妊婦健診時に、産科医に「腰痛が辛い」「足が痛い」と話しても、「妊娠中はよくあることだから、酷くなるようだったら・・・」なんて言われた経験のある妊婦さんも、少なくないのではないでしょうか。
中でも、腰だけでなく、おしりや太ももまで電気が走るような痛みやしびれがあって歩けないという妊婦さんは、坐骨神経痛になっている可能性があるので、要注意です。
そのまま放っておくと、産後も治らず、一生続いてしまうことさえあるんです。
でも、大丈夫!きちんと対処すれば、症状を和らげ、順調に回復することができますよ。
妊娠中の腰痛の原因になる坐骨神経痛って何?症状は?
坐骨神経痛・・・聞いたことはあるけど、いまいちよくわからないという人、けっこういますよね。
坐骨神経痛とは、その名の通り、骨盤近辺にある坐骨神経という神経が、何らかの原因によって痛みが発生している状態で、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、子宮筋腫などの疾患によって起こる症状の名称です。
子宮筋腫などの内臓疾患は別ですが、その他の疾患は、骨盤周辺の筋肉が硬くなったり、筋肉の力が弱かったりといった筋肉が原因の場合や、背骨や骨盤、股関節などの歪みや変形が原因になる場合が多いようです。
人によって症状に違いはありますが、腰、おしり、太もも、ふくらはぎ、足先に、筋肉痛のような軽い痛みがあったり、電気が走るような痛みやしびれが生じます。股関節がきしむように痛くなることもあります。
人によっては、何の前触れもなく激痛が走ることもあり、酷くなると歩けない状態になることも少なくありません。
「妊娠してから腰(足)が痛くて歩くのが辛い!」そんな妊婦さん、多いですよね。
腰が痛くなるのは坐骨神経痛の症状のひとつですが、妊婦さんの場合、本来の坐骨神経痛の原因とは違い、「姿勢・体型の変化」と「リラキシンという女性ホルモンの影響」が主な原因になります。
リラキシンという女性ホルモンって何?
リラキシンとは、子宮弛緩因子とも呼ばれる、胎盤、卵巣や子宮から分泌されるペプチドホルモンのひとつで、妊娠超初期~初期、後期に特に多く分泌される女性ホルモンです。
妊娠が確定したその時から、赤ちゃんの成長に伴い子宮が大きくなりやすいように、子宮を支えている靭帯を緩めるように、脳が指示を出します。
さらに、初期~後期にかけて、子宮が圧迫されないように、臨月になると、よりスムーズに赤ちゃんが産道を通ることができるように、さらに骨盤を開く必要があるため、骨盤にある靭帯を緩めるように、脳が指示を出します。
この、関節や内臓を支える靭帯を緩める働きをする女性ホルモンが、リラキシンと呼ばれるホルモンです。
このリラキシンによって靭帯が緩まることこそが、坐骨神経痛の原因になっているんです。
妊娠中における坐骨神経痛の原因
前途したように、妊婦さんが坐骨神経痛になる主な原因は、姿勢・体型の変化と女性ホルモンの変化によるものです。
妊娠中になってしまう坐骨神経痛の原因を簡単に表わすと・・・
子宮が大きくなる、おなかが前に出る、
体重の増加などの体型の変化
↓
姿勢に変化が起きる
↓
各内臓が圧迫される、骨が歪む
↓
坐骨神経に触れる、圧迫される
リラキシンホルモンの分泌量が増加する
↓
靭帯が緩まる
↓
子宮の位置が下がる
↓
坐骨神経に触れる、圧迫される
このように、非妊娠時と同じように、理由が違うものの、最終的には、坐骨神経に触れたり、圧迫されたりすることが坐骨神経痛の原因になっていることがわかるかと思います。
軽い痛みであれば、ストレッチや骨盤ベルトなどを使用することで、改善する場合もありますが、不安がある場合には、かかりつけの産科医に相談してみましょう。
症状によって、漢方を処方してくれる場合もありますし、酷い状態であれば、紹介状を書いてくれるので、整形外科で診てもらうのもひとつです。
坐骨神経痛と股関節痛の症状は勘違いされやすい?
