銭湯に入ると心も身体もリラックスして、気持ちがいいものですよね。

出産したらゆっくりとお湯に浸かるなんてことができないから、今のうちに行きたいな…と思っている妊婦さんも多いのではないでしょうか。

あるいは自宅の給湯器が壊れてしまって、なかなかお湯につかることができずストレスがたまっている…銭湯につかってリラックスしたいという妊婦さんも中にはいるかもしれませんね。

でも、妊婦が入浴してもいいのかな…、何かに感染したり、お腹の赤ちゃんに影響はないのかな…など心配する声もあります。

ここでは妊婦が銭湯に入ってもよいのかどうか、また入浴する時の注意する点についてお話します。

スポンサーリンク

妊娠中に銭湯に入って大丈夫?妊婦はダメなの?

温泉についての決まりが書いてあるのが温泉法というものですが、2014年に環境省によって、入浴を避けるべき禁忌症から妊婦が外されました。

1982年に妊婦が入浴を避けるべきという定めになったのですが、その科学的根拠が乏しいため、外されることになったのです。

具体的には「妊娠中(特に初期と後期)」という文言が削除されたわけですが、そもそもなぜ妊婦は入浴を避けるべきとなっていたのでしょうか。

詳しいことはわかっていませんが、大正時代に高温で長湯することから妊婦の身体に影響があったとされています。

しかし日本温泉気候物理医学会によると…

“学会は、国内外にある入浴や温泉と妊婦の健康についての論文を改めて検証。心拍数や体温上昇に関する報告はあったが、危険性を示すものは一件もなかった。これらの結果を環境省に報告したことが、今回の見直しにつながったという。”

ということでした。これにより、妊婦が禁忌対象から外れることになったのです。

そうはいっても、銭湯ではまだ妊娠初期と後期は入浴禁忌という文言が入っているところが多いのです。

これはお店の内情が含まれていると受け取とれます。実際普通の人より入浴時に万が一の事態が起きる可能性が高く、様々なリスクがある妊婦は、お店側として負うべき責任が重いため、なるべくなら入らないでほしいという思惑があるのでしょう。

サウナは?

妊婦が温泉禁忌対象から外れたとはいえ、なんでも大丈夫という訳でもありません。

例えば、サウナですが、高温の場所にいることになるので、体内の深部温度が上がり、血圧の変動が激しくなります。妊婦はお腹の赤ちゃんに血液を送っているので、ただでさえ貧血気味。そこに血圧変動によりさらに貧血を起こしやすくなり、転倒する危険性が高まります。

また、血行をよくすることがメリットのサウナですが、血行がよくなる=心臓も活発になります。それだけ心臓に負担がかかるため、母体やお腹の赤ちゃんには決してよいとは言えません。

さらには大量の汗をかくので血液濃度があがり、ドロドロの血液になりがちです。下手をすると脱水状態になりかねません。


これらを考慮すると、サウナは控えた方がよいと言えるでしょう。実際、銭湯の中にあるサウナの注意書きにも妊婦はご遠慮くださいと書いてあるところが多いようです。

どうしても入りたいという場合は、身体の表面温度だけ上げる感じで、さっと短時間ですませるほうがよさそうです。

水風呂や岩盤浴は?

では水風呂や岩盤浴などはどうでしょうか?

水風呂も避けたほうがよいでしょう。というのもサウナと同じく、血圧の変動が激しくなるからです。また、身体を冷やしてしまうので子宮も収縮しがちです。


岩盤浴は賛否両論の意見があります。

入って大丈夫という意見には、入ってリラックスできて気持ちよかったというものや、短時間なら大丈夫というものがあります。

入らない方がよいという意見には、血圧の変動や脱水症状を起こしかねないというものや、雑菌が繁殖しているので感染リスクが高いという意見があります。

用心をするという意味で、岩盤浴にあえて入る必要はないと思いますが、どうしても入りたい、リフレッシュしたいというのであれば、いつもの半分の時間以下で、さっと済ませるのがよいでしょう。

実際、岩盤浴は大量の汗をかきます。さきほどのサウナと同様、心臓への負担や脱水症状・貧血を起こしやすい環境であることは間違いありませんので、それらをよく考慮しながら入るかどうか決めてみましょう。

ラジウム銭湯は?

ラジウム銭湯=ラドン銭湯は微量の放射線がでているものですが、人体に影響がない程度なので、そこは心配する必要はなさそうです。

が、こちらも水風呂やサウナと同様、血圧などのことを考えて、短時間ですませたほうがよいでしょう。

感染することはある?

温泉浴が感染の原因であることは低いと言われています(※1)が、脱衣所や洗い場の椅子など、肌がふれるところはそうとも言い切れません。

ただ、妊婦に限らず、レジオネラ菌に感染することは成人男性でもあることですので、不特定多数の人が出入りする銭湯や温泉はそういうものだという認識でいたほうがよいですね。

気になるようであれば、

  • 脱衣所などでは衣類を直接床に置かない
  • 洗い場の椅子は座る前にシャワーで流す
  • 浴槽の縁に腰掛ける時は自分のタオルを一枚ひいてから座る

などの対応をしてみましょう。

※1参照元:日産婦医会報(平成22年2月号)「妊婦と温泉」

お湯の成分や効能は影響する?

お湯の成分や効能が、母体やお腹の赤ちゃんに直接影響するということはないです。

むしろ、肩こりや腰痛などによいとされているので、お腹の赤ちゃんを支える妊婦の傷めがちな腰や肩にメリットがあると言えます。ただ、匂いやぬめりなどがあるお湯は、つわりや肌への刺激等を考慮しておいたほうがよいですね。

妊娠初期は?

