。

妻がいない間、何が必要となる可能性があるのか、その場所はどこに保管しているのか、身の回りの場所を妊娠中から一緒に確認しておくことが大事です。


また、産後はお手伝いの人がいたとしても、ママは赤ちゃんのお世話でいっぱいな状況になります。

そのような時に「あれどこだっけ?」「これどこにしまうの?」なんて何回も声をかけられたら、ママは疲れているのに、さらに疲労とイライラを感じてしまいます。

筆者自身も3人の子どもがいますが、パパに「着替え出てないよ~どこから出すの?」と言われた時には「子どもじゃないんだからそれくらい自分で探してやって!」と怒り爆発したこともありました。


産後はママが「オムツ取って」、「これ置いてきて」など手伝ってほしいことがたくさんな状況になるので、そういう時にすぐ対応して手伝ってくれることが夫には求められるでしょう。

そういう意味でも物の場所の確認は必要なことになるでしょう。

日用雑貨の買い出しをしておきましょう

妻がいない間、仕事が遅くてスーパーやドラッグストアなどが開いている時間に帰宅できないという家庭も多いと思います。

食事に関しては、最低でも外食やコンビニなど数日間なら食費はかかりますが、代用ができるかと思います。

日用品の場合、最近のコンビニでは最低限は売っていますが、価格は高くなりますし、1個単位なので、すぐに消耗してしまいます。ネット購入もできますが、即日届くものばかりでもないですし、マンションでの宅配ボックスの利用などができなければ、受け取る時間内に帰宅できないということもあります。

出産間近になったら、日用品の在庫確認をして、必要なものは買い置きしておくことが一番よい方法といえるでしょう。



できれば食料品も買い置きしておいて、出来る範囲で自炊することをおすすめします。なぜなら、産後の育児で忙しい中、食事の支度をしてくれるという家事手伝いは、ママにとってかなり嬉しい手伝いの一つになるからです。

妊娠中から自炊の練習をしておくことも、イクメンパパへの一歩かもしれませんね。

洗濯、掃除もできるようになりましょう

食事についてはすでに触れましたが、洗濯、掃除も同様で、一人でできるようになることが求められます。

妻がいない間、洗濯物をためておいても、掃除をしなくても生活はできます。ですが、産後退院してきて、赤ちゃんもいる中、溜まった洗濯物や掃除もされていない散らかった部屋を見て、どう思うでしょうか。

産後は何度も話していますが、育児だけで本当に大変で、毎日睡眠不足な状態で疲労もたまっています。食事だけでも嬉しい手伝いですが、掃除や洗濯など家事を少しでも手伝ってくれたら、ママからは感謝しかないでしょう。

基本的な家事全般が一人でできるようになることは、妊娠中もですが、産後に家事手伝いができるということからも、夫にしてほしい出産準備の一つと言えます。

出産時に備えて必要な準備は産前・出産時・出産直後・産後で分かれる

いざ、出産というときに夫としての出産準備は何かというのは、産前の入院物品の確認、立ち会い出産するかどうかにもよるが出産時のサポート、出産直後の夫の行動、産後の4つの場合でわかれてきます。

産前は出産準備グッズの確認を

出産準備グッズとは、入院グッズや退院の日に主に使う赤ちゃんの着替えなどのことです。

自宅にいるときに陣痛が始まり、一緒に行く場合や、とりあえず先に病院に行くので荷物だけあとで持ってきてほしいという場合もあると思いますが、重たい入院グッズが入ったバッグなどを、陣痛や破水したなどの状況にある妊婦さんに持たせずに、夫が運ぶことが役割の一つとなります。

その時に、どれを持っていくの?なんてことにならないように、どれが入院グッズなのか事前に確認しておきましょう。



また、病院に到着すると産婦さんはすぐに、お産の進行具合を確認するための診察や着替えだと出産に備えての対応で忙しくなります。そして、入院の手続きや母子手帳、出産時の着替えを出して下さいなどの病院スタッフとのやりとりが同伴している夫に求められてきます。

その時に、すぐに物を出すことが出来るということが本当に大切になります。

筆者も助産師として病院で働いていましたが、保険証を準備して下さい、入院の手続きをするので診察券と入院に関する誓約書を提出して下さいなどと伝えても、「バッグのどこにしまっているのかわからないので、聞いてもらえますか?」というご主人が結構いました。中には、出産ということで慌ててしまって話が届かないご主人もいました。


まだ余裕がある場合はいいですが、陣痛で苦しんでいる産婦さんに「保険証どこですか?」と聞くなんて、相当酷なことです。

夫の役割として、入院グッズには何が入っているのか、どこに入っているのか確認しておくことが必要です。できれば、妊娠中に一緒に準備に携わってくことが産前にできる夫の出産準備と言えるでしょう。

出産時に備えた夫の準備は家でも練習を

基本的に立ち会い出産とは、本当に生まれるよという直前の場面に立ち会うかどうかのことを言います。

里帰り出産や産婦さんが希望しないという場合は別ですが、「立ち会い出産をしなくても、陣痛で苦しんでいるときは傍でサポートしてほしい」ということを夫の役割として強く求めます。