少し話がずれますが、股関節が痛くなる妊婦さんも多いかと思います。
私は、若い時に股関節がずれてしまったことがあり、無理をすると、股関節痛が発生する状態でした。そんな中、妊娠中に股関節が痛くなったら、誰だって股関節痛だと思いますよね。
ところが、かかりつけの産科医に紹介状を書いてもらって、整形外科で診てもらうと、なんと、股関節は全く問題なく、坐骨神経痛だということが判明。
先生も私も「そうなんだ~!」とびっくりでした。
妊娠中は、坐骨神経痛と同じくらい股関節痛にもなりやすくなるので、症状を見るまでは、先生も、股関節痛だと思っていたようですが、症状を見て、すぐに坐骨神経痛だと気付いたようです。
その時の状態や人によって、痛みの出方に違いはありますが、股関節痛の場合は前側や外側、坐骨神経痛の場合は、後ろ側の足の付け根が痛くなるのが一般的です。
股関節痛に悩まされている妊婦さんは、何処が痛いのかによって、対処の仕方が違う場合もあるので、まずは、何処が痛いのかもう一度、確認してみてくださいね。
痛みを緩和したい!妊娠中に坐骨神経痛になった時の対処法は?
妊娠中の坐骨神経痛の場合、出産後にリラキシンホルモンの分泌量が減少すると共に、坐骨神経痛も治る場合がほとんどです。最初にもお話ししたとおり、産科医で相談しても、「妊娠にはよくあることだから」と、あまり取り合ってもらえない場合さえあります。
痛み止めの薬をだしてもらえることもありますが、漢方のビタミンBなどのような痛み止めなので、効果がある人もいれば、ない人もいます。ちなみに、私は全く効果がありませんでした。
とは言っても、妊娠中の残り数か月、何もしないで痛みを我慢するのも辛いですよね。
では、妊娠中の坐骨神経痛には、どんな対処法があるのでしょうか?
身体を温めて血行を良くする
お風呂・半身浴
お風呂に入り、全身の血行を良くするのが効果的ですが、気持ち悪くなるようであれば、半身浴でも大丈夫です。
血行が良くなることで、筋肉の緊張がほぐれると、痛みが改善する場合があります。しかし、温めることで、さらに痛みが酷くなる場合です。その場合は、神経が炎症を起こしている場合があるので、湯船に入らずにシャワーのみにしましょう。
歩く
身体を温めて血行をよくする1番いい方法は、歩くことです。
痛みが強い時は無理しない方がいいですが、横になるのは、本当に痛みが酷い時やお腹が張っているような時にしましょう。横になる時間が長くなると、筋肉がさらに固まったり、弱くなったりして、悪化してしまう可能性があります。
温湿布を貼る
温湿布を貼るのも血行を良くするひとつの方法です。
注意
しかし、妊婦さんの場合、市販の湿布はおすすめしません。
妊娠中には使用できない成分が含まれる湿布が多数販売しているので、産科医に相談したうえで、処方してもらうようにしましょう。
骨盤ベルトや骨盤クッションを使用する
坐骨神経痛の痛みに骨盤ベルトは、必須アイテムですね。
私は、坐骨神経痛になった妊娠時は、金銭的な問題があって、残念ながら、骨盤ベルトを購入できませんでしたが、産科医にも整形外科医にもすすめられたのが「トコちゃんベルト」でした。現在は「トコちゃんベルト2」も販売されていますね。
トコちゃんベルトの販売会社「青葉」から販売されている円座クッション「あぐら用クッション」を友達の所で座らせてもらったことがあります。腰に負担がかからずに姿勢を保つことができて、とても座り心地よかったです。
横向きに寝る
基本的に妊娠時は、仰向けやうつ伏せで寝るのは良くないので、横向きに寝る妊婦さんが多いかと思います。
横向きに寝る時に、痛みがある側を下にして寝るのはタブーです。血行が悪くなり、さらに痛みが悪化する可能性があるので、必ず、痛みのある側を上にして、背中を丸めて、膝を軽く曲げるようにして寝てください。
マッサージや鍼灸に通う
パートナーにマッサージをしてもらうのもひとつですが、痛みがある部分を軽くさする程度にしましょう。
妊娠時は、知識なくマッサージすると、刺激してはいけないツボを刺激してしまう可能性があるので、専門の知識のある人にしてもらうことをおすすめします。
ストレッチをする
これは、効果を得られる妊婦さんも多いですし、マタニティーストレッチをするのは、決して悪いことではありません。
しかし、坐骨神経痛になってしまった妊婦さんに、私はストレッチはおすすめしません。あくまでも私の場合ですが、痛さのあまり、お腹が張ってしまい、ストレッチはできませんでした。
産後にも坐骨神経痛がある人に効果的なストレッチ法
ほとんどの人が、産後には改善するはずの坐骨神経痛ですが、筋力が弱っていて、改善しない場合も少なくありません。
骨盤が開いている状態から正常に戻るまでの期間は、人によって違います。
無理をしないで、まずは骨盤クッションや骨盤ベルトの力を借りながら、少しずつ治すことが大切です。だからといって、いつまでも休んでばかりはいられませんよね。
少しずつでも改善している兆しがあるのであれば、骨盤を正常に戻すためのストレッチをしてみましょう。
- 足の裏を合わせて座る
- ゆっくり前屈をする→10秒
- おしりは床に付けたまま、身体を横に揺らす→往復10回
- 四つん這いになる
- 頭を下げて、背中を上に持ち上げる→10秒
- 頭を下げて、右腕と左足をあげて伸ばす→10秒
- 反対側(左腕と右足)も同様にして3セットを1日1~2回
他にも、さまざまなストレッチ方法がありますが、この2つが特におすすめです。
本来、股関節痛にいいといわれることが多いストレッチ法ですが、両足を肩幅に開いて、腰に手を当てて腰を回すのを、左回り10回、右回り10回するのも、腹筋が一緒に鍛えられるので、坐骨神経痛にも意外と効果ありますよ。
とはいえ、痛みと闘いながら、赤ちゃんのお世話、そして家事もしなくてはいけなくなるのですから、ストレッチをする時間、なかなか取れなかったりしますよね。
そこで、私がおすすめするのは「ながらストレッチ」です。
- 背筋をできるだけ伸ばし、つま先を揃えて、両足の膝をつけるようにして立ちます。すると、自然とおしりや太ももの内側にも力が入ります。
- そのままの状態で、つま先立ちになって5秒数えて、元の姿勢に戻ります。その時、両足の膝をつけたままの状態は維持してください。
- それを、5回繰り返します。
- 足を肩幅に開いて、背筋を伸ばして立ちます。
- お腹をひっこめながら、深呼吸を5回します。この時、お腹は引っ込めたまま、肩が上がらないように注意してください。
とても簡単そうで効果がなさそうですが、産後の筋肉が衰えている状態ですると、結構きついです。私は、今でも維持するために、茶碗を洗いながらしていますが、かなり効果ありますよ。
ただし、この2つのストレッチ法、坐骨神経痛のストレッチとは違うものなので、疾患を伴う場合には、専門医に相談してから試してくださいね。
まとめ
妊娠中の腰や足、股関節の痛みは、姿勢や体型、女性ホルモンの影響などが原因で、産後には治る場合が多い、坐骨神経痛の可能性があります。
産後には治るからとあきらめずに、産科医と相談しながら、妊娠中からできる対処法を活用して、少しでも痛みを和らげ、より楽しい妊娠生活を過ごしましょう。
また、産後には、無理のない程度にストレッチをして筋肉を鍛えながら、坐骨神経痛にならない身体作りをすることを心がけましょうね。