妊娠の初期はつわりなど体調が安定していない時期ですので、体調がすぐれない時は控えたほうがよいです。

転倒による流産の危険性も否定できませんし、普段と違う環境で身体が慣れていないため、ちょっとした匂いや刺激にも敏感に反応しがちです。

妊娠後期は?

妊娠の後期はなによりも転倒に注意が必要です。

お腹もでてきて身体のバランスがとりづらくなります。足元も見にくくなるため、段差のある階段は手すりにつかまるなどしましょう。

妊婦が銭湯に入浴の際の注意点

以上から、妊婦が銭湯に入浴する際は次のことに気をつけて入ると良いですね。

血圧変動

あまりに低い又は高い温度の入浴は避けたほうがよいです。血圧が変動して、貧血を起こし転倒につながる可能性があるからです。

転倒に注意

入浴場の床は濡れていて滑りやすいため、転倒に十分注意しましょう。

また、泉質によってはヌルヌルしているものもありますね。そういったところでは余計にツルッと滑りやすく、万が一転倒してお腹を強打してしまっては大変です。よく足元を見て、また、泉質がヌルヌルしているところは避けたほうがよいでしょう。

同様に、底が見えない色のついたお湯などにも入る時は十分気をつけて、手すりにつかまりながらゆっくりと身体を入れましょう。

長湯はしない

長湯をするとのぼせて頭がぼーっとなり、立ちくらみでフラッと倒れてしまうことが無いとも言えません。長湯は身体への負担も大きくなります。

入浴する時は10分程度を目安にしましょう。10分経ったら、あがってしばらく身体を休ませて、また入りたい場合は入るようにするとよいですね。

肌への刺激に注意

妊娠中は身体の変化に伴い、皮膚も変化していきます。それまでなんともなかったような刺激にも敏感に反応してしまうことだってあります。

刺激の強い電気風呂やジェット風呂、硫黄泉などはそういった面からもあまりオススメしません。

肌がかゆくなったり荒れてしまったりしては大変です。そうでなくても、入浴中になにか肌の違和感を感じたのなら、すぐに上がって、シャワーでよく洗い流しましょう。

できれば1人でなく付き添いの人と一緒に

友人や家族など、できれば1人で入るよりも誰か付き添ってくれる人がいると安心ですよ。

ちょっと足元を滑らせてバランスを崩してしまった時でも、さっと手を添えて支えてくれる人がいることは大きな安心になります。また、万が一気分が悪くなってその場から動けなくなってしまった時でも、一人でいるよりも誰かいてくれた方が助かりますよね。

気になる場合は入る時間帯に工夫を

不特定多数の人が出入りする銭湯だから感染の心配が…という場合、なるべく開店と同時か早めの時間帯に入浴するとよいですね。

大体の銭湯は15時過ぎから開店なので、ちょっと早めのお風呂という感じで入ってみてはいかがでしょうか。

早めの時間帯ならまださほど人もいなくて、お湯も新鮮なのではないでしょうか。周囲の目を気にせずに楽しむことができそうですね。(ただし、帰宅して夜寝るまで湯冷めには注意してください。)

まずは近場の銭湯に

せっかくだから気分転換も兼ねてちょっと遠出して…と自宅やかかりつけの産院から遠く離れた場所の銭湯はあまりお勧めできません。

万が一なにかあった時、すぐに病院に行ける距離の方が安心です。まずは自宅や産院から近い場所の銭湯を探してみてはいかがでしょうか。

私も近所の銭湯に聞いてみました

私の家の近くにある銭湯は実際どうなのだろうと思い、近所の銭湯に電話で聞いてみました。すると以下のような回答でした。

  • 注意書きに妊婦はご遠慮くださいという趣旨の内容は記載していない
  • 店側としてはなにかあった時に責任はもてない
  • 妊婦の方も利用しているが、個人の責任で入浴している
  • 安定期に入った方は利用している人もいるが、妊娠初期はやはりやめたほうがよいと思う

この回答から、店側として全面的に入浴禁止とまではいかないが、あくまで個人の責任において判断した上で、ということが前提にあることわかりました。

まとめ

いかがだったでしょうか。妊婦が銭湯に行くと、入浴中の方々の周囲の視線(転倒に気をつけてねという視線や大丈夫かしらという心配な視線など…)がちょっと痛い、なんてことがあるかもしれませんね。また、必要以上に周りから声をかけられることもあるでしょう。

温泉法が32年ぶりに改正されたとはいえ、実際銭湯の注意書きには「妊婦の方はご遠慮ください」という文言が入っているところもありますし、周囲の妊婦に対する認識もある部分では仕方のないことではあります。


でも、銭湯に入ることで身体の疲れがとれてリラックス効果を得られ、不安定な女性ホルモンのバランスが整えられるのだとすれば、一概に妊婦は全て銭湯を控えたほうがよいとは決して言えません。

銭湯にいくことでマタニティーブルーが解消されるのだとすれば、銭湯も上手に活用していきたいですものね。

赤ちゃんが生まれたら銭湯や温泉でゆっくり湯船に浸かるなんてことは、そうできることではありません。私も銭湯や温泉が大好きですが、子育て最中ゆっくり楽しむなんてことは滅多にありませんでした。

通われている産院の担当医に相談の上で、自己責任の元、短時間でもリラックスを得ることができる入浴の仕方で銭湯を楽しんでみてください。