助産師として、また3人の出産を経験している母としての経験上、本当のもうすぐ生まれるというときの立ち会い時よりも、長時間陣痛で苦しんでいるときの身体的精神的サポートをしてくれるかどうかで、かなりお産の進行具合は変わってきます。



そして、産婦さん自身のお産体験の捉え方も変わってきます。

お産体験なんてと思うかもしれませんが、満足のいくお産体験が出来なかった場合、その後の育児にも影響するという研究結果も出ているのです。

夫である皆さんが思っている以上に、苦しい時に傍にいてサポートしてくれることが産婦さんのリラックスへ繋がり、陣痛の進行にはリラックスするということがかなり重要になります。

もちろん傍にいるだけで寝てるなど何もしないのでは、産婦さんへのストレスを溜めてしまうだけなので、その時に何をしたらいいのか、どんな役割があるのかを以下にリストにします。

  • 痛いという部分の腰や背中を陣痛がきているときにさする、または指圧する
  • 汗を拭いてあげる
  • 産婦さんが適切な呼吸ができるよう一緒に促す
  • 必要時、肛門部分を拳で押す
  • 産婦さんの背面にきて背もたれになったりと、楽な姿勢ができるよう支える
  • 水や食事の摂取を促す、自力で食べられないような場合は食べさせてあげる
  • 手を握る
  • 頑張りを労う


立ち会い出産する場合もできることは上記のようなことになりますし、出産直前の場面では医師や助産師からの指示も入るので、それに従って行動しましょう。

そして、これらのサポート役割や出産時にすぐできるようになるには、一緒に両親学級に出てお産の流れを学んだり、満期に入ってからでもいいので家でスキンシップを兼ねて指圧の練習をしてみるというようなことをオススメします。

これが出産時の夫の出産準備です。

出産直後は自分だけ興奮しない

出産直後は赤ちゃんが生まれた喜びで歓喜していることと思います。ですが、夫自身が興奮して赤ちゃんに夢中になって撮影をしていたりする場面もよく見てきました。

赤ちゃんの撮影もとても大事なことですが、まずは産婦さんへの労いと感謝をして下さい。その一言だけでも産婦さんの気持ちはかなり違うのです。

そして、自分だけで喜ぶのではなく一緒に喜びを分かち合って下さい。それが家族のスタートです。



それから、赤ちゃんの大事な記録として撮影しましょう。

ただし、撮影も自分の携帯でばかり撮影しているご主人をよく見かけました。もちろん写真もデータとして送れますが、やっぱり産婦さん自身の携帯でも生まれた直後は撮影してほしいというのが本音です。

そして、どのような写真を記録として残して欲しいのかということも夫婦で事前に話しておくことが出産直後の夫の準備となるでしょう。生まれた直後の写真はその時にしか撮れません。「なんでこんな写真ばっかり!」と言っていた産婦さんもよく見かけました。

出産直後で夫自身も興奮しているための行動なのですが、せっかくの赤ちゃんの記録となるものですから、どのようなアングルで撮影したいかなど納得できる写真を残してほしいと思います。

オススメとしては、家族3人で撮る写真と、可能であれば体重を計っている数値入りの写真を1枚でもいいので残しておくといいと思います。



最後に、産婦さん自身は、出産直後は数時間安静が必要になります。

その間に生まれたことを親戚などに生まれた報告をすることが夫の役割となります。だれに連絡をしたらいいのか、事前にリストアップしておくことが出産直後に必要な夫の準備となるでしょう。

産後に必要な出産準備は手続き類の確認

産後の夫に求められる役割は、育児への協力はもちろんですが、手続き関係になります。

産後すぐはママは赤ちゃんのお世話で大変なだけでなく、まだまだ身体が回復していない時期なので、外出は控えてほしい時期です。

そのような時に、夫には必要な手続きをしてほしいので、どの手続きがいつどこでできるのかなど事前に確認してリストアップしておくことが産後に必要な夫の出産準備になります。

以下の6つが出産した人全員に関係する手続きになりますが、それ以外にも対象となる手続きがたくさんある場合があるので、調べてみるとよいでしょう。

  • 出生届提出
  • 出生した児の健康保険の加入
  • 乳幼児医療費助成の申請
  • 児童手当給付金の申請
  • 出産育児一時金の申請
  • 出生連絡票の提出


夫の役割を理解して準備しようという気持ちが大事

赤ちゃんが生まれ家族が増える、その時に生まれた後の育児を協力するのはもちろんですが、それ以外に妻がどんなことをしてほしいと思っているのかをもとに、夫の出産準備についてお話してきました。

お話した全てのことができなくてもいいと思います。

夫としてできる役割を担うために、自分で準備する、準備しようとする、その姿勢や気持ちだけでも出産を控えている妊婦さんの気持ちはかなり変わり、穏やかな気持ちで出産に望めるでしょう。

家族みんなで協力して、赤ちゃんを迎える準備をする、そんな幸せな家庭にしてもらえたらと思